上 下
21 / 55
5年生5月

みかんちゃんのテトリちゃん(中)

しおりを挟む
「わたしはみかんです。はじめまして」
わたしもそうあいさつをすると、響香ちゃんは驚いたようでした。
「えっ!?もしかして魔法使いのみかんちゃんですか?」
「うん、そうだよ」
名前を知られていたことにびっくりしたけれど、わたしはうなずきました。
すると響香ちゃんはわかるように教えてくれました。
「わたし、みかんちゃんと同じ雪湖小学校に通ってる、2年4組の時鳴響香です。
みかんちゃんは学校で人気あるし、有名だから、入学した時から知ってます。
今日はいつもと髪型が違うから、すぐにはわからなかったけど」
あ、そうだね。
今はリリーちゃんの言葉がわかるように、カチューシャにしているから。
こうやってカチューシャを付ける時以外は、わたしはいつもオレンジ色のボンボンで、上に小さく2つに結っています。動物の耳みたいにしているんだよ。
まだわたしが動物とお話ができない幼稚園の時に、お母さんがこの髪型を作ってくれました。
動物のみんなとお揃いみたいで、とってもお気に入りなんです。
ピッグテールというみたい。
それからボンボンはみかんの実みたいで、わたしがみかんだよってわかりやすいかなって思って。
2年生になった時からずっとこれを付けています。
「でもみかんちゃんは、髪の毛も瞳の色も薄いから、すぐにわかりそうなのになあ」
そう響香ちゃんは付け加えます。
そういわれるように、わたしの髪の毛はみんなより明るい茶色で、瞳はもっと明るいオレンジ色をしています。
だからわたしの名前は「みかん」なんだよ。
魔法使いは、この瞳の色で名前を付けられることが多いそうです。
お母さんはわたしと同じ色の髪の毛で、赤い瞳をしています。
不思議そうな顔をしている響香ちゃんに、わたしは答えます。
「リリーちゃんのことに一生懸命だったからだよ」
それにしてもリリーちゃんの時も今も、知らないうちに、わたしはたくさんの人に名前が知られているんだなあって実感しました。
そううなずいていると、響香ちゃんは後ろにいるお母さんのことを聞きました。
「一緒に来たのは、みかんちゃんのお母さん?」
「うん。そうだよ」
お母さんはそんなわたし達を見て、笑っています。
そんな時、この家におじさんが駆けてきました。
めがぬをかけている優しそうな人です。
響香ちゃんのお父さんの告さんかな。
その人は最初、わたしとお母さんがいることに少し驚いたみたいでした。
でも響香ちゃんに抱かれているリリーちゃんを見つけて、うれしそうな顔になりました。
ほっと一息をつきます。
「よかった!リリーは見つかったのか」
「お父さん、大丈夫?」
息をきらせているお父さんを、響香ちゃんは心配して聞きます。
「ああ。大丈夫だよ」
そう返事をしてから、告さんはわたし達に向き直って聞きました。
「あなた方がリリーを見つけてくださったんですか?」
そんなお父さんに、響香ちゃんは強く説明します。
「それだけじゃないよ。お父さん!
怪我をしていたリリーちゃんを、ずっと預かっていてくれたんだから」
そう聞くと、告さんは頭を下げていいました。
「リリーを本当にありがとうございました。
法事だったもので抜けるわけにはいかなくて、数日ならと、警察に届けを出していただけだったんです。
家の方にちゃんと帰ってきてくれていてよかった」
そう深く息をつきます。
リリーちゃんをすぐに捜せなかったことを、告さんは後悔しているみたいでした。
法事って何だかわたしにはわからないけど、とっても大切な用みたいだね。
そんな告さんに、お母さんがいいました。
「そういう用事なら仕方ないですよ。
リリーちゃんもこうして元気だし、そんなに気にしないでください」
リリーちゃんも響香ちゃんの手から降りて、告さんのところに行くといいました。
「そうよ、告さん。私が勝手にみんなから離れたのがいけなかったんだもの。
告さんが謝ることないわ。
それにおかげで、みかんちゃんやいちごさんに会えたし、私は楽しかったの」
そんなリリーちゃんの頭をなでて、告さんは謝りました。
「リリー、本当にごめんな」
それから家を振り返って、大きな声で呼びました。
「おーい、晴香!リリーが見つかったぞ!」
するとすぐに、家の中からおばさんが出てきました。
響香ちゃんのお母さんも優しそうな人です。
肩までの髪の毛はウェーブがかかっています。
わたしのお母さんは、まっすぐな髪の毛をいつも1つに結っているんだよ。
今度は告さんがわたし達のことを説明してくれました。
「晴香、こちらのお嬢さん達がリリーを預かっていてくれたんだそうだ」
すると晴香さんは安心して、そして喜びました。
「まあ!本当にありがとうございます。
響香が毎日捜しに行きたいっていうし、私達もこの4日とても気になっていたんです。無事でよかったわ。
リリーちゃんの様子から、とても親切にしてもらっていたのがわかります。
ぜひお礼をしたいのですが」
そうわたし達に笑っていう晴香さん。
でもお母さんは気を使っていいました。
「いえ。今は帰ってきたばかりで、疲れているんじゃないですか?」
そういわれてみると、確かに晴香さんも疲れているように見えます。
長い間お出掛けをしていた後に、リリーちゃんを捜していたんだもんね。
その言葉に、晴香さんはうなずきました。
「そうですね。
では今度改めてお茶会を開きたいので、ぜひ来て下さい。
準備ができたらご招待します。」
今度はお母さんも笑ってうなずきます。
「はい。みかんと一緒にぜひ伺います」
「じゃあみかんちゃん、待ってるね」
その話にうれしそうな響香ちゃんに、わたしも笑って答えました。
「うん。これからよろしくね。響香ちゃん」
「こちらこそよろしくお願いします」
そう響香ちゃんとお友達になれました。
お茶会の約束も楽しみです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

