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〜プロローグ〜
しおりを挟む小さな国のある城の中のこと。とても豪華とは言えないけれど、仕立てのいい服装をしている、双子のうさぎの獣人の少年らはどこか不気味なおじいさんと話しをしていた。
*
「いいか。よく聞くんだ。君たちはこの国になくてはならない存在なんだ」
「おじい様それはどうしてなのですか?」
「俺たちは王子だからでしょ?おじい様」
「ジョセの言う通り、それもあるがな。ジョセとジョアにはこの耳と尻尾があるだろう」
「くすぐったいよ。おじい様......。この耳と尻尾はおじい様も国民の人たちもないよね」
「そうだな。俺らが特別だからだろ...」
「そうか、すまない、すまない、ジョア。ついつい触ってしまうんだよ。ジョセの言う通り、君たちは特別なんだ。このふわふわな耳と尻尾があるから君たちはこの国の王子になれたも同然なんだよ」
「「.....................?」」
「だから、この国からは出て行ってはダメだ。もちろん、この城からも」
そうこの小さな国の双子のうさぎの獣人の少年らはこの国の貴重な王子。名前は兄がジョセセ・ハーモン。弟はジョアチモ・ハーモン。このおじいさんはジョセとジョアの父のような存在のミスター・マーク。
まだ8歳と言うジョセとジョアにはマークの言葉が分からなかった。
╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶
「ねぇ、ジョア。あの、さ。この城から出ていかない?」
「うーん、そうだね。ジョセ...。でも、出て行くのはダメだよ」
「行こうぜ。もうここに縛られていたくない」
「ジョセ......」
「な!行こうぜ」
困るジョアを気にせずにジョセはジョアの手を引いた。そして、ジョセとジョアは重たい2人の部屋の扉を開いた。
だが、そこにはマークがいた。
「ジョセ、ジョア...。どこに行くつもりだったんだ!」
「おじい様......」
「ジョアこっち!」
ジョセはジョアを勢いよく引きながら、窓をバンッと開けたのだった。
*
「蕗星~、どこ行くの?」
「図書館だって~。図書館っ!」
「図書館って言ったって、そっちって潰れた図書館でしょ~」
「私は、絶対そこに行きたいの。どうしても!お願い、雅~」
「んー、もう!蕗星ったら。分かったよ。可愛い蕗星のことなら言うこと聞いてあげる」
私の必死に手を握りしめて、お願いポーズをすると大親友の雅は了承してくれた。雅は同級生の唯一の男の子。でも、雅は男おとこしていなくて、男って言うことを忘れるくらいに優しい子なんだよね。本当、私は雅のことが好き。この気持ちは大親友としてだけど...。あぁ~、雅みたいな男の子がたくさんいればいいのに。
「着いたー!」
「蕗星、危ないから走っちゃいけないよ」
「大丈夫、大丈夫!」
私は一目散に古びた図書館に入って行った。中は図書館の人もいないし、もちろん、市民の人もいない。みんな新しい市の図書館に行っちゃうんだから。古いものもこんな風に使わなくなるなんてもったいないな。
私は怖がらずにどんどん突き進んで行った。すると、奥には小さな図書館とは打って変わって大きなドアがあった。私はこれも勢いよく開けた。
すると、そこにたくさんの本がまだ綺麗に並んで残っていた。
「残ってる.........。あっ!!」
私は1つの分厚い大きな本を見つけた。
「これ、私が中学生の時に初めて読んだファンタジーじゃん!懐かしいっ!」
私は勢いよくギュッと握りしめて、抱えた。雅の声を遠目に聞こえながら、懐かしいファンタジーの本を開けた。
──────ドバンッ!キラキラキラキラッ
と聞いたこともないような音が耳をつんざいた。目の前がキラキラキラキラと音を立てながら、色とりどりの光が溢れた。
視界が綺麗に見えるようになった瞬間、私の目の前には、もふもふのうさぎ耳にもふもふのまん丸尻尾をフリフリと揺らして、必死に走っている少年と泣きながら走っている少年がいた。2人とも私の方に向かってくる。
「ジョセ~、もう戻ろうよー。えーん」
「ジョア、何言ってるんだよ!出てくって決めただろ」
「ジョセくんにジョアくん......?」
「やばい、ロゼだ!......連れ戻される。まだ敷地内なのに...」
「ロゼ~、わーん」
と私の名前を呼んで泣いている男の子が両手を広げ、歩いて来た。
ジョセくんにジョアくん...。なんか聞いたことある気がする。いや、見た気がする。確か......。私は頭を回して、思い当たるものを考えてみた。
「ジョセくんってジョセセくんだよね?ジョアくんはジョアチモくんだよね?名字はハーモン?」
「ロゼ~?」
「そうだけど、城の中に戻らないからな!ロゼ」
「ジョセくんとジョアくんはうさぎの獣人で、王子で逃げてるとこ...。これって…、あの物語じゃない。
ねぇ、ねぇ!私はロゼだからロゼッティ?」
「「...........................」」
「そうだよ。てか何言ってるんだよ、ロゼ... 」
「ロゼ、大丈夫?頭打った?」
「頭打ってない!大丈夫!」
「ジョセーーー!ジョアーーー!出ていくな!ロゼ!そいつらを捕まえろ!」
「捕まえません!ごめんね!ミスター!私はジョセくんとジョアくんを守りたいから、このまま連れ去ります!私の隣にユニコーンのエミリーいますし、大丈夫なので!」
「な、なんだと。何言っているんだ!」
ミスターの声が聞こえる。あんなおじさん無視、無視。
このままジョセくんとジョアくんが勝手に城から飛び出して、ミスター・マークに捕まると悲惨な日々になっちゃうだけだからね。私が姫騎士になったのなら私がしたかった役目である、ジョセくんとジョアのお助け人を務めちゃうよ!
私は早速、近くにいる弟のジョアくんから先にエミリーの背に乗せた。そして、驚いた顔をしているジョセくんを気にもせずにエミリーに乗せた。あとは私が乗るだけ。
──────────「ロゼ!何しているんだ!君までどこへ行くつもりだ!もういい!ジョセ、ジョア、それとロゼ...。お前たちは追放だ!出ていけっ!
ジョセ、ジョア、お前らが外に出ても所詮ただの弱いうさぎなだけなんだからな!」
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