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プロローグ

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「菜乃ったら、また読んでるの。その本」

「うん、また読んでる。えへへ」

本を読んで、席に座っている私に声掛けて来たのは私のことをよく理解している幼なじみの愛平あいひら 由美ゆみ

「本当、菜乃ったらその本大好きなんだから。お姫様に憧れるのもほどほどにしなよ。現実は違うんだから」

「アハハ、そうだよね」

由美はまた同じ本を読んでいる私に少しばかり呆れながらも、助言してくれた。

私の名前は神無月かんなづき 菜乃なの高校3年生。同い年で幼なじみの由美に子供扱いされている。由美に散々に言われているが、私も自分のそういった夢を受け入れてる。そう、私はとことんの夢見る女子だ。

王子様はいるって信じちゃってるから。

まぁ、それは置いといて。私はまた本に目を落とした。

私がこの本を何回も読むには理由がある。それも、由美には言えないこと。それはこの本に登場してくる、悪役令嬢の子が気に入ってるということ。

ヒロインのシャルロラ・バニラは王様である父と妃である母の元に生まれ、病弱ながらも生きて、一国の王子であるミュレット・カンタリアと婚約を果たすという物語。よくある物語と言えば、よくある物語。
ヒロインのシャルロラが体調を崩すのは決まって、同い年のティアーナ・ティラミスが舞踏会にいる時だった。シャルロラの「貴方方はどうお元気にお過ごしなのかしら」との言葉に侮辱を言われた気がしたティアーナは幸せそうに笑うシャルロラに羨んで、舞踏会での公の場でシャルロラを押し倒してしまった。そのティアーナの行動が周りにいる公族に目にとめられ、悪役令嬢という不評が流れ始められてしまう。
ティアーナには双子の妹のティアーヌがいて、双子ということにも気味悪がられた。ティアーナとティアーヌには3歳という歳で早くに実の母を亡くし、継母ままははとなった母はティアーナとティアーヌに冷たく、心を委ねることができずにいた。実の父はそんな継母に惚れ惚れしていて、父にも甘えられずに育ったティアーナとティアーヌ。

継母はティアーナとティアーヌの美貌に嫉妬し、公族の不評の声に便乗してしまう。ティアーナとティアーヌがまだ16という歳で手放す。そして、ティアーナとティアーヌがまだ子供ながらにしておりに閉じ込められてしまう。そして、生涯を終える。

そんなティアーナとティアーヌの小生に菜乃はスッキリしない気持ちでいた。ティアーナが可哀想かわいそう。ティアーナは呼ばれた舞踏会には必ず出席して、その日を楽しもうとしていただけだし、シャルロラの言葉が侮辱ぶじょくに聞こえて、押し倒してしまうのもティアーナの生き方を見ると、同情しちゃうもん。突発的とっぱつてきに歯をむくこともちゃんと心のある人なら誰でもあるって私は思う。嫌なことを聞いたら、耳を防ぎたくなるもん。

私は思う。ティアーナはきっとシャルロラのあの一言がなかったら、ティアーナを見つけてくれる、素敵な王子様が現れるのではないかと。そして、シャルロラよりも早くに、運命的な素敵な出会いを果たしていたって。

私はこの本のティアーナとティアーヌの魅力なら、一つや二つ以上に言える。

シャルロラの物語じゃなくて、ティアーナとティアーヌの物語なら、もっといいのに。ティアーナとティアーヌこそ、光りを当てるべきだと思うもん。

どうして、二人は檻に閉じ込められてしまうの。こんな話し、酷過ぎる。

私はお姫様に憧れてるんじゃない。私はただただ、ティアーナの身の上に気にいらないの。私は信じてる、王子様はどんな子にもいるって。


私は信じてる。


だから、私は夢をみたい。


────────私はティアーナを助けたいの!


私は本をパシッと閉じて、胸に本を抱きしめ、目を閉じた。強く願って…。

目を開けると、教室には誰もいなく、電気が不気味に点滅を繰り返す。すると、だんだん私の頭が痛くなった。と同時に、私は床にバタンッと倒れた。そして目の前が暗転した。


────────「ティアーナ、ティアーヌ。二人はとてもいい子ね」
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