💰転生社畜と転移JKのダンジョンビジネス合同会社💰 〜奴隷を買いに来たら女子高生が売られていた件について〜

石矢天

文字の大きさ
上 下
40 / 48
WORKS4 転生社畜、女子高生とはじめる

💰新しい武器

しおりを挟む

 クランのメンバーに蛇トカゲの沼地を占拠させて一カ月が経った。
 ショウの目論見通り、うろこの盾が新たに出回ることはなくなり問題は解決したかのように見えた。

 しかし。
 ホークスブリゲイドのアジトには、再び武具屋の店主たちが集まっていた。

「確かに盾の方は元の鞘に収まりました。でも今度は矢が売れなくなったんです。なんとかしてください!」

 ショウは腕を組んで静かに話を聞いている。
 心の中では大きなため息をついているが、表には見せない。

 こんなくだらないことにいつまで付き合えばいいのか。
 ただでさえこの一カ月間、大した稼ぎにもならないナーガリザード狩りに十人ものメンバーを投入してきたのだ。
 もちろん、ショウ自身の時間も取られているから、遠征に出るヒマもない。

 結果として、クラン全体の稼ぎは明らかに落ちこんだ。
 毎月の稼ぎからクランの運営費を除き、全てをメンバーでシェアするホークスブリゲイドの報酬モデルでは、各メンバーの収入にしっかりと反映される。

 当然、メンバーからは不満の声も上がってきていた。

「今度は何が問題なんですか?」
「投げ槍ですよ! 投げ槍!」

 憎々しげにいう店主をショウは冷めた目で見ていた。
 ここ半月ほど、投げ槍を持っているメンバーが増えたことは把握している。

 従来の投げ槍と大きく違うのは、槍の穂に付けられているものがモンスターの角であること。この角にはショウも見覚えがあった。
 静かな湖畔のダンジョンの深部で出てくるバクラージと呼ばれる一角兎の角だ。

 使っているメンバーによると「何度も使えて経済的なんです」と言っていた。
 鏃が破損しやすい矢と比べて、穂が丈夫な投げ槍は回収すれば使いまわしが容易という利点がある。
 いま出回っているバクラージの投げ槍は、従来の金属製の投げ槍よりも丈夫で貫通力も高いらしく、一本買えばしばらく使えると評判になっていた。

 とはいえ、投げ槍は弓とは違った技量を求められる投擲武器である。
 しかも投げ槍は矢に比べて大きく、いくつも持ち歩けないため、元々それほど人気のある武器種ではない。

 これまで弓矢を専門にしていた者たちは、引き続き弓矢を使い続けているようで、投げ槍を使っているのは、前衛の戦士たちがサブウェポンとして持っていた弓矢を投げ槍に持ち替えたパターンが多いようだ。

 どう考えても、うろこの盾ほどの影響が出ているとは考えられない。

「投げ槍……ですか」

 結局のところ、この店主たちは少しでも自分たちの領域が侵されることが気に食わないだけ。そんなことに、こちらを巻き込まないで欲しいというのがショウの本音。

「出どころはわかっているのですか?」
「それが……。今回はよくわからんのです」
「そうですか……」

 もちろん、ショウは知っている。
 今回も元凶はダリスだ。うろこの盾の件で慎重になったのだろう、今は静かな湖畔のダンジョンでこの投げ槍を辻売りをしているらしい。

 一応、口止めはしているようだが、人の口には戸が立てられない。
 クランのメンバーが持っていれば、リーダーのショウなら口を割らせることは難しくない。

 それも、売っているのが街で有名な奴隷遣いなのだから。

「わかりました。何とかしましょう」
「おお! さすがはこの街一番のクラン、ホークスブリゲイドのショウさん!」
「いえいえ。クランと武具屋は持ちつ持たれつ、ですから」

