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第一章 武器屋の経営改善
お店のレイアウトが決まったようです
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「よし…一通りはできたかな」
気がつけば、外は真っ暗になっている。
何とか1日で店の掃除と商品の再配置、セール品の整理まで終えることができたのは幸いだった。
…というか、作業に集中しても問題ないぐらいお客さんが来ないのが大問題なんだが…。
まずはお試しで、店の正面奥、左側の棚に一番安定して売れそうな長剣、その隣についで買い狙いで短剣を置いた。
反対の右奥には短槍と長槍を並べ、手前左側に長短それぞれの弓、手前右側に斧とその他という配置で一回やってみる。
ダメならまた変えればいいのだ。
大切なことは、思いつくだけでなく、それをきちんと最後まで実行すること。
アイデアだけならいくらでも浮かぶ。
それこそ子供だって何かを思いつくことはできる。
でも、それを実行し、その結果をチェックしてさらに行動を改善できる人はほとんどいない。
逆に言えば、それができるってことはとても大きな強みになる。
店員が控えるカウンタースペース付近には、武器を磨くための布や錆止めの油など、こまごまとした便利グッズを配置した。
これまた会計時のついで買い狙いだ。
スーパーなんかで、レジの近くに置いてあるガムとかお菓子とかをついつい買ってしまうのは、まさにこの「ついで買い」狙いにハマっているからである。
人は大きい買い物をしようという時ほど、小さい金額の買い物に対して大ざっぱになってしまう性質がある。
そこをうまく突いたテクニックで、「テンション・リダクション」とも呼ばれている。
例えば、マンションを買う人に家具を勧める…なんて商法があったりする。
数千万円のマンションを買った後には、数十万円の家具も大したことがないように思えてしまうのだから怖い。
つまり、買い物をするまではお客さんは結構緊張している。大きい金額ならなおさらだ。
だが、その決断を下すと、一気に精神の緊張が緩み、金額や必要性への判断がかなりゆるーくなる。
そして、買うと決めたものの金額が大きく、ついで買い対象の金額が安いほど、その効果は大きいのである。
まぁ、うちでやろうとしているのはせいぜい日本円に換算して数百円のものだから…これぐらいは営業努力の範疇として許されるだろう。
武器だってめちゃくちゃ高額なものは扱っていないし。
効果があるからといって、あまり人の心理につけこみすぎるのも、商売としては綺麗じゃないからな。
「こりゃあ見事なもんじゃ」
短剣の木箱を抱えたじいさんがいつの間にか戻ってきていた。
丁寧に整えられ、まるで別のお店のように生まれ変わった店内をぐるりと見回し、感嘆の声を上げている。
あまり喜ばれると、まだ成果が出ているわけでもないので気恥ずかしいが、少し誇らしい気持ちも感じていた。
「明日から割引セールをしようと思います」
「せーる?」
「不要な在庫品を、お得な割引価格で一気に売りさばくことですよ」
「なるほど…それである程度まとまった資金も作れるのじゃな」
「はい、そのお金で、面白い新商品を仕入れられればと思うんですが」
「うんうん、付き合いの武器商人たちにも紹介せんとな」
「ぜひお願いします。あ、割引価格を決めたいんで、セール対象品の元の値段を教えてください」
「わかった、えーとどこに書いたんじゃっけな…」
じいさんがごそごそと棚を漁り、古びた台帳を持ち出してきた。
気がつけば、外は真っ暗になっている。
何とか1日で店の掃除と商品の再配置、セール品の整理まで終えることができたのは幸いだった。
…というか、作業に集中しても問題ないぐらいお客さんが来ないのが大問題なんだが…。
まずはお試しで、店の正面奥、左側の棚に一番安定して売れそうな長剣、その隣についで買い狙いで短剣を置いた。
反対の右奥には短槍と長槍を並べ、手前左側に長短それぞれの弓、手前右側に斧とその他という配置で一回やってみる。
ダメならまた変えればいいのだ。
大切なことは、思いつくだけでなく、それをきちんと最後まで実行すること。
アイデアだけならいくらでも浮かぶ。
それこそ子供だって何かを思いつくことはできる。
でも、それを実行し、その結果をチェックしてさらに行動を改善できる人はほとんどいない。
逆に言えば、それができるってことはとても大きな強みになる。
店員が控えるカウンタースペース付近には、武器を磨くための布や錆止めの油など、こまごまとした便利グッズを配置した。
これまた会計時のついで買い狙いだ。
スーパーなんかで、レジの近くに置いてあるガムとかお菓子とかをついつい買ってしまうのは、まさにこの「ついで買い」狙いにハマっているからである。
人は大きい買い物をしようという時ほど、小さい金額の買い物に対して大ざっぱになってしまう性質がある。
そこをうまく突いたテクニックで、「テンション・リダクション」とも呼ばれている。
例えば、マンションを買う人に家具を勧める…なんて商法があったりする。
数千万円のマンションを買った後には、数十万円の家具も大したことがないように思えてしまうのだから怖い。
つまり、買い物をするまではお客さんは結構緊張している。大きい金額ならなおさらだ。
だが、その決断を下すと、一気に精神の緊張が緩み、金額や必要性への判断がかなりゆるーくなる。
そして、買うと決めたものの金額が大きく、ついで買い対象の金額が安いほど、その効果は大きいのである。
まぁ、うちでやろうとしているのはせいぜい日本円に換算して数百円のものだから…これぐらいは営業努力の範疇として許されるだろう。
武器だってめちゃくちゃ高額なものは扱っていないし。
効果があるからといって、あまり人の心理につけこみすぎるのも、商売としては綺麗じゃないからな。
「こりゃあ見事なもんじゃ」
短剣の木箱を抱えたじいさんがいつの間にか戻ってきていた。
丁寧に整えられ、まるで別のお店のように生まれ変わった店内をぐるりと見回し、感嘆の声を上げている。
あまり喜ばれると、まだ成果が出ているわけでもないので気恥ずかしいが、少し誇らしい気持ちも感じていた。
「明日から割引セールをしようと思います」
「せーる?」
「不要な在庫品を、お得な割引価格で一気に売りさばくことですよ」
「なるほど…それである程度まとまった資金も作れるのじゃな」
「はい、そのお金で、面白い新商品を仕入れられればと思うんですが」
「うんうん、付き合いの武器商人たちにも紹介せんとな」
「ぜひお願いします。あ、割引価格を決めたいんで、セール対象品の元の値段を教えてください」
「わかった、えーとどこに書いたんじゃっけな…」
じいさんがごそごそと棚を漁り、古びた台帳を持ち出してきた。
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