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作戦会議(1)
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王宮に戻ろうかとも思ったが、学園側が用意した執務室に向かうことにした。
執務室に入り、ディアとエドモンにはソファに座るよう促し、俺はソファ近くの肘掛け椅子に座った。
学園にこのような場所があることは内密にされているため、二人ともキョロキョロ部屋を見渡していた。
「まるで王宮の一室のようですね」
ディアが部屋を見渡しながらそう感想をもらした。
「学園に王族が入学した場合、使用できることになっている部屋だ。王族が気楽に過ごせる場所を提供するために作ったんじゃないかな」
俺は笑いながらそう答えた。
本当は、学園内でも特秘事項の公務をスムーズに行えるよう準備されているのだが、俺は学園にあまり来ていないため公務を持ち込んでいない。持て余していた部屋だ。
まぁ、セキュリティも一番高い部屋なため、寝るには最高の環境だが。
「さて、エドモン。運良く私の側近候補になったのだから、これから宜しくね」
「はい!誠心誠意お仕え致します、殿下!」
「殿下って呼ぶのもやめようか。側近になるんだしレイモンドと呼んでくれ。しかも学園では後輩だしね」
「い、いえ、そういうわけには」
エドモンは慌ててそう言い、額の汗を拭った。緊張しているのか、傍から見ても汗をびっしりかいているのがわかる。
「そんなに緊張されると困っちゃうな。最初の威勢はどこにいったんだろうね」
「最初は殿下が孤児院の子供を助けるとおっしゃったので、あまりにもビックリしてつい……。口を出したくなってしまったのです」
「貴族として言いたくなったから言った、じゃやっていけないぞ。というか、孤児を助けることがそんなに驚くことか?」
「はい。一国の王子が一人の孤児を助けるために動くなんて、どこの夢物語ですかっ!」
エドモンはまた興奮したようで、俺に向かって声を張り上げた。
「はっはっはっ、そうかそうか」
俺はその様子を見て面白くなり笑った。呆れるくらい素直な反応に呆れながらも、エドモンのそのような態度は嫌いじゃなかった。
"なーんか親近感湧くなぁと思ったら、日本人的なんだろうな、雰囲気が"
エドモンは貴族教育をあまり受けていないため貴族らしくない態度だが、一定水準の生活は保証されて育っているため平民とも違うゆとりのある雰囲気を纏っていた。日本の高校生的な雰囲気があるのだ。
"高校生の弟ができた感じだな、現世では俺の方が若いけど"
エドモンは俺に笑われたため、苦笑いを浮かべばつが悪そうにしていた。
そんなときディアが話に入ってきた。
「エドモン様。レイ様の側近候補となられたのですから私もできる限り協力させていただきますわ。高位貴族の領主教育に長けている家庭教師もご紹介できます」
「ありがとうございます。ただ、私には自由に人を雇う権限もなければお金もありません」
それを聞いた俺は
「私が出そう」
ディアは俺の回答に首をふり
「我が公爵家が支援致しますわ。お父様にお願いしてみます」
"ディアの父親に頼るのはカッコ悪いよな。俺は金ならある!なにせ王子だしな"
「いや、公爵家は良い家庭教師を教えてくれれば良い。後は私の方で手配する」
カッコつけた感じでそう答えたのたが、ディアはどうも納得せず、
「公爵家は兄様が第二王子の側近候補ですが、王太子にと推しているのはレイ様です。我が家門をもっと信頼してくださいませ」
ディアが珍しく早口でそうまくしたてた。良く見るとドレスの端をギュッと掴んでいる。
「どうした、ディア。今、公爵に頼らなければならないほど切羽詰まっていない。ディアが私の味方だとちゃんとわかっているよ」
俺は安心させるようにできるだけ優しい口調になるよう心がけて、そう言った。