 面倒なヤツラだが、無下にもできない。
 冒険者にとって武具は商売道具だ。彼らの機嫌を損ねて武具の値段をそろって値上げされたり、ストライキを起こされて武具を売ってもらえなくなったりすれば、クランはもちろん冒険者全体が苦境に陥る。

 もちろん彼らだって売上に影響するから、おいそれと強硬手段に出るようなことはないだろうが……。

 それに投げ槍を売っているのがダリスということであれば、まだまだ向こうも戦う気があるということだ。ダリスを手中に収めるという裏の目的のためには、さらに徹底的に叩くのも悪くはない。

「ふっふっふ。なかなかしぶといですね、ダリスさん。ここから先はさらなる地獄のはじまりですよ」


💰 🪙 💰 🪙 💰 🪙 💰 🪙 💰


「銀貨100枚は金貨10枚の売上。うーん、うろこの盾のときと比べると、まだまだ厳しいな」

 バクラージが放つ角ミサイルを回収し、植物系モンスターの蔓と枝に括り付けて作ったバクラージの投げ槍は一本あたり銀貨5枚で値付けした。
 二十四本セットの矢が銀貨6枚だから、それより安くしておこうと考えての値段設定である。

 それが二十本売れてなんとか金貨10枚の売上。
 チトセ達への報酬はそれぞれ銀貨5枚しか渡せなかった。

 このバクラージの投げ槍には大きな問題がある。
 ナーガリザードの鱗と違って、バクラージの角は一匹につき一本しか取れないことだ。

 自発的に飛ばしてくれるから鱗を剝ぐときのような手間が掛からないことと、深部のモンスターだから魔光石も大きいという点はメリットだけど。

「でも、そろそろ邪魔が入る頃だろうな」

 バクラージの投げ槍を売っているのがダリスであることは、ショウならもう気づいているだろう。まだ邪魔が入っていないのは、蛇トカゲの沼地よりも奥地であることから対応できるメンバーの選定に時間が掛かっているのかもしれない。

 次の商品を考える、か。
 そう考えるだけで気が滅入る。

 うろこの盾だって、バクラージの投げ槍だって、売ろうと思えばまだまだ売れる商品だ。どちらも一生懸命考えて生み出した武具なのに、素材の収集を妨害されるせいで作れなくなるなんてバカらしい。

 ショウはどこまでこんなことを続ける気なのだろうか。



〇現時点の収支報告(1ヵ月分)
  資金:金貨110枚と銀貨9枚(1109万円)
  収入:金貨17枚(170万円) ※魔光石売却益
     金貨10枚(100万円) ※バクラージの投げ槍20個分の売却益
  支出:▲金貨1枚と銀貨5枚(15万円) ※1ヵ月の生活費(奴隷3名含む)
     ▲金貨2枚(20万円) ※1ヵ月の消耗品費・雑費
     ▲金貨1枚(10万円) ※1ヵ月の装備補修・買い替え費
     ▲金貨10枚(100万円) ※奴隷購入費の分割払い(1ヵ月分)
     ▲金貨1枚と銀貨5枚(15万円) ※奴隷への特別報酬(1カ月分)

 残資金:金貨121枚と銀貨9枚(1219万円)

 買掛金:▲金貨50枚(▲500万円) ※奴隷購入費の支払い残額(負債)



💰Tips

【投げ槍】
 その名の通り投擲用の短い槍。
 柄から穂先までで1メートルほどの長さ。
 人間同士の戦争においては弓矢の方が圧倒的に利便性が良いため、中世以降、投げ槍の出番はほとんど無くなった。

 元々は狩猟に使われていた武器であることから、この異世界におけるモンスター討伐においては、いまだ活用されている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

おじさんが異世界転移してしまった。

明かりの元
ファンタジー
ひょんな事からゲーム異世界に転移してしまったおじさん、はたして、無事に帰還できるのだろうか? モンスターが蔓延る異世界で、様々な出会いと別れを経験し、おじさんはまた一つ、歳を重ねる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

処理中です...