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妖精と駆け引き(2)
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「こんな物語はどうだ?」
俺はベッド脇の椅子に腰をかけて語り始めた。
「かつてその昔、ある小国の王は友好の証として王太子と大帝国の王女との婚姻を望んだ。だが、王太子には昔から婚約していた幼馴染みがおりその事が問題となった。大帝国は言った。嫁ぐ王女を大切に扱い、王女が生んだ子を次期国王とすること。王女だけを妻とすること。国王は約束を守ることを条件に自国の安寧を手に入れた。その後嫁いですぐ、王女は第一王子を生んだため大帝国も安心した。だが、良いことは続かない」
俺はここで一息ついて、持ってきた紅茶を飲んだ。
妖精はまた、俺の周りを一回りし聞いてきた。
「それで?続きは?」
"気になってるな"
「王太子妃が出産して暫くしたのち、宰相の娘である王太子の元婚約者が妊娠したと知らせが入った。小国の王族は第3夫人まで娶ることが許されていたが、大帝国との約束があるため大事となった」
「ふむふむ。それでそれで?」
目をキラキラさせながら頷いていた。
ディアは微妙な顔をしていたが………。
俺は続けた。
「王太子は王太子妃となった姫に相談した。聡明な姫ならば受け入れてくれることを期待して………。姫は、産後のひだちが思わしくなく2人目は望めないかもしれないと感じていたため、自分の子供として育てることを提案した。王太子もそのことを王達に告げ、その通りにしようとした矢先、宰相が王に囁いた。「王子が一人ではお世継ぎ断絶の危機になりかねません。子供を生めない王太子妃の代わりにお世継ぎを生むため、我が娘を第2夫人にすべきです」と」
「なんだとー?話が違うじゃないか!妻は一人だけって約束だろ!」
約束が絶対である妖精の世界で、約束を反故にする行為は許せないのだろう、プンプン怒っていた。
その様子は愛らしかったため、俺はにこやかに妖精に微笑みかけ続けた。
「王は王太子妃がもう子供をもうけられないことを理由に元婚約者を第2夫人とした。大帝国は勿論猛反対したが、嫁いだ王女がいる国を攻めるわけにもいかず、抗議だけに留まった」
「友好の証というより、王女は人質みたいな感じになってないか?」
"妖精は意外と勘がいい"
「そうだ。結局、大切な王女とその子供がいる国を滅ぼしたくないという優しい大帝国の王につけこんだんだ、小国の王は」
「滅ぼしちゃえば王女も帰ってくるのにな」
「まぁな」
「だが王女は王太子を少なからず愛していた。だから、大帝国の王に頼めなかったのだろう。王女は産後のひだちが悪くても公務を行いひたすらに努力した。それがまた第2夫人には気にくわなかったのだろう。王妃が伝染病にわざとかかるよう計り殺した」
「ひっでー奴だな、第2夫人!そもそも王太子も何浮気してんだよ!!俺ならそんなことしない!」
「俺もだ」
俺はディアを見ながら相づちを打った。
「そんで?死んで終わりか?俺はハッピーエンドが好きなんだよ。ハッピーエンドにしろよ!」
「んー。これは史実だからな。変えられない。だが、まだ第一王子がいる」
「ん?物語じゃないのか?」
「あぁ。俺の母上の話だ」
「うげー。お前悲しい奴じゃん」
「そう面と向かって言われると悲しいな」
「お前よく大人しくしてるな」
「いや、大人しくしてるつもりはないよ。これから第2夫人だった現王妃と現宰相にはたっぷりお仕置きしようと思ってるよ」
俺は悪どい顔になり言い放った。
「おっ、いーね!俺も手伝ってやろーか?」
"期待通りの反応をしてくれて助かるよ"
「あぁよろしく頼む。さしあたって、お前がローザの側にいた理由をこう変えてくれないか?」
俺はベッド脇の椅子に腰をかけて語り始めた。
「かつてその昔、ある小国の王は友好の証として王太子と大帝国の王女との婚姻を望んだ。だが、王太子には昔から婚約していた幼馴染みがおりその事が問題となった。大帝国は言った。嫁ぐ王女を大切に扱い、王女が生んだ子を次期国王とすること。王女だけを妻とすること。国王は約束を守ることを条件に自国の安寧を手に入れた。その後嫁いですぐ、王女は第一王子を生んだため大帝国も安心した。だが、良いことは続かない」
俺はここで一息ついて、持ってきた紅茶を飲んだ。
妖精はまた、俺の周りを一回りし聞いてきた。
「それで?続きは?」
"気になってるな"
「王太子妃が出産して暫くしたのち、宰相の娘である王太子の元婚約者が妊娠したと知らせが入った。小国の王族は第3夫人まで娶ることが許されていたが、大帝国との約束があるため大事となった」
「ふむふむ。それでそれで?」
目をキラキラさせながら頷いていた。
ディアは微妙な顔をしていたが………。
俺は続けた。
「王太子は王太子妃となった姫に相談した。聡明な姫ならば受け入れてくれることを期待して………。姫は、産後のひだちが思わしくなく2人目は望めないかもしれないと感じていたため、自分の子供として育てることを提案した。王太子もそのことを王達に告げ、その通りにしようとした矢先、宰相が王に囁いた。「王子が一人ではお世継ぎ断絶の危機になりかねません。子供を生めない王太子妃の代わりにお世継ぎを生むため、我が娘を第2夫人にすべきです」と」
「なんだとー?話が違うじゃないか!妻は一人だけって約束だろ!」
約束が絶対である妖精の世界で、約束を反故にする行為は許せないのだろう、プンプン怒っていた。
その様子は愛らしかったため、俺はにこやかに妖精に微笑みかけ続けた。
「王は王太子妃がもう子供をもうけられないことを理由に元婚約者を第2夫人とした。大帝国は勿論猛反対したが、嫁いだ王女がいる国を攻めるわけにもいかず、抗議だけに留まった」
「友好の証というより、王女は人質みたいな感じになってないか?」
"妖精は意外と勘がいい"
「そうだ。結局、大切な王女とその子供がいる国を滅ぼしたくないという優しい大帝国の王につけこんだんだ、小国の王は」
「滅ぼしちゃえば王女も帰ってくるのにな」
「まぁな」
「だが王女は王太子を少なからず愛していた。だから、大帝国の王に頼めなかったのだろう。王女は産後のひだちが悪くても公務を行いひたすらに努力した。それがまた第2夫人には気にくわなかったのだろう。王妃が伝染病にわざとかかるよう計り殺した」
「ひっでー奴だな、第2夫人!そもそも王太子も何浮気してんだよ!!俺ならそんなことしない!」
「俺もだ」
俺はディアを見ながら相づちを打った。
「そんで?死んで終わりか?俺はハッピーエンドが好きなんだよ。ハッピーエンドにしろよ!」
「んー。これは史実だからな。変えられない。だが、まだ第一王子がいる」
「ん?物語じゃないのか?」
「あぁ。俺の母上の話だ」
「うげー。お前悲しい奴じゃん」
「そう面と向かって言われると悲しいな」
「お前よく大人しくしてるな」
「いや、大人しくしてるつもりはないよ。これから第2夫人だった現王妃と現宰相にはたっぷりお仕置きしようと思ってるよ」
俺は悪どい顔になり言い放った。
「おっ、いーね!俺も手伝ってやろーか?」
"期待通りの反応をしてくれて助かるよ"
「あぁよろしく頼む。さしあたって、お前がローザの側にいた理由をこう変えてくれないか?」
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