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第一章 武器屋の経営改善
店内の改善に取りかかるようです
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「遅くなってすいません」
「いやいや、いいんじゃよ。あれからまた1本売れたぞぃ」
店に戻った俺を、アレクじいさんがホクホク顏で迎えてくれる。
店の奥を覗くと、短剣で釣られたのか、何人かお客さんの姿もある。
「あ、じゃあ俺、店の中の商品を綺麗にしてきますね」
そう言ってボロ布を手に店の中へ向かう。
そういや、ゆっくりと店の中を見るのはこれがはじめてだ。
今朝からずっと外にいたからな。
改めて店内を見回すと、意外に…というか無駄に、といっていいほど武器の種類は豊富だ。
さすがにアスタロスほどではないが、エンドラよりは遥かに様々な武器がある。
「…どう見ても売れそうにないもんもあるな」
誰が扱えるんだ、というぐらい馬鹿でかいポールアックスや、龍でも殺せそうな大剣まである。
槍や長剣も様々な長さ、大きさのものが雑多に一まとめにされており、正直見辛い。
案の定、せっかく店の中を覗いてくれたお客さんもそそくさと立ち去っていってしまう。
体系的に整理されていないので、雑然とした商品の中から探したり見たりすることにストレスを感じてしまうのだ。
「これは大掃除が必要だ…」
幸い、というか生憎というか、店内にはお客さんがほとんどいない。
掃除の前に、まずは商品をカテゴリーごとに整理し直そう。
もちろん、その前にじいさんに一言断っておかないとな。
俺は店外で短剣売りに熱中しているじいさんの元に戻り、自分の構想を説明することにした。
前も言ったけれど、何をするにしても事前の説明は大事だよ。
「アレクさん、ちょっといいですか?」
「ああ、なんじゃ?」
「やってみたいことが2つありまして、1点目は『商品を種類ごとに整理すること』、それから2点目は『割引による不要在庫の処分』です。」
何を説明するにも、まずは結論から説明するのが鉄則である。
理由→結論という順よりも、遥かに理解してもらうのが早いからだ。
「ほ、ほぉ…?いや、もうなんでも好きにやってくれて構わんぞ」
「信頼してくださるのは嬉しいですけど、理由も聞いて決めてもらったほうがいいと思います。店主はアレクさんですから」
「そ、そうじゃな…いや、すまん。無責任に丸投げするところだった。」
アレクさん…ほんとうにいい人だな。
俺も元の世界でこんな上司に恵まれていたら…まぁ、今恵まれたからよしとするか。
「俺のいた世界だと、お店…特に似たようなものばかり扱う専門店ではカテゴリー分けが大事だったんです。」
「カテゴリー?」
「つまり、武器屋でいうなら例えば武器の種類ごとに分けるとか、値段で分けるとか、まぁなんでもいいんですが基準を1つ2つ決めて、それに基づいてグループ分けしていくんです」
「なるほどのぅ…そんなこと考えたこともなかったなぁ」
「そうするとお客さんが商品を見つけやすくて、見ることを楽しめるようになるんです。楽しいと、お店の滞在時間が長くなります」
「楽しい…か。うむ、お客さんが楽しい店ってのはいいなぁ。いやはや、そういう発想もあるんじゃな」
「そう!そうなんです。お客さんが買い物を楽しめるお店にしたらどうかなって思うんです。」
買い物を楽しむという発想。
それは余裕のある現代日本で暮らしていた人間にしかなし得ないものだ。
この国がどれぐらい余裕があるのかはわからないが、少なくとも街ゆく人々の表情に曇りがないことはすでに分かっている。
とすれば、ある程度は通用するのじゃないかと読んでいた。
いずれにせよ、今のカオス状態よりは絶対にいいだろう。
「それで、お店の滞在時間が長くなると、それだけ購買意欲も上がると言われてるんです…俺の世界では」
「なるほどのぅ…異世界の英知じゃな」
「そんな大げさなもんじゃないですけど」
「ふむふむ、で、その『かてごりー』分けをすると、今の取り揃えからはあぶれる商品が出てくる…ということかの?」
