溜息しか出やしない

古部 鈴

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もう、どうしてこうなのかしら?

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      §
 もう、リヴィアスったら、どうしていつもこうなのかしら?

 私のことが好きなくせになかなか言ってこない彼が、さりげなく言ったプロポーズに私はちゃんと答えたわ。
 凄くびっくりしていたけれど。ま、当たり前かしら? この私が承諾したのだから。

 スターの私に比べれば、万人が小物だから、誰も彼も私の隣に霞まずに立つことなんて出来はしないわ。私に対するプロポーズをリヴィアスが臆してなかなか言えなかった気持ちはわからなくないの。

 当然だと思うから。

 でもその後、この私が、それを彼に許したその後でも変わらなくて。
 ま、あぐらを掻かれたら、気分が悪いけれど、これもこれで嫌な気分なの。

 まだまだ気後れしているのかもしれないけれど。



 リヴィアスって、全く本当貧乏ったらしくて、小心者で、体は大きくてもノミの心臓で。どこまでもどうしょうもない彼だから、私に捨てられるかもと思って、尽くしてしまう気持ちはわからなくもないわ。

 でも、なんだかわからないひらひらしたエプロンをつけて出て来られたり、作業着でその辺をうろうろされると、目障りなの。とても気分が悪いわ。見ていると倒れそうになることがあるくらいよ。

 私はちゃんと、彼に普通の服を用意しておいたわ。長い緋色の癖毛、緋色の瞳に合うように私がわざわざ手配してコーディネートしたというのに。なのに彼ったら、自前の作業着ばかり着るの。

 私が選択した、そうこの私が自ら選択した洋服たち――ああ、なんて私ったら、彼に素晴らしい栄誉を与えているんでしょう。

 小心者すぎて、恐れ多くて着れないだけかもしれないけれど、それは逆だわ。彼の為に、いえ、こぎれいにするのは、そう、私のパートナーとして、ふさわしい格好をするのは、当然のことだもの。まったく、何を考えてるのかしら?


 スターの私のことを思わず崇拝してしまう気持ちもわからなくないけれど、別に下僕でなくていいの。そんなの世の中にはいて捨てるほどいるんだから。

 何も這いつくばって、絨毯をひかなくても、ただ私をそのまま抱き上げてくれれば、私の赤い道がひかれていないところでも、足を下ろさないで済むわ。

 確かにどんなに綺麗にクリーニングされてあったとしても作業着のぼろぼろで抱き上げでもしたら、許さないかもしれないけれど。

 別に掃除も洗濯も……生活のすべてを召使にでもさせればいいのに。

 彼ったら、私のために私の全ての世話を自分がしたいんだろうけれど、本末転倒だわ。私の心が望んでいることとは、全然違うもの。

 どうしてわからないのかしら? 

 私がスターだから? 輝ける美しき星の私にどうふるまえばいいのかわからないからなの?

 ああ、もうどうしてこうなのかしら。














     後書き

 一旦終了です。完結みたいなかんじですが、そのままあけておきます。
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