よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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忘れたくない

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あなたの面影が
儚く消えて逝こうとする感触に
身ぶるいをする

薄暗がりの道を目を凝らし
ゆっくりと手探りで
そっと心の手を伸ばして

ゆらめくか細い灯のような
或いは薄く壊れやすい玻璃のような
もう増えることのないあなたとの思い出達
時の流れに流されないように
繰り返し手繰り寄せる

それは続いていく日常に
ふぅと消えて逝ってしまうようで
過ぎゆく時に
切なく狂おしい想いに駆られながら
それでも忘れたくないと
必死に何度も何度も手繰り寄せる

そっと吹き消えてしまいそうなあなたを
大切に大切に繰り返し手繰り寄せ
ひとつひとつ拾い集め抱きしめる

忘れてしまいたくない
今はいないあなたを
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