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第一章 武器屋の経営改善
看板を手に街を練り歩くようです
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「アレク武器店、明日から三日間、新装開店記念感謝祭やりま~す。掘り出しものがどんどん割引になりますよ!」
手製の看板を掲げ、繁華街を練り歩いていると、何事だろうという感じで街の人の視線が集まる。
行商人でもないのに声を張り上げて宣伝する、というのが物珍しいんだろう。
怒られたりウザがられたりするならすぐやめようと思っていたが、いまのところそういう反応はなさそうだ。
「アレク武器店…?ああ、アレクじいさんの!」
街の中央にある商店街の途中で、冒険者風の中年男が話しかけてくる。
どうやらアレクじいさんのことを知っているらしい。
「そうなんです。新装開店でかなり勉強してますから、騙されたと思ってきてください」
「なになに…おお、最大7割5分引きってのは豪気だぁね」
「出血覚悟の大割引ですから、ぜひぜひ」
「そういや最近すっかりご無沙汰しちまってるからなぁ…じいさんの顔も見たいし、必ず行くよ!」
「ありがとうございます!お待ちしてまーす!」
練り歩いていると、ぽつぽつとアレクじいさんの顔見知りや昔のお客さんが話しかけてきて、店のことを色々と聞かれた。
みんな昔は顔を出していたのだが、だんだんと足が遠のいてしまい、再び訪れるきっかけを見つけられて嬉しそうだった。
確かに、なんとなく疎遠になってしまった友達に、改めて連絡を取るのはなんとなく億劫というか、気まずいものだ。
でも、同窓会とか飲み会とか何かきっかけがあれば、意外とすんなり元の関係に戻れたりすることもある。
今回のセールが、そんな旧交を温めるきっかけになるのだとすれば、それだけでも大きな収穫だ。
商売とは、本質的に人と人とのやりとりで成り立つもの。
どんな形であれ、つながりを大切にすることが第一歩なのだから。
「お、この辺は確かエンドラがあったような…」
適当に人通りが多いところを練り歩くうちに、昨日訪れたエンドラの近くまで来たようだ。
「せっかくだし、ちょっとアレアに声かけていくか」
昨日とは違い、正々堂々と店の扉を開く。
店員たちの鋭い視線で出迎えられるが、今度は物怖じすることなく近寄った。
「アレアさん、いますか?」
「なんだお前、軽々しくお嬢様の名前を口にするとは」
ガタイのいい店員に睨みつけられる。
うーん、せっかくいい店なのに店員の教育は今ひとつのようだな…。
人を身なりで判断しすぎだ。
「俺はアレク武器店のサコンです。時々話しにきてもいいと、アレアさんが言ってたので」
「…ほんとうにか?」
「疑うなら、本人に確認してみたらどうですか?嘘なら叩き出されても文句は言わないですよ」
「…ちょっとそこで待ってろ」
渋い顔をしながら、店員が奥に引っ込んだ。
その間に、昨日あまりじっくりと見られなかった奥の方の高級品もしっかりと拝見しておく。
うーん、確かに扱っている品といい、什器といい、実に選び抜かれた良質なものばかりだ。
アレアの父というのは、相当な目利きに違いない。
しばらく待っていると、ガタイのいい店員ではなく、黒髪の鋭い目をしたメイドが現れた。
アレア付きの従者だろうか?
綺麗な顔立ちをしているけれど…どこか刃物を思わせるような危険な雰囲気が身に纏う娘だった。
「サコン殿…こちらへ」
「…あ、はい」
少し気圧されながらも、メイドの後について歩き出した。
手製の看板を掲げ、繁華街を練り歩いていると、何事だろうという感じで街の人の視線が集まる。
行商人でもないのに声を張り上げて宣伝する、というのが物珍しいんだろう。
怒られたりウザがられたりするならすぐやめようと思っていたが、いまのところそういう反応はなさそうだ。
「アレク武器店…?ああ、アレクじいさんの!」
街の中央にある商店街の途中で、冒険者風の中年男が話しかけてくる。
どうやらアレクじいさんのことを知っているらしい。
「そうなんです。新装開店でかなり勉強してますから、騙されたと思ってきてください」
「なになに…おお、最大7割5分引きってのは豪気だぁね」
「出血覚悟の大割引ですから、ぜひぜひ」
「そういや最近すっかりご無沙汰しちまってるからなぁ…じいさんの顔も見たいし、必ず行くよ!」
「ありがとうございます!お待ちしてまーす!」
練り歩いていると、ぽつぽつとアレクじいさんの顔見知りや昔のお客さんが話しかけてきて、店のことを色々と聞かれた。
みんな昔は顔を出していたのだが、だんだんと足が遠のいてしまい、再び訪れるきっかけを見つけられて嬉しそうだった。
確かに、なんとなく疎遠になってしまった友達に、改めて連絡を取るのはなんとなく億劫というか、気まずいものだ。
でも、同窓会とか飲み会とか何かきっかけがあれば、意外とすんなり元の関係に戻れたりすることもある。
今回のセールが、そんな旧交を温めるきっかけになるのだとすれば、それだけでも大きな収穫だ。
商売とは、本質的に人と人とのやりとりで成り立つもの。
どんな形であれ、つながりを大切にすることが第一歩なのだから。
「お、この辺は確かエンドラがあったような…」
適当に人通りが多いところを練り歩くうちに、昨日訪れたエンドラの近くまで来たようだ。
「せっかくだし、ちょっとアレアに声かけていくか」
昨日とは違い、正々堂々と店の扉を開く。
店員たちの鋭い視線で出迎えられるが、今度は物怖じすることなく近寄った。
「アレアさん、いますか?」
「なんだお前、軽々しくお嬢様の名前を口にするとは」
ガタイのいい店員に睨みつけられる。
うーん、せっかくいい店なのに店員の教育は今ひとつのようだな…。
人を身なりで判断しすぎだ。
「俺はアレク武器店のサコンです。時々話しにきてもいいと、アレアさんが言ってたので」
「…ほんとうにか?」
「疑うなら、本人に確認してみたらどうですか?嘘なら叩き出されても文句は言わないですよ」
「…ちょっとそこで待ってろ」
渋い顔をしながら、店員が奥に引っ込んだ。
その間に、昨日あまりじっくりと見られなかった奥の方の高級品もしっかりと拝見しておく。
うーん、確かに扱っている品といい、什器といい、実に選び抜かれた良質なものばかりだ。
アレアの父というのは、相当な目利きに違いない。
しばらく待っていると、ガタイのいい店員ではなく、黒髪の鋭い目をしたメイドが現れた。
アレア付きの従者だろうか?
綺麗な顔立ちをしているけれど…どこか刃物を思わせるような危険な雰囲気が身に纏う娘だった。
「サコン殿…こちらへ」
「…あ、はい」
少し気圧されながらも、メイドの後について歩き出した。
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