…鋭い。
さすがに一国一城の主、老いているとはいえひとかどの勘はあるようだ。
「いやいや、いいんじゃよ。あれからまた1本売れたぞぃ」
店に戻った俺を、アレクじいさんがホクホク顏で迎えてくれる。
店の奥を覗くと、短剣で釣られたのか、何人かお客さんの姿もある。
「あ、じゃあ俺、店の中の商品を綺麗にしてきますね」
そう言ってボロ布を手に店の中へ向かう。
そういや、ゆっくりと店の中を見るのはこれがはじめてだ。
今朝からずっと外にいたからな。
改めて店内を見回すと、意外に…というか無駄に、といっていいほど武器の種類は豊富だ。
さすがにアスタロスほどではないが、エンドラよりは遥かに様々な武器がある。
「…どう見ても売れそうにないもんもあるな」
誰が扱えるんだ、というぐらい馬鹿でかいポールアックスや、龍でも殺せそうな大剣まである。
槍や長剣も様々な長さ、大きさのものが雑多に一まとめにされており、正直見辛い。
案の定、せっかく店の中を覗いてくれたお客さんもそそくさと立ち去っていってしまう。
体系的に整理されていないので、雑然とした商品の中から探したり見たりすることにストレスを感じてしまうのだ。
「これは大掃除が必要だ…」
幸い、というか生憎というか、店内にはお客さんがほとんどいない。
掃除の前に、まずは商品をカテゴリーごとに整理し直そう。
もちろん、その前にじいさんに一言断っておかないとな。
俺は店外で短剣売りに熱中しているじいさんの元に戻り、自分の構想を説明することにした。
前も言ったけれど、何をするにしても事前の説明は大事だよ。
「アレクさん、ちょっといいですか?」
「ああ、なんじゃ?」
「やってみたいことが2つありまして、1点目は『商品を種類ごとに整理すること』、それから2点目は『割引による不要在庫の処分』です。」
何を説明するにも、まずは結論から説明するのが鉄則である。
理由→結論という順よりも、遥かに理解してもらうのが早いからだ。
「ほ、ほぉ…?いや、もうなんでも好きにやってくれて構わんぞ」
「信頼してくださるのは嬉しいですけど、理由も聞いて決めてもらったほうがいいと思います。店主はアレクさんですから」
「そ、そうじゃな…いや、すまん。無責任に丸投げするところだった。」
アレクさん…ほんとうにいい人だな。
俺も元の世界でこんな上司に恵まれていたら…まぁ、今恵まれたからよしとするか。
「俺のいた世界だと、お店…特に似たようなものばかり扱う専門店ではカテゴリー分けが大事だったんです。」
「カテゴリー?」
「つまり、武器屋でいうなら例えば武器の種類ごとに分けるとか、値段で分けるとか、まぁなんでもいいんですが基準を1つ2つ決めて、それに基づいてグループ分けしていくんです」
「なるほどのぅ…そんなこと考えたこともなかったなぁ」
「そうするとお客さんが商品を見つけやすくて、見ることを楽しめるようになるんです。楽しいと、お店の滞在時間が長くなります」
「楽しい…か。うむ、お客さんが楽しい店ってのはいいなぁ。いやはや、そういう発想もあるんじゃな」
「そう!そうなんです。お客さんが買い物を楽しめるお店にしたらどうかなって思うんです。」
買い物を楽しむという発想。
それは余裕のある現代日本で暮らしていた人間にしかなし得ないものだ。
この国がどれぐらい余裕があるのかはわからないが、少なくとも街ゆく人々の表情に曇りがないことはすでに分かっている。
とすれば、ある程度は通用するのじゃないかと読んでいた。
いずれにせよ、今のカオス状態よりは絶対にいいだろう。
「それで、お店の滞在時間が長くなると、それだけ購買意欲も上がると言われてるんです…俺の世界では」
「なるほどのぅ…異世界の英知じゃな」
「そんな大げさなもんじゃないですけど」
「ふむふむ、で、その『かてごりー』分けをすると、今の取り揃えからはあぶれる商品が出てくる…ということかの?」
…鋭い。
さすがに一国一城の主、老いているとはいえひとかどの勘はあるようだ。
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