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第一章 武器屋の経営改善
リーシャは画伯だったようです
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「アレクさん、看板の下書きを作ったので清書してくれません?」
カウンターでなにやら帳簿をつけているじいさんに頼んでみる。
「いや…ワシも恥ずかしながら悪筆でのぅ。そうじゃ、リーシャの字は綺麗だぞ。たぶん台所にいるから頼んでみてくれんか」
「わかりました」
俺は少しだけ胸をときめかせながら台所へと向かう。
食事以外でリーシャと話すのは初めてで、しかも自分の計画を手伝ってもらうのがなんだか嬉しかった。
「あ、リーシャさん、おはようございます」
扉を開けると、リーシャが朝食の洗い物をちょうどすませたところだったようだ。
「(ぺこり)」
「リーシャさんにお願いがあって来たんだけど…明日からのセールを宣伝する看板を清書してくれないかな?」
「???」
「俺が下書きを書いたんで、こっちの木の板に、できれば綺麗な字で書き写してもらえるととても助かります」
「 (……こくり)」
下書きと木の板を並べ、俺が持ってきた筆状の筆記具をリーシャが握る。
ちょっと緊張しているようで、そこがまたかわいい。
おっと、さすがにもう口に出すのはやめておかないとな。
「 (すぅーっ…)」
リーシャが1回大きく深呼吸して、それからサラサラと流れるように書き写し始めた。
異世界の文字はほんとうに見慣れなくて、スキルで強制的に理解しているだけなのだが、それでもリーシャの文字が美しいことはよく分かる。
美しさというものは、世界が異なってもある程度共有できる基準なのかもしれない。
あっという間に書き終わったリーシャだが、筆を握ったまま何か言いたそうにもじもじしている。
「ありがとう、リーシャさん。すごく綺麗だね」
そう褒めると、リーシャが顔を真っ赤にしてうつむいた。
「いや、あの、字…が…」
「……」
「えっと……字『も』綺麗ですね…」
なに言ってんだろう俺…
何か次の言葉を探そうと焦るが、とっさに話題を転換しようにもなにも思いつかない。
元の世界でも女の子と話すのはそんなに得意じゃなかったけど、転生してもそれは変わっていないようだ。
気まずい沈黙を破ったのは、とても小さな、けれど鈴を転がすような声。
「…絵…描いて…いい?」
それは初めて聞くリーシャの声だった。
「あ…ああ、もちろん!」
勢い込んで頷く俺にちょっと引きながらも、リーシャは微笑んで筆を取り直す。
看板の空いたスペースに、次々と何かを描き込んでいく。
「…こ、これは…ネコ…かな?」
数分後、なんとも不細工な動物らしき絵が看板のあちこちに出現していた。
リーシャは…いわゆる画伯だった…。
なんだろう、この不思議な生き物たちは。…というか、生き物の絵だよな?
字は綺麗なのに、どうしてこうなったのか。
「わたし…動物…好き…」
得意げに胸を張る (エンドラの娘と違って結構ある)リーシャに、俺は微笑を返すしかなかった。
「じょ、じょうずだね…」
枯れ木も山の賑わい、と考え直し、看板を2枚仕上げてもらったところでリーシャに改めて礼を言う。
「いや、助かったよリーシャさん。これで宣伝にいけるぞ」
「…さん…いらない…」
「え?」
「リーシャで…いい」
どうやら呼び捨てでいいということらしい。
なんか照れ臭いけど、せっかくなのでお言葉に甘えることにする。
女性が呼び捨てを許してくれるというのは、心を許し始めた一つの証拠で、一気に距離を縮めるチャンスでもあり…ってこんなところでコンサルティングスキルが発動するんじゃねぇ!
無理やりスキルを止めてリーシャの名前を呼ぶ。
「じゃあ…リーシャ、ありがとう。ついでに敬語もやめてもいいかな?」
「…うん…」
少しだけ、リーシャとの距離が縮まった気がした。
カウンターでなにやら帳簿をつけているじいさんに頼んでみる。
「いや…ワシも恥ずかしながら悪筆でのぅ。そうじゃ、リーシャの字は綺麗だぞ。たぶん台所にいるから頼んでみてくれんか」
「わかりました」
俺は少しだけ胸をときめかせながら台所へと向かう。
食事以外でリーシャと話すのは初めてで、しかも自分の計画を手伝ってもらうのがなんだか嬉しかった。
「あ、リーシャさん、おはようございます」
扉を開けると、リーシャが朝食の洗い物をちょうどすませたところだったようだ。
「(ぺこり)」
「リーシャさんにお願いがあって来たんだけど…明日からのセールを宣伝する看板を清書してくれないかな?」
「???」
「俺が下書きを書いたんで、こっちの木の板に、できれば綺麗な字で書き写してもらえるととても助かります」
「 (……こくり)」
下書きと木の板を並べ、俺が持ってきた筆状の筆記具をリーシャが握る。
ちょっと緊張しているようで、そこがまたかわいい。
おっと、さすがにもう口に出すのはやめておかないとな。
「 (すぅーっ…)」
リーシャが1回大きく深呼吸して、それからサラサラと流れるように書き写し始めた。
異世界の文字はほんとうに見慣れなくて、スキルで強制的に理解しているだけなのだが、それでもリーシャの文字が美しいことはよく分かる。
美しさというものは、世界が異なってもある程度共有できる基準なのかもしれない。
あっという間に書き終わったリーシャだが、筆を握ったまま何か言いたそうにもじもじしている。
「ありがとう、リーシャさん。すごく綺麗だね」
そう褒めると、リーシャが顔を真っ赤にしてうつむいた。
「いや、あの、字…が…」
「……」
「えっと……字『も』綺麗ですね…」
なに言ってんだろう俺…
何か次の言葉を探そうと焦るが、とっさに話題を転換しようにもなにも思いつかない。
元の世界でも女の子と話すのはそんなに得意じゃなかったけど、転生してもそれは変わっていないようだ。
気まずい沈黙を破ったのは、とても小さな、けれど鈴を転がすような声。
「…絵…描いて…いい?」
それは初めて聞くリーシャの声だった。
「あ…ああ、もちろん!」
勢い込んで頷く俺にちょっと引きながらも、リーシャは微笑んで筆を取り直す。
看板の空いたスペースに、次々と何かを描き込んでいく。
「…こ、これは…ネコ…かな?」
数分後、なんとも不細工な動物らしき絵が看板のあちこちに出現していた。
リーシャは…いわゆる画伯だった…。
なんだろう、この不思議な生き物たちは。…というか、生き物の絵だよな?
字は綺麗なのに、どうしてこうなったのか。
「わたし…動物…好き…」
得意げに胸を張る (エンドラの娘と違って結構ある)リーシャに、俺は微笑を返すしかなかった。
「じょ、じょうずだね…」
枯れ木も山の賑わい、と考え直し、看板を2枚仕上げてもらったところでリーシャに改めて礼を言う。
「いや、助かったよリーシャさん。これで宣伝にいけるぞ」
「…さん…いらない…」
「え?」
「リーシャで…いい」
どうやら呼び捨てでいいということらしい。
なんか照れ臭いけど、せっかくなのでお言葉に甘えることにする。
女性が呼び捨てを許してくれるというのは、心を許し始めた一つの証拠で、一気に距離を縮めるチャンスでもあり…ってこんなところでコンサルティングスキルが発動するんじゃねぇ!
無理やりスキルを止めてリーシャの名前を呼ぶ。
「じゃあ…リーシャ、ありがとう。ついでに敬語もやめてもいいかな?」
「…うん…」
少しだけ、リーシャとの距離が縮まった気がした。
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