よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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足踏み

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扉を開けて外に出る
いつもと同じでありながら
いつもとは違う光景

やけに静かで寒いと思っていたが
周囲を見やればそこは雪景色
白い雪のうっすらかかった
屋根に軒に樹々に
いつもの風景が違うものに

私は口元に冷たい両の手を近づけて
ふうと息を吐く

冷えた空気に白い息
少しだけあたたかくなった掌

白い雪に
ふと触れてみたくて
近づこうとしてみたが
手を伸ばしかけてやめる

そっと冬の名残を見つめ
その視線を空に向ける

早春の季節の変わり目
春はまだ足踏みしているようだ
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