よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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お願いだから

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お願いだからそばにいて
私をひとりにしないで
あなたの腕の中
私を強く抱きしめて──

私は冷えた部屋の中
ひとりうずくまる

あなたがいた痕跡が
あちらこちらに見えて
手を伸ばしそうになる
あなたに触れたくて

自分の冷えた掌で頬を覆ってみても
それはあなたの手ではなくて
両腕を自分に絡めてみても
それはあなたの腕ではなくて

あなたはもういないのに
私はあなたのぬくもりを
忘れられずにいる

優しいあなたの両腕
あなたのぬくもりと匂い
あなたの全てを感じていたい
なのに──

もう二度とあなたに抱きしめられることはない

お願いだからそばにいて
あなたがそばにいて欲しい
それが所詮無理なことはわかっていても
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