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過去編 番外
よりにもよって彼にされたくはない
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◇
リヴィアス・フェラーゼ。緋色の髪に瞳の彼。
まだこの世界は浅いみたいだから、不文律わかってないだろうし、どういうような勢力分布になっているかとかも知らないんだろうな。
普通にこの業界にいたらわかると思うんだが、耳にはいってないんだろうかなとか思っていた。
まぁ、そういうのはおいおいわかっていけばいいことだし、そう甘いものじゃないからな。体当たりで頑張ってもらうってことでいいだろうと思ってみていたけど、そんな彼にまずいやつが目をつけたのだ。
普通空気とかでわかるだろうというようなことを、どうも彼――リヴィアスはわかっていないのか、気にしないのか、なかなかの怖いもの知らずだ。
わかっていないっていいな。
いや、そんなこともないかな。おれは地雷踏みたくはないから情報は常に集めていたいしな。
怖いからさ。
おれがあの状態ならすんごく怖いと思うけどな。
多分たえられないぜ。
天然ぼけ率の高いリヴィアスは、恐ろしいことにそう、あのフェザントにマーキングされている。
黒髪、金茶色の瞳、リヴィアスの側近役しているあの彼なんだがな。まさか役にひきずられているとかないよな?
――まさかあの彼が、そんな訳ないか。
そしてそのことに、どうも全くリヴィアスは気がついていないみたいなんだ。
あんなにあからさまなのにな。どうして気がつかないのかわからないくらいだけど。
フェザント・クルベローヴァ。
外身は容姿端麗、そして頭脳明晰。一見非の打ち所のないように見える彼である。
実のところ中身は知るものぞ知るだが、どこまでも悪魔だ。
なんとなく微笑ましいリヴィアスに、いまやほぼ誰も表立って近寄らない理由の一つは彼のせいであるのだ。
彼に逆らってはならない。
それは対角にいるフルフさま、リヴィアスの好きな女の子役のフルフトーリエにもいえることなのだが、また種類が違う。
そして、おれはなんとなくフルフさまもリヴィアスのことが気に入っているみたいなふしがあることに気がついている。嫌なことにな。
気付きたくもないのにうっかり気づくのは、情報集めて観察しているせいもあるかも知れないが。
彼女も外見は可憐な愛らしいお嬢様だが、中身はひどく、心労でマネージャーの回転がひどく速い。
そんな彼女のこともリヴィアスは全く気がついてないようだから、すごく鈍いんじゃないかと思うんだ。あんなに絡まれているのにな。なんで赤い絨毯持って、彼女にひいてあげているの? 頼まれても断れよ。
本当ひどく嫌な星のもとに生まれてるんじゃないかと思う。
なんたって、二大巨頭に好意もたれてんだぜ。両方とも姿は整ってるんだけどさ。中身破壊されつくしてんだもんな。
はぁ。本当哀れなヤツ。
まぁ、今回はフルフさまは棚上げしておこう。
あまりだから少しくらい、微かな良心が満たされる程度気持ちばかりの忠告くらいしてやってもいいような気がするくらいは、リヴィアスになんとなくの好意はあるんだけど。
だが、ヤツがどんな罠をはっているかわからない。おれもわざわざネコに鈴つけに行く役したくないんだよな。
気付けよ。
ま、もう気付いたからってどうしようもないけどな。
目に少し気になるだけだし、危うきものには近寄るなって言うし。うん。かなり危ないし。どんな災難に遭うかわからない。
あまりに哀れだと思った人間がリヴィアスに言って地雷をふんでいることを知っているのだ。
リヴィアスがフェザントに言いつけたのだろうか?
しないといわれたと聞いているから、多分独自のなにかにひっかかったんだろうな。
盗聴機くらいさらっとしかけていても彼ならおかしくないし、密告者くらい飼っていてもおかしくはない。まぁ何をしててもおかしくはない。ヤツならば。おれの印象はそんな印象だ。
どうなるかわかっていて、ばーんと爆発させられてしまうのはイヤだ。踏み抜きたくないさ。
ああ、おれだって我が身がかわいいさ。当たり前だろう?
