溜息しか出やしない

古部 鈴

文字の大きさ
上 下
5 / 8
過去編 番外

周りの目が痛い

しおりを挟む
  俺と彼は、友達になった……らしい。しかも記念だって、万年筆をくれた。
 凄く高そうな銀色のヤツで。

 物の高価さよりなんか嬉しくて、ついこっそり持ち歩いてしまうくらい嬉しくて。俺も何かあげたいなって思ったけど、こんな高価なものも何もいろいろ持っている人間に何をあげていいかわからなくなって、それじまい。

 またもっと彼のことがわかってから、何か出来ることをしたいなと思っているけど。

 友達か――

 実はそのおかげでいろいろ俺は忠告という名の告げ口をうけた。しかもこそこそたくさんにだ。

 俺は彼のこと変わっているけど、基本的にイイヤツだって思ってる。
 なのにあいつは悪魔だだの、骨のずいまで吸い取られるとか、あんなひどい冷淡なヤツはいないとか……――めちゃくちゃにされるだけだぜとか、ひどいことばかり。


 そんな人じゃないって思うし、まだろくすっぽ知らないけれど、それでもあまりのあまりさに、呆然としてしまうくらいすごいこと言われた。

 しかし、そういえば何度もそれをいいにやってきた人間はいない。ま、普通そんなものだろうけど。あたりまえにみんな一度きりで――そして次に会ったときには、俺を避けるのだ。

 ま、つっぱねたからだろうと思うんだが、なんか妙に俺を見る目がおかしいようなそんな気がするのは勘違いなんだろうか?


 よくわからないと思いつつも――


 確かに彼は不思議な人間だと思うが、スターって凡人にはわからない感性しててもおかしくないような気がするし。 


 でもそんな周りのことなんか知らないんだろうな。俺も言わないし。耳汚しすることもないと思うし。

 あいかわらず、彼は気さくで。だから、多分スターへの妬みなんだろうと思って、放っておいていたけど。

 最近確かに俺にしか、オトコでは気さくにしてないってことに気がついた。っていうか、眼中にないみたいにみえる――



「あのさ、敬語やめにしない?」
 控室で座っている俺にコーヒーをどうぞと手渡しながら、彼は言った。
「敬語――ですか?」
 それをありがとうございますって受け取って、口をつける。

 カップのしかも上等なほうのコーヒーだ。いつものよりずっと香りがいい。
「すみません。払いますね」
「いいよ。そんなの」
「しかし――」
 口篭もってしまうと、

「そのですます、なんかさ、地なら気にしないけど、言いなれてないでしょ? 本当はそんな話し方しないでしょう? どちらかといえば、役のリヴィアスさまとそうかわらない口調がもともとなんじゃないかと思って」

 俺の隣に座って、自分用のコーヒーに口をつけている彼。

「リヴィアスさまはよしてくださいよ。役抜けたら」
「ほら、なんか変なカンジなんだ」
「しかし俺なんかが、あなたにため口使うんですか?」
「なんか悪いことあるの? トモダチじゃないか」

 こんなところでまた妙な儀式されたら恥ずかしいから、まわりを確認しておこうと思ってそっとみると、俺たち注目されてる? ま、注目もするかな?

 ちょっとどきどきする。

 そんなこと思ってると、案外スキンシップ好きの彼が、俺の肩を抱く。

 より悪目立ちすると、さりげなくはずそうとしてみてるけれど、うまくいかない。絶対注目の的決定だ。なんか遠巻きに見つめられてる。絶対に。

「ため口使いますから、使うから!」
「そっか。じゃ、きまり」
 ああ、目が痛い。すごく痛い。突き刺さるように痛い。

 自分のことでグルグルだったから、周りの生ぬるい、なんともいえない視線とか、哀れみをそのときが全然気がつきもしなかった。
しおりを挟む
script?guid=on
感想 0

あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

好きでした、さようなら

豆狸
恋愛
「……すまない」 初夜の床で、彼は言いました。 「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」 悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。 なろう様でも公開中です。

完結 若い愛人がいる?それは良かったです。

音爽(ネソウ)
恋愛
妻が余命宣告を受けた、愛人を抱える夫は小躍りするのだが……

【完結】側妃は愛されるのをやめました

なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」  私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。  なのに……彼は。 「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」  私のため。  そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。    このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?  否。  そのような恥を晒す気は無い。 「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」  側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。  今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。 「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」  これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。  華々しく、私の人生を謳歌しよう。  全ては、廃妃となるために。    ◇◇◇  設定はゆるめです。  読んでくださると嬉しいです!

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

処理中です...