ゴブリンしか召喚出来なくても最強になる方法 ~無能とののしられて追放された宮廷召喚士、ボクっ娘王女と二人きりの冒険者パーティーで無双する~

石矢天

文字の大きさ
上 下
37 / 45
第三章 一世一代の大博打

特別なアレを使っても伝説のアレは制御できなかった

しおりを挟む
 ラキス達は森から山へ走った。
 山頂に着くとゴブリンの斥候スカウトを喚び、松明で明かりを確保する。

 山頂から陥没した巨大な穴を覗きこむと、眠っていたはずの古龍が胴をうねらせて空を泳いでいた。

古龍アレ、浮いてないか?」
「浮いて……ますね」

 古代のドラゴンは大蛇のようだと思っていたら、まさか空飛ぶ蛇だったとは。
 
 だが翼も無く、どうやって空を飛んでいるのだろうか。
 世の中は広い。まだまだ知らないことだらけだ。

 古龍の頭、その後方に人影が見える。
 乗っている……というより振り回されている?

「なんでしょうね、あの人影アレは」
「宙に浮く蛇でロデオとは珍しい趣味だ」

 腕を組んでしみじみと語るラキスの隣で、アリアが慌てていた。

「なんでそんな悠長なのッ!! 古龍が目を覚ましちゃってんだよ!?」

 全くもってアリアの言う通りなのだが、どうにも気持ちがついていかない。

 モンスターの声が空に響いたとき、ラキスもアークも「やられた」と思った。
 古龍はルシガーの手に落ち、手のつけられない状況を頭に浮かべた。
 なのに、息せき切って駆けつけてみたらどうだ。
 古龍はいまだ山頂に居て、こともあろうかロデオに興じているではないか。

 つまり……拍子抜けしてしまった。

「で、ルシガーアレは何をしてるんだ?」
「光ってる手綱みたいなのアレが怪しいですね」

 目を凝らすと、確かに古龍の頭のあたりが光っていた。手綱……か。
 しかし、あれだけのサイズの手綱……まさか普通の手綱ということはないだろう。

「なんか……特別な手綱アレか」
「きっと特別な手綱アレですね」
「で、特別な手綱アレを使っても古龍アレは制御できなかったと」
「みたいですねぇ。伝説の古龍アレですから」

