3 / 3
番外 その後のふたりは
しおりを挟む◇
薔薇の花の見事な庭園の四阿の内──
エクセレス様の空色の瞳がひたむきにわたくしを見つめられます。
「エクセレス様、恥ずかしいのですが」
扇で顔を隠そうとすると、
「どんな顔のシナリシアも見ていたいんだ。しかもこんな可愛らしい顔を見せないで扇で隠してしまおうなんてひどいな」
と、おっしゃいます。
「ひどくはございません。見せられるものではございませんわ」
そうお伝え致しましても、エクセレス様は首を横に振り、真剣な眼差しで、
「婚約者の私にだけ見せていてくれればいい。むしろ他には見せないで欲しい」
懇願されます。どうしたものでしょうか。
今まですれ違い、会うこともなかったわたくし達でしたが、今はひたすらエクセレス様がいらっしゃいます。
嬉しい気はしますが、照れくさいです。
今までの埋め合わせだとプレゼントを、そして会いに来てくださいます。
「いいかい? 手を握っても」
わたくしは小さく頷きました。
わたくしの手がエクセレス様の大きな手にそっと大事そうに包まれます。肌の感触。あたたかさを感じ、心臓が早鐘を打ちます。
「シナリシア、もう少し近づいていいかい? ずっとこうしていたかった。こうして、シナリシアに愛を語りたかった。今でも夢ではないかと思うくらいに、不安だ。シナリシア、君はここにこうして私のそばにいてくれるよね? 君はふっといなくならないよね?」
そう言われ、距離が近づいたため、エクセレス様の香りを強く感じてしまいます。
爽やかで大好きな香り──
わたくしはもう片方の手を胸にあて、小さく息を吐き、エクセレス様を見つめました。
「わたくしもお慕いしております。エクセレス様ただおひとりを。いなくなったりは致しません。エクセレス様がわたくしを退けることがない限りは」
物語の強制力はもうなくなっただろうとは思いましても、不興をかうことがないとはいえないでしょう。
──他の誰かを、わたくしではない誰かを愛されたら……
つい、思うことに気づかれたのか、
「信じてもらえるまで、私は君に愛を捧ぐよ。私の心はシナリシアにしか染まらない。シナリシアでなければ駄目なんだ。私を嫌いにならないで」
そうおっしゃい、わたくしをそっと抱き寄せました。
──このまま、ずっとこのままで……
言葉もなくただ寄り添って、あなたの体温と鼓動を感じていたい。
この場所を誰にも譲りたくはないと、そう願う心が止められません。
──いつまでもあなたと共に……
end
後書き
ですますがあっているかとか、あずまや、四阿、検索かけて、一応これでもありかなとか、調べつつ書いていました。
後、初めは王子何周か同じ場面繰り返している設定で書くか迷いましたが、うちの王子が語りでなければ、伝えなさげ。
男爵令嬢は転生者も考えましたが、さてどうしようで終わりました。側近候補のどちらかが実は意中の方とか。
色々つたないですが、読んでくださりありがとうございます。
まぁ、今回のお話は物語の強制力が悪いのお話でした。
お気に入り登録、しおりありがとうございますの番外は甘くなあれと思いながら書いた甘めなお話です。
楽しんでいただける方がいらっしゃいましたら幸いです。ありがとうございました。
少し改稿しました。
0
お気に入りに追加
14
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説

【完結】彼女は2回目の令嬢を辞めたい。
杏
恋愛
公爵令嬢シーナは、前世が社長令嬢だったことを18歳の誕生パーティーで思い出す。
「そんな…また令嬢なんて、無理!」
社長令嬢としての煩わしさから解放されたと思ったら今度は公爵令嬢…シーナは絶望した。
シーナはなんとか令嬢から脱却したい。
目指すのはモブ!!平民として穏やかに暮らすの!!
そんなある日、平民の青年ジェーンと出会い、シーナは一目惚れをする。
※設定ゆるいです
※三話で完結です
※色々すっ飛ばして終わります

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

この魔法はいつか解ける
石原こま
恋愛
「魔法が解けたのですね。」
幼い頃、王太子に魅了魔法をかけてしまい婚約者に選ばれたリリアーナ。
ついに真実の愛により、王子にかけた魔法が解ける時が訪れて・・・。
虐げられて育った少女が、魅了魔法の力を借りて幸せになるまでの物語です。
※小説家になろうのサイトでも公開しています。
アルファポリスさんにもアカウント作成してみました。

断罪されそうになった侯爵令嬢、頭のおかしい友人のおかげで冤罪だと証明されるが二重の意味で周囲から同情される。
あの時削ぎ落とした欲
恋愛
学園の卒業パーティで婚約者のお気に入りを苛めたと身に覚えの無いことで断罪されかける侯爵令嬢エリス。
その断罪劇に乱入してきたのはエリスの友人である男爵令嬢ニナだった。彼女の片手には骨付き肉が握られていた。

【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。

好きな訳ないじゃないですか
古部 鈴
恋愛
なろう版とはほぼ同じものですが、ほんの少しだけ触りました。
きらきらした方に絡まれやすい、男爵令嬢――実は前世の記憶持ちで、読んでいた小説の似た世界に生まれてきたことに、そしてヒロインに転生したのかも? に気づきました。
あまりに絡まれて、きらきら恐怖症ぎみに。そして、好みはあっさりしたお顔のお方、元々画面のすみっこでたまに挿絵とかにちらっと出ていたモブ伯爵令息が気になっているにも関わらず、きらきらに絡まれて嫌になっているヒロイン主観です。
王子に絡まれて、うんざりしているところに、王子の婚約者の公爵令嬢がやってきて、こんな令嬢を悲しませるとか、女の敵ですねと、内心思いながら逃げ道探して、逃げ出します。
ゆるゆるふわふわご都合です。敬語とかおかしかったら申し訳ないです。
お気に入り登録の方、しおりの方ありがとうございますの番外は、意中の伯爵令息主観です。伯爵令息もひそかに転生者です。
がんがん近づいて来るヒロインに今のところひいているようです。
そういうお話です。
まぁつたないお話ですので、楽しんでくださる方がいらっしゃいましたら幸いです。
気分で追加の番外増やしてみました。よろしければで。
少しだけ改稿しました。別サイト掲載あり。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
強制力に抗おうとするだけでもこの王子様は偉いですよ😳。
感想いただきありがとうございます。王子には頑張って抗ってもらいました。