よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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あなた

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私を退けたあなたが
私に手を伸ばす

握りしめれば
このままだろうか

見つめながら
言葉に耳を傾ける

私に向けた
あなたからの言葉
私の心にはもうささらない

退けられなければ
まだ共にあれたのかもしれなかったのに

あなたの私に向けた掌
私はそれを握りしめることは出来なくて

あなたの言葉が遠く聞こえる
私は背を向けて
掌で耳をふせて

あなたの声から耳を背ける

もしあなたが
私を好きでいてくれている言葉が
そこにあれば
私は私を騙してでもそばにいたかもしれない

でも……

背を向けた私は
振り返らない

もう別の道しか歩めないあなたの
背を見つめることさえ出来ないまま







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