よせあつめ ─詩集─

古部 鈴

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残像

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夢か現か――

あなたの姿が見えたようで
思わず私は立ち上がる

目を凝らしてみても
そこにあなたの姿はなくて

耳を澄ませても
あなたの声は聞こえない

暗がりに冷えた風が吹き
枯れ果てた樹々を揺らす音が
そこに静かに響く

ただかさついた音が響くのみ

当たり前だ
そんなはずもないというのに
それでも探してしまう
あなたを
いるはずのないあなたを

この目はあなたの姿を求めて
この耳はあなたの声を探して

どこにもいないあなたを
気づけば探してしまうことを
止めることが出来ない

あかりの灯る街灯は
白々と目の前の樹々を照らし
かさついた枯葉が風に舞う

白い光に目を向けても
暗がりの中を探しても
あなたはもういない――


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