よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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白の花

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雨上がりの朝のひととき
私の目をひいたのは
地に咲く一輪の白い花

小さな白いつりがねの花は
うつむき下を向いたまま

その花びらの端を黄緑が
ぽつりぽつりと彩り

朝の日差し
小さな白いつぼみと
緑の葉が長く伸び 
雨の名残を残すままに

透明な涙のような滴を
その白いつりがねに

まだ冷たい初春の風に
草花は揺れて

つぅと滴は伝い落ちる
花は下を向いたまま
その花は静かに涙をこぼす

そっと手を伸べて
伝う滴を掌に受ける
ひとつぶ
私に涙をこぼした





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