よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

文字の大きさ
上 下
160 / 179

あなたの匂い

しおりを挟む
樹々の眠りを覚ますような
あたたかな陽気

春の香り
花々は咲き乱れる

そっと花芽をふくらませ
つぼみはゆっくり花びらをのばして
ほどけるように

色とりどりに花は開いていく
目覚めるように
緑の芽が伸び葉を広げる
目覚めるように

白いベンチに座る私の隣には
眠ってしまったあなたの姿
ゆらり幻が目に浮かぶ

ふとした拍子に香るようなあなた
私はあなたの匂いを忘れられないまま

陽の光はふりそそぎ
花木は光を宿すように輝きながら
春を歌い語り咲き誇っているというのに

私は白いベンチの隣にいない
あなたを見つめ続けていた





















しおりを挟む

処理中です...