そう、そうなんだ、皆のものよ。
おれが、役でいくらフェザントの兄役しているからって、そんなのおれにもってきても困るのだ。
何しろって言うんだ?なぁ?
代表して、おれがフェザントに何か言うもしくはリヴィアスに言う……そんなことしろってか? やめてくれよ。
矢表に立ちたくないのはおれだってそうだ。おれだって地雷ふみぬきたくはないし、爆発させられたくなんかないぞ。なぁ。うまく立ち回れそうって無茶な。
なんでおれなんだ? ったく。おれんとこにはいろいろな話が有象無象と寄せられてくる。
まぁ情報集めているのもあるけどな。
不可思議な相談ごとまでもがよせられて。
つい目にあまりすぎたのはたまに気分で動いたりしていたが。
そしてそうなると当然目をつけられるのはおれってことになって。
なぁ、皆のものよ。
おれに矛先をむけてしまって、矢面にしてその後ろにちゃっかり隠れようとしているだろう?
意識にないのかあるのかしれないが、そうなんじゃないか? つい思ってしまう。
盾にするなよ盾に。
おれだって欲しいよ、都合のいい盾。出来れば頑丈で都合がいい盾。あったとしてもそれでも怖いけどな。
そうさ、本気で怖いんだよ。出来れば撤退してこの位置放棄したいんだよ。
「ソシェルトさん」
おれを見つけたリヴィアスが近くに寄って来る。ああ、そうさ。なんか好かれてしまったのさ。だから困るんだ。
「どうかしたのか?」
無視するにもなんだし、声をかけると、満面の笑みで、
「今日はありがとうございました。助けていただいたおかげで、シーンどりうまく行きました」
そういえば、ついうっかりアドバイスしちゃったっけ? おれってなんてやさしいんだろ? ほっとけよって思いつつ、いっちゃったんだっけ?
「すごく嬉しいです。こんなふうにお話してもらえて。フェザントさんも気さくな方ですけど……」
ああ、きたきたよ。あんただけだよ。御大フェザントを気さくなんて言葉で修飾するのは――いえないけどな。ふう。
「あ、フェザントさんもきました。フェザントさーん」
呼ぶなよ。
呼び寄せるなよ、あんな悪魔を。
うわあああ。来たよ。
おれ席はずしていいよな?
いや、はずしたらやましいことありって思われてなにされるか……ああ、どうしろっていうんだ? しっかり考えろよ。
この世界にいれなくなるようなことしかねないぞやつなら。
いや、やつのおもちゃに手を出したらことによったら世界どころか、コンクリート詰めで、海に捨てられるかも。
幾ら何でもそこまでしないか、いやもっとひどいめに……想像は加速度をがんがん増して加速する。だって怖いんだよ。恐怖心かきたてるんだよ。
「ああ、ソシェルトじゃないか」
「こんばんは」
ああ、ああ、リヴィアスにまたマーキングしてるよ。
「あの……?」
リヴィアスは肩を抱かれて困惑ぎみ。意味わかってないんだろうな。ふう。あきらかなのになぁ。
「いいじゃないか。トモダチだもん。なぁ、ソシェルト?」
ふるなよ。こっちに……おまえのおもちゃとりゃしないよ。
「まぁ、いろいろな形があるからな」
肯定でもなく否定でもないように答えておく。
それを受けて、
「ソシェルトさんがそう言うなら、そうなのかなぁ……でもなぁ」
微妙そうだ。そりゃそうだろうな。
「オレのいうことは信じられないんだ?」
「いや、そうじゃなくて……」
なんか雲行きがあやしい――
「じゃあな。悪い、実は用事あるんだ」
さっさと消えよう。もう遅いかもしれないけど。
「あ、もしかして、呼びとめてお邪魔してしまいましたか?」
申し訳なさそうなリヴィアスに、
「大丈夫だ。じゃあ」
すまないが、おれは撤退する。
危険信号、危険注意、何がなんでも逃げるべしなのだと思いながら、顔には出さず、軽く手を上げ振る。
「それでは、また。おつかれさまです」
「おつかれさん」
「夜道には気をつけてね。ソシェルト」
思わず振り向いた視線の先で、リヴィアスの肩を抱いたフェザントが意味ありげに笑っていて――
「あ、ああ。そう、だな」
こえーよ。ったく。おれのせいなのかよ?
