5つ子王子様と溺愛生活〜約束と甘いキス〜

優木王

文字の大きさ
上 下
8 / 11
第一章𓂃 𓈒𓏸◌

乙お兄ちゃんは風邪引きました

しおりを挟む
「純、食べ残してるじゃないか…」

「あれ?本当だ。嫌いなピーマンは残ってるんだね。そっか、純もまだ俺たちから自立してないんだね。しょうがないな、食べちゃお」

乙の呟きに、充が周りを和ませようと声を出すも、周りは静まり返っていた。律は、黙ったままスマホを見ている。文は、純に食べられた唐揚げをスンとも言わず、残っているのを食べ始めた。


「俺は、毬の方に向かうな。充は、純の方に行ってほしい」

と乙は、充に言い残し、リビングから出て行った。

「うん、乙。俺も可愛い弟の方に行くよ」

と充はにこやかに言って、食べ終え、玄関へと向かった。



「.........純のばか。俺の唐揚げ食べやがって…。毬は、俺が奪ってやる」

「.......ん?」

文がボソッと言った言葉に律は首を傾げ、聞く。

すると、文は律に頬を真っ赤にして見つめた。沈黙が続いたのが嫌で、文はぷいっとそっぽに向き、口を開いた。

「お、お風呂…。入っていい?律兄」

「いいよ、文先に入れ」

と会話をして、文はその場から立ち去った。


┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈


___チュンチュン、チュン

と鳥の鳴き声が外から響き渡る。

私は、気付くと朝を迎えていた。私は起き上がると、ベッドだった。あれ、机に突っ伏して寝てたはずなのに…。

「毬.........。ごめんな…」

「ん?いつ、お兄ちゃん?」

私の身体に別の人の体温を感じる。と、近くを見ると乙お兄ちゃんが、私のベッドにいて、私を抱き締めていた。私は、久しぶりの人の温もりに癒された。私が、お兄ちゃんたちに会ったのは中学三年生の冬だった。私は、初めはお兄ちゃんに馴染めなかったが、乙お兄ちゃんが率先と声を掛けてくれていた姿を思い出して、見つめた。

今は、お兄ちゃんたちのお父さんと私のお母さんは家にいない。帰ってくるのは当分先になりそうな用事を作ったらしい。あれから、ずっとお兄ちゃんたちといる。

乙お兄ちゃんが、本当のお兄ちゃんだったら、私はきっと嫌だったな…。

ん、あれ。私、何を思ってるんだろう。私は、ふっと我に返り、思ったことを訂正する。

そうそう!乙お兄ちゃんには、確か、美人の年上の先輩彼女がいたはず…。ダメだよ。私っ!

私はブンブンと首を振り、バシバシと両手で自分の頬を叩いた。

と、すると、あくびをしながら乙お兄ちゃんが起きた。

「毬、起きたか。今日は、確か…土曜日だから毬のやりたいように過ごせよ。あいつらにも伝えとくから…ごほっ」

「乙お兄ちゃん大丈夫?風邪引いちゃった?私がベッド占領してたから乙お兄ちゃん寝れなかったよね」

「ん?毬、何言ってるんだよ。毬と寝たら、俺が襲っちゃうかもしれないだろ!絶っっ対に軽い男と寝るなよ。俺みたいにはいかないんだからな!…ゴホッゴホッ」


乙お兄ちゃんは、まぶた重そうに目を開き、手を口に抑える。風邪っぽそうだな。私は、心配になって言う。


「.........で、でも。乙お兄ちゃんの顔が赤くなってきてるし、苦しそうだよ」

「お.........おう、俺は、ゴホッ。なんとかなるから、さ。別にいいんだよ。それにあいつらの朝ごはんも作らなきゃ」

私は、言うことを聞かない乙お兄ちゃんの肩に両手を置いて、大きく言った。

「乙お兄ちゃんこそ、自分を労わって!今日は、私が家事するから!!」

「き、毬.........、ごほっ。お前に無理させ…たく、ない」

「私はいつもお兄ちゃんたちに助けてもらってるから、私にお兄ちゃんたちにしたいの。これが、今日の私のしたいこと…。乙お兄ちゃん」

私は私なりの真剣な表情を乙お兄ちゃんに向ける。そして、乙お兄ちゃんは渋々と深い表情をして返事をした。

「わ、分かった。それが、今日の毬のしたいことって言うなら、仕方ないな。俺は一番上なのに、妹にさせるのは悪いな.........」

乙お兄ちゃんは、どこか涙目でそう呟いた。乙お兄ちゃんが弱ってる。こんな姿見るの、初めて。その表情はどこか純お兄ちゃんと重なって見えた。

「うん!乙お兄ちゃんは、ゆっくり休んでて」

私はそう言って、ベッドから降りた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【電子書籍発売に伴い作品引き上げ】私が妻でなくてもいいのでは?

キムラましゅろう
恋愛
夫には妻が二人いると言われている。 戸籍上の妻と仕事上の妻。 私は彼の姓を名乗り共に暮らす戸籍上の妻だけど、夫の側には常に仕事上の妻と呼ばれる女性副官がいた。 見合い結婚の私とは違い、副官である彼女は付き合いも長く多忙な夫と多くの時間を共有している。その胸に特別な恋情を抱いて。 一方私は新婚であるにも関わらず多忙な夫を支えながら節々で感じる女性副官のマウントと戦っていた。 だけどある時ふと思ってしまったのだ。 妻と揶揄される有能な女性が側にいるのなら、私が妻でなくてもいいのではないかと。 完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。 誤字脱字が罠のように点在します(断言)が、決して嫌がらせではございません(泣) モヤモヤ案件ものですが、作者は元サヤ(大きな概念で)ハピエン作家です。 アンチ元サヤの方はそっ閉じをオススメいたします。 あとは自己責任でどうぞ♡ 小説家になろうさんにも時差投稿します。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...