おねこのさんぽみち

はらぺこおねこ。
児童書・童話
おねこのうたを詩や物語にしてみました。 今まで書いた詩を…… これから書く詩を…… 徒然るままに載せていきます。 また。ジャンルがなにになるかわかりませんのでおそらく一番近い「児童書・童話」で書かせていただきます。

くまの復讐

ぴぴみ
児童書・童話
のんびり屋のくまは、いつもからかわれ、のけものにされていました。 そんなある時、かみさまがくまに特殊な力を授けました。 それは最強の盾となるべき力。 悪意をもってくまに接したものは皆、報いを受けることになってしまいました。 かみさまは言います。 「その力を正しく使うんじゃぞ」

フルフルひみつ天国~小学生天使トリオが悪魔を封印しちゃいます!~

村雨 霖
児童書・童話
私は神田川マユ、元気が取り柄の小学4年生。 ある日突然、翼が生えた鹿の姿をした悪魔、フルフルが学校に現れた。 私と、クラスメイトでお嬢様の栗原さん、天然キャラのレミナの三人はフルフルの作り出す竜巻に巻き込まれ、遠くに飛ばされてしまう。 そしてフルフルを封印すれば、悪魔から天使に変身させられると知った私達。 でもあと一歩のところで反撃を食らって、なんと自分達が天使になってしまった! 神様は私達を封印専門の封天使(ふうてんし)に任命し、普段は人間として暮らす天使だけが入れる不思議な場所『ひみつ天国』へのカギを渡してきた。 こうして私達はフルフルを封印するために、日夜頑張ることになったのだ。 第一回きずな児童書大賞にエントリーしました。

怠け者たちと魔王様と悪魔たち

眠り草
児童書・童話
異世界の子供向けの童話というコンセプトで作りました。 その世界の大半の人が生きることに飽きてしまった怠け者たちの過ちのお話。 このお話はRPGゲームなどでよくある魔物の跋扈する異世界の人々の世界の童話。 どうして魔物が居るのかとか怠け者になると魔王様や悪魔たちに食べられちゃうぞという戒めを子供達に伝える童話です。 小説本編用に考えた世界観の下地部分の物語なのですが、その世界で語り継がれている昔話として作りました。 本編ではこの童話名が出てくる予定です。 絵本予定でしたが絵を描いている余裕がないので文字だけになっていました。

僕のわんだふる物語

朱宮あめ
児童書・童話
突然災害によって家族を失った男の子・レイのやさしい物語。 ある日突然起こった恐ろしい災害。 目の前で家族を失ったレイは絶望する。 そこへ、レスキュー隊のおじさんが現れて……。 「一緒に来るか?」 失っても、懸命に前を向き続けるレイの物語。 ※童話風作品。 ※こちらの作品は現在第2回きずな文庫大賞に応募中です!

【完結】誰かの親切をあなたは覚えていますか?

なか
児童書・童話
私を作ってくれた 私らしくしてくれた あの優しい彼らを 忘れないためにこの作品を

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

処理中です...