 アークがなぜか少し胸を張る。

「さっきからアレアレうるさいっ! いいから、さっさと古龍アレをなんとかしようよ」

 そう言うアリアも釣られている。
 それはさておき、空中で暴れている古龍をどうするか。

 当然だが、攻撃する手段は限られる。
 あのサイズのモンスターで鱗まであるとなると、とても弓兵アーチャーの矢が刺さるとは思えないが……。

「一応、射かけてみるか」

 ラキスはゴブリンの弓兵に古龍を狙わせる。

 ヒョウと風を切る音と共に、矢が古龍へと走る。
 案の定、放たれた矢は体表を覆う鱗に弾かれ、穴底へと落ちていった。

 古龍は痛痒つうようすら感じていないのだろう。
 こちらを一瞥いちべつもせず、引き続きグネグネとうねるばかり。

「気づいてもいないようですよ。いやあ、流石は古龍ですね」

 さっきから、「古龍はスゴい」と自慢気なアークが鼻につく。

 まあ、気持ちはわからなくはない。
 自分達が必死で封印してきたモンスターをサクッと倒されたら、これまでの努力は何だったんだって話だ。

 さて、次にやれることは……。

「じゃあ、ボクが眠らせてみるよ」
「ああ。やってくれ」

 アリアは頷くと、サンドマンをんだ。

 古龍までは結構な距離がある。
 ここから眠りの砂を撒いても届かない。

 アリアさらに、ドライアドを喚び出す。
 ついつい忘れそうになるが、このドライアドは【高速飛行】のスキル持ちだ。

「よしっ。行っておいで」

 サンドマンを抱えて、ドライアドが空を飛ぶ。
 小型の妖精が二匹、空を飛んでいる様子に場がさらになごんだ。

 なかなかシリアスなテンションには戻れない。

 古龍は絶えずグネグネ動いている。
 妖精たちもなかなか照準が合わないようだ。
 それでもなんとか、二匹は古龍の近くで眠りの粉をサラサラと撒いた。

 暗闇の中でキラキラと光りの粒が見えた……気がする。
 遠いし暗いからよくわからん。

「どうだ、上手くいったか?」
「う、うん。多分?」

 アリアも自信無さげ。当然だ。

「大丈夫。ちゃんと頭の上で撒けてますよ」

 アークだけは自信満々で言いきった。
 そういえばさっき、光る手綱もすぐに見つけていたことを思い出す。

「まさかお前、古龍アレがはっきり見えるのか?」
「え? はい。手綱アレも見えてますよ。これくらいは見えないと守護者は務まりません」

「「マジか」」

 やってたよ。
 も見えずに守護者やっちゃってたよ。

 ラキスはアリアと目を合わせて肩をすくめた。
 言われてみれば、朝も夜も無く侵入者を撃退しているのだから夜目は大事だ。

 さて、効果のほどは……と見守るも、古龍にさしたる変化は見られなかった。

「眠りの粉もダメ、と」
「そうでしょう。そうでしょうとも。伝説の古龍ですからねぇ。うん、うん」
「ムカつくー! ……あっ」

 アリアが古龍を――いや、古龍に捕まっている人影ルシガーを指差した。
 古龍に振り回されている状況は全く変わっていないが、どうも様子がおかしい。

 フラフラしているというか、態勢が崩れているというか。

「眠りの粉が効いた、のか?」
「効いちゃったみたいですね」
「あのままルシガーが落ちたら、古龍はどうなると思う?」
「「「………………」」」

 嫌な沈黙が流れた。
 いま古龍が暴れているのは、ヤツが握っている手綱らしきものが原因だろう。
 原因が取り除かれたとき、ここに残るのは『目を覚ました古龍』だけだ。


   §   §   §   §   §


「なぜだ!? どうなっている!」

 ルシガーは混乱していた。
 モンスターにをハメたところまでは完璧だったハズだ。

 手綱を握り、いざ穴から出ようとしたらモンスターが暴れ出した。
 しかも、翼も持たないのに宙に浮くなんて。
 パッと見は、誰がどうみても巨大な蛇だ。まさか浮くとは思わない。

 それよりも問題は黄金のだ。
 たしかに口にハマっているし、手綱もしっかりと握っている。
 なのになぜ、このモンスターは支配できないのか。

 ルシガーは必死で手綱を握りこみ、振り落とされないようにするので精一杯。
 これでは王国を蹂躙し、帝国を支配することなど出来ようはずもない。

「認めぬ、認めぬぞ! 俺は! こんなところで終わるわけにはいかんのだ!!」

 多くの仲間を犠牲にしてここまで来た。
 この賭けに失敗すれば、彼らの犠牲も全て無駄になってしまう。

「これは……なんだ?」

 計画の崩壊に戸惑うルシガーの目に、光る粒子が飛び込んできた。

 その瞬間、突如として襲ってきた眠気。
 逼迫ひっぱくした状況にもかかわらず、意識が刈り取られそうになる。

「くっ! なぜ、こんなときに」

 慌てて空を見上げると、どこかで見た妖精がサンドマンを抱えて飛んでいた。

「こいつは……あのときの!!」

 森でさらった少年召喚士。
 アイツが召喚していたモンスターに違いない。

「ここに来て、この俺の邪魔をするか!!」

 あのとき、何が何でも殺しておくべきだった。
 などと、今さら後悔しても取り返しはつかない。

「おのれ! おのれーー!!」

 怨嗟の声を上げても、睡魔には抗えない。
 再びルシガーの意識は刈り取られ、二度と戻ることは無かった。


   §   §   §   §   §


「あ、落ちた」
「落ちましたね」

 古龍の頭から人影が落下していった。
 光の手綱も持ち主がいなくなったことで、その光を失っていく。

「ヴオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!」

 己を縛っていたものが消え、古龍が大きく吠えた。

 もう暴れてはいない。
 その場で悠然と漂い、こちらの様子を窺っている。

「あのまま古龍アレを放っておく、という選択肢はないか?」
「ずっと、静かにしてくれる保証があればいいんですけどね」

 それはそうだ。
 こんな危険なモンスターを野放しにしていては、おちおち寝ることもできまい。

「……あっ!!」

 突然、アリアが大声をあげた。

「思い出した! 古龍アレ、どっかで見たことあると思ったら……。 プレシア姉さんのモンスターとそっくりだ!!」
「なるほど」

 そういうことは、もっと早く思い出してくれ。

 ※   ※   ※   ※   ※

 こちらで第三章完結となります! 盛大に拍手! クラップ! クラップ!!

 なんと、ここまで約11万字!
 めちゃくちゃスゴいッ!!
 まさか……『お気に入り追加』まだ押してない人います?

 もしいるなら、今からでも遅くありません。
 コッソリ押しちゃいましょう♪


 感想もお待ちしております!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

処理中です...