よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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水たまり 改訂

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傘から少し顔を出して見れば
灰色の雨雲

ようやく強く傘をたたく音が止み
どしゃぶりだった雨があがって──

雨あがりの昼下がり

私は開いた傘を閉じて
下を向いて
道路を見れば
ところどころに大きなみずたまり

雨雲の隙間から太陽の光が差して

水面は鏡のように
その面に世界を映し込む

逆さまに
そっくりと
そっくりだが
逆さまに

うつしこまれる景色
みずたまりに
閉じ込められた風景

水面に世界は映る
逆さまに

それを見て佇む私も逆さまに

覗き込む私を
逆さまな私が覗いていた
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