それを見て何を思ったのか、ぽんと手をたたいておれたちに言う。
「そうか、仲よかったんですね。フェザントさんとソシェルトさん。知りませんでした。心配しあう仲だったんですね」
開いた口がふさがらない。
いや、ポーカーフェイスだ、だが、内心何言ってくれてるんだよ、リヴィアスって叫びたい。
ないないないないないから。
フェザントはにやりと笑った。
おれをみて笑う。怖い、怖いぞ。
「ははは、君面白い。そうだね。うん。実は彼と仲いいんだ」
蒼白になりそうな顔を必死でどうにかしながら、内心恐慌状態になる。
ちょっとまて。
なんなんだそれは? 待ってくれ。
だめだ、逃げよう。本気で逃げよう。全力で逃げよう。無理だ、だめだこれは無理。
「話しの腰をおって済まないがお先に失礼するよ」
「ごめんなさい、ありがとうございました。ソシェルトさん。ではまた」
「おぅ、またな」
「ソシェルト、またね」
「……あ、ああ」
こんなふうに――
どうにか離れて、無人の部屋に入り、絶対に誰もいないということを確認した。
気が抜けて、座り込み頭を抱えてへたり込む。
おれ、なんかこれからあのフェザントに仲いいふりされることになったよ。
確定なのかな?
なんだこれ? なんでこうなる?
リヴィアスよ、お前の目にはどう見えているんだ? お花畑なのか? やはりお花畑なのか? この地雷だらけの殺伐空間が綺麗なお花畑に見えているのか?
なんて心臓に悪い。胃が痛い。
――なるべく避けよう。
どこまでも避けよう。
避けきれなくても避けたい。
なかったことにしてくれないかな?
なんて恐ろしいことになったんだろう?
リヴィアス・フェラーゼ。緋色の髪に瞳の彼。
まだこの世界は浅いみたいだから、不文律わかってないだろうし、どういうような勢力分布になっているかとかも知らないんだろうな。
普通にこの業界にいたらわかると思うんだが、耳にはいってないんだろうかなとか思っていた。
まぁ、そういうのはおいおいわかっていけばいいことだし、そう甘いものじゃないからな。体当たりで頑張ってもらうってことでいいだろうと思ってみていたけど、そんな彼にまずいやつが目をつけたのだ。
普通空気とかでわかるだろうというようなことを、どうも彼――リヴィアスはわかっていないのか、気にしないのか、なかなかの怖いもの知らずだ。
わかっていないっていいな。
いや、そんなこともないかな。おれは地雷踏みたくはないから情報は常に集めていたいしな。
怖いからさ。
おれがあの状態ならすんごく怖いと思うけどな。
多分たえられないぜ。
天然ぼけ率の高いリヴィアスは、恐ろしいことにそう、あのフェザントにマーキングされている。
黒髪、金茶色の瞳、リヴィアスの側近役しているあの彼なんだがな。まさか役にひきずられているとかないよな?
