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第二章 宿屋の経営改善

修羅場のようです

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ひょっとしてまた違う夢を見ているのではないかと思い、目をごしごしこすってみる。
いや、確かにリーシャが寝ているな。大変すやすやと穏やかな寝息を立てていらっしゃる。

これはかなり深い夢かもしれぬ、と今度は頬を強くつねってみる。
痛い。相当痛い。
しかし相変わらずリーシャは「むにゃ…」とか言いながら寝返りを打ったりしている。
うん、つまりこれは夢ではない。

「なんで俺のベッドにリーシャが寝てるんだ…」

混乱してわけがわからないが、とりあえず落ち着こう。
寝起きにあまりにも驚いたせいか、心臓が飛び出しそうになっている。
まずは深呼吸して…

「お邪魔するわよーっ!」

ドアがバーンと勢いよく開いて、ようやく落ち着きかけた俺の心臓が再び喉から飛び出しそうになる。
今度はなんなんだいったい…
振り返ると、アレアが凍りついていた。
視線の先には…当然ながら、ベッドですやすやと眠りにつくリーシャの姿があるわけで。

「アンタ…引っ越し当日にもう女の子を連れ込むなんて…」

ワナワナと唇を震わせ、アレアの視線が憤怒に染まっていた。
さながら般若のようでもあり、鬼神のようでもあった。

「え…?いや、あの、これは誤解といいますか…わたくしもなにがなんだかといいますか」

とっさにうまい言い訳を考えようと思うが、こちらも混乱して状況がわかっていないので言語明瞭意味不明瞭なことしか言えない。
その間にも、アレアのボルテージがどんどん上がっていることは明らかだった。
えっ、これそろそろリミットブレイク来るんじゃないかな…

「そうですか…アンタはそういう人ですか…」

「だから違うって!何が違うかよくわかんないけど、独りで寝てたらなんか隣にリーシャがいて…」

「この…フケツ者がぁぁぁっ!」

バチーン、と小気味良い音がして、俺の頬は見事に張り飛ばされていた。

「お、親父にも打たれたことないのに…」

一瞬で炎のように熱を帯びた頬をかばいながら、よろよろと俺は崩折れていた。
とっても痛いです…

「…うるさい…」

突如、不機嫌な低い声がベッドから漏れ出たおかげで、アレアがもう一発放とうとしていたビンタは食い止められた。
アレアが大声を出したからか、眠っていたリーシャが目を覚ましたようだった。

「り、リーシャ、目が覚めたのか…頼むから誤解を解いてお願いだから」

俺の哀願が通じたのか通じていないのかよくわからないが、リーシャが目をこすりながら起きてきた。

「あ、あれ…服を着てるじゃない」

アレアがどぎまぎしたように呟いた。

「いったい何を想像してたんだお前は…」

この耳年増娘め…痛む頬を押さえながら、俺は涙目で抗議する。

「だ、だって…いきなりベッドに女の子が居たらそりゃ…」

「ご飯…持ってきた…サコン…寝てたから…わたしも…眠くなった…」

どうやらリーシャは、俺のために夕飯を持ってきてくれたようだった。
気がつかなかったけれど、テーブルの上に小さな鍋が置かれていて、ほのかにいい香りがしている。
それにしたって、いくら眠くなったからって独り身の男が眠るベッドにもぐりこむのはやりすぎじゃないか。
いや、むしろそういう発想がすでにフケツなんだろうか…?
とりあえず、突っ込むのは止めておこう。

そして数分後。
なぜか3人で小さなテーブルを囲み、飯を食っていた。

「なんで…アンタまで…」

リーシャがじとっ、とアレアを睨む。
負けじとアレアも睨み返して啖呵を切る。

「いいじゃない、別に。アタシもデザート持ってきたんだし、みんなで食べればいいでしょ」

「はいはい、ご飯は仲良く食べようぜ…」

「アンタは黙ってなさい!」「…サコンはうるさい…」

「ア、ハイ、スミマセン」

そこだけ息がぴったりなのはなぜでしょうか…。
ピリピリした空気の中、俺たちは無言で夕食を食べる羽目になったのだった。
ま、まぁ可愛い女の子2人に囲まれてるんだから、よしとしよう…。
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