――まさかあの彼が、そんな訳ないか。
そしてそのことに、どうも全くリヴィアスは気がついていないみたいなんだ。
あんなにあからさまなのにな。どうして気がつかないのかわからないくらいだけど。
フェザント・クルベローヴァ。
外身は容姿端麗、そして頭脳明晰。一見非の打ち所のないように見える彼である。
実のところ中身は知るものぞ知るだが、どこまでも悪魔だ。
なんとなく微笑ましいリヴィアスに、いまやほぼ誰も表立って近寄らない理由の一つは彼のせいであるのだ。
彼に逆らってはならない。
それは対角にいるフルフさま、リヴィアスの好きな女の子役のフルフトーリエにもいえることなのだが、また種類が違う。
そして、おれはなんとなくフルフさまもリヴィアスのことが気に入っているみたいなふしがあることに気がついている。嫌なことにな。
気付きたくもないのにうっかり気づくのは、情報集めて観察しているせいもあるかも知れないが。
彼女も外見は可憐な愛らしいお嬢様だが、中身はひどく、心労でマネージャーの回転がひどく速い。
そんな彼女のこともリヴィアスは全く気がついてないようだから、すごく鈍いんじゃないかと思うんだ。あんなに絡まれているのにな。なんで赤い絨毯持って、彼女にひいてあげているの? 頼まれても断れよ。
本当ひどく嫌な星のもとに生まれてるんじゃないかと思う。
なんたって、二大巨頭に好意もたれてんだぜ。両方とも姿は整ってるんだけどさ。中身破壊されつくしてんだもんな。
はぁ。本当哀れなヤツ。
まぁ、今回はフルフさまは棚上げしておこう。
あまりだから少しくらい、微かな良心が満たされる程度気持ちばかりの忠告くらいしてやってもいいような気がするくらいは、リヴィアスになんとなくの好意はあるんだけど。
だが、ヤツがどんな罠をはっているかわからない。おれもわざわざネコに鈴つけに行く役したくないんだよな。
気付けよ。
ま、もう気付いたからってどうしようもないけどな。
目に少し気になるだけだし、危うきものには近寄るなって言うし。うん。かなり危ないし。どんな災難に遭うかわからない。
あまりに哀れだと思った人間がリヴィアスに言って地雷をふんでいることを知っているのだ。
リヴィアスがフェザントに言いつけたのだろうか?
しないといわれたと聞いているから、多分独自のなにかにひっかかったんだろうな。
盗聴機くらいさらっとしかけていても彼ならおかしくないし、密告者くらい飼っていてもおかしくはない。まぁ何をしててもおかしくはない。ヤツならば。おれの印象はそんな印象だ。
どうなるかわかっていて、ばーんと爆発させられてしまうのはイヤだ。踏み抜きたくないさ。
ああ、おれだって我が身がかわいいさ。当たり前だろう?
そう、そうなんだ、皆のものよ。
おれが、役でいくらフェザントの兄役しているからって、そんなのおれにもってきても困るのだ。
何しろって言うんだ?なぁ?
代表して、おれがフェザントに何か言うもしくはリヴィアスに言う……そんなことしろってか? やめてくれよ。
矢表に立ちたくないのはおれだってそうだ。おれだって地雷ふみぬきたくはないし、爆発させられたくなんかないぞ。なぁ。うまく立ち回れそうって無茶な。
なんでおれなんだ? ったく。おれんとこにはいろいろな話が有象無象と寄せられてくる。
まぁ情報集めているのもあるけどな。
不可思議な相談ごとまでもがよせられて。
つい目にあまりすぎたのはたまに気分で動いたりしていたが。
そしてそうなると当然目をつけられるのはおれってことになって。
なぁ、皆のものよ。
おれに矛先をむけてしまって、矢面にしてその後ろにちゃっかり隠れようとしているだろう?
意識にないのかあるのかしれないが、そうなんじゃないか? つい思ってしまう。
盾にするなよ盾に。
おれだって欲しいよ、都合のいい盾。出来れば頑丈で都合がいい盾。あったとしてもそれでも怖いけどな。
そうさ、本気で怖いんだよ。出来れば撤退してこの位置放棄したいんだよ。
「ソシェルトさん」
おれを見つけたリヴィアスが近くに寄って来る。ああ、そうさ。なんか好かれてしまったのさ。だから困るんだ。
「どうかしたのか?」
無視するにもなんだし、声をかけると、満面の笑みで、
「今日はありがとうございました。助けていただいたおかげで、シーンどりうまく行きました」
そういえば、ついうっかりアドバイスしちゃったっけ? おれってなんてやさしいんだろ? ほっとけよって思いつつ、いっちゃったんだっけ?
「すごく嬉しいです。こんなふうにお話してもらえて。フェザントさんも気さくな方ですけど……」
ああ、きたきたよ。あんただけだよ。御大フェザントを気さくなんて言葉で修飾するのは――いえないけどな。ふう。
「あ、フェザントさんもきました。フェザントさーん」
呼ぶなよ。
呼び寄せるなよ、あんな悪魔を。
うわあああ。来たよ。
おれ席はずしていいよな?
いや、はずしたらやましいことありって思われてなにされるか……ああ、どうしろっていうんだ? しっかり考えろよ。
この世界にいれなくなるようなことしかねないぞやつなら。
いや、やつのおもちゃに手を出したらことによったら世界どころか、コンクリート詰めで、海に捨てられるかも。
幾ら何でもそこまでしないか、いやもっとひどいめに……想像は加速度をがんがん増して加速する。だって怖いんだよ。恐怖心かきたてるんだよ。
「ああ、ソシェルトじゃないか」
「こんばんは」
ああ、ああ、リヴィアスにまたマーキングしてるよ。
「あの……?」
リヴィアスは肩を抱かれて困惑ぎみ。意味わかってないんだろうな。ふう。あきらかなのになぁ。
「いいじゃないか。トモダチだもん。なぁ、ソシェルト?」
ふるなよ。こっちに……おまえのおもちゃとりゃしないよ。
「まぁ、いろいろな形があるからな」
肯定でもなく否定でもないように答えておく。
それを受けて、
「ソシェルトさんがそう言うなら、そうなのかなぁ……でもなぁ」
微妙そうだ。そりゃそうだろうな。
「オレのいうことは信じられないんだ?」
「いや、そうじゃなくて……」
なんか雲行きがあやしい――
「じゃあな。悪い、実は用事あるんだ」
さっさと消えよう。もう遅いかもしれないけど。
「あ、もしかして、呼びとめてお邪魔してしまいましたか?」
申し訳なさそうなリヴィアスに、
「大丈夫だ。じゃあ」
すまないが、おれは撤退する。
危険信号、危険注意、何がなんでも逃げるべしなのだと思いながら、顔には出さず、軽く手を上げ振る。
「それでは、また。おつかれさまです」
「おつかれさん」
「夜道には気をつけてね。ソシェルト」
思わず振り向いた視線の先で、リヴィアスの肩を抱いたフェザントが意味ありげに笑っていて――
「あ、ああ。そう、だな」
こえーよ。ったく。おれのせいなのかよ?
それを見て何を思ったのか、ぽんと手をたたいておれたちに言う。
「そうか、仲よかったんですね。フェザントさんとソシェルトさん。知りませんでした。心配しあう仲だったんですね」
開いた口がふさがらない。
いや、ポーカーフェイスだ、だが、内心何言ってくれてるんだよ、リヴィアスって叫びたい。
ないないないないないから。
フェザントはにやりと笑った。
おれをみて笑う。怖い、怖いぞ。
「ははは、君面白い。そうだね。うん。実は彼と仲いいんだ」
蒼白になりそうな顔を必死でどうにかしながら、内心恐慌状態になる。
ちょっとまて。
なんなんだそれは? 待ってくれ。
だめだ、逃げよう。本気で逃げよう。全力で逃げよう。無理だ、だめだこれは無理。
「話しの腰をおって済まないがお先に失礼するよ」
「ごめんなさい、ありがとうございました。ソシェルトさん。ではまた」
「おぅ、またな」
「ソシェルト、またね」
「……あ、ああ」
こんなふうに――
どうにか離れて、無人の部屋に入り、絶対に誰もいないということを確認した。
気が抜けて、座り込み頭を抱えてへたり込む。
おれ、なんかこれからあのフェザントに仲いいふりされることになったよ。
確定なのかな?
なんだこれ? なんでこうなる?
リヴィアスよ、お前の目にはどう見えているんだ? お花畑なのか? やはりお花畑なのか? この地雷だらけの殺伐空間が綺麗なお花畑に見えているのか?
なんて心臓に悪い。胃が痛い。
――なるべく避けよう。
どこまでも避けよう。
避けきれなくても避けたい。
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