だが、口調だけでは伝わらなかったようで
「私一人では教会にアポすら取れないので、結局レイ様のお手を煩わせてしまいました。私にできることでしたら、父の力でもなんでも使ってレイ様のお役に立ちたいです」
ディアは下を向いたまま、そう言った。
「急にどうしたのだ?」
「ディアナ嬢に孤児のことを先に相談されていたのですか?」
エドモンは空気を読まず質問してきた。
「ディアはロデルナグループだからな。ロデルナの肝は、教会だよ、と教えただけだよ」
俺は、そうだよね?とディアに同意を求めた。
「ええ。そうですわ。孤児のことは先程初めて知りました」
エドモンはなんか納得いかない顔をしていたが、
「まぁ、とりあえず、家庭教師はレイモンド殿下にお願いしようと思います。紹介だけお願いしますね、ディアナ嬢」
「わかりましたわ」
ディアは落胆したように頷いた。
「さて、おしゃべりばかりではなく、本題に入ろうか」
真剣な顔をして、二人に話しかけた。
「まず、ロデルナの孤児の陳情書の件だが、私は握りつぶそうと思う」
「はい!?」
「レイ様!?」
二人は驚愕の表情を浮かべた。
「先程、あんなにロデルナグループで力説されていたのになんだったのですか!」
エドモンがまた怒りだした。
「だから。作戦だ。私が握りつぶした陳情書を側近候補のお前が気付きロデルナの孤児を救う。そうすることで、司教はエドモンに恩を感じるだろうからエドモンを領主に推してもらう、というストーリーだ」
俺は先程思い付いた案を提案してみた。
「レイモンド殿下は、私を試しているのですか?」
エドモンは怒りとも怪訝な表情ともとれる器用な表情でそう俺を睨み付けながら問いかけてきた。
執務室に入り、ディアとエドモンにはソファに座るよう促し、俺はソファ近くの肘掛け椅子に座った。
学園にこのような場所があることは内密にされているため、二人ともキョロキョロ部屋を見渡していた。
「まるで王宮の一室のようですね」
ディアが部屋を見渡しながらそう感想をもらした。
「学園に王族が入学した場合、使用できることになっている部屋だ。王族が気楽に過ごせる場所を提供するために作ったんじゃないかな」
俺は笑いながらそう答えた。
本当は、学園内でも特秘事項の公務をスムーズに行えるよう準備されているのだが、俺は学園にあまり来ていないため公務を持ち込んでいない。持て余していた部屋だ。
まぁ、セキュリティも一番高い部屋なため、寝るには最高の環境だが。
「さて、エドモン。運良く私の側近候補になったのだから、これから宜しくね」
「はい!誠心誠意お仕え致します、殿下!」
「殿下って呼ぶのもやめようか。側近になるんだしレイモンドと呼んでくれ。しかも学園では後輩だしね」
「い、いえ、そういうわけには」
エドモンは慌ててそう言い、額の汗を拭った。緊張しているのか、傍から見ても汗をびっしりかいているのがわかる。
「そんなに緊張されると困っちゃうな。最初の威勢はどこにいったんだろうね」
「最初は殿下が孤児院の子供を助けるとおっしゃったので、あまりにもビックリしてつい……。口を出したくなってしまったのです」
「貴族として言いたくなったから言った、じゃやっていけないぞ。というか、孤児を助けることがそんなに驚くことか?」
「はい。一国の王子が一人の孤児を助けるために動くなんて、どこの夢物語ですかっ!」
エドモンはまた興奮したようで、俺に向かって声を張り上げた。
「はっはっはっ、そうかそうか」
俺はその様子を見て面白くなり笑った。呆れるくらい素直な反応に呆れながらも、エドモンのそのような態度は嫌いじゃなかった。
"なーんか親近感湧くなぁと思ったら、日本人的なんだろうな、雰囲気が"
エドモンは貴族教育をあまり受けていないため貴族らしくない態度だが、一定水準の生活は保証されて育っているため平民とも違うゆとりのある雰囲気を纏っていた。日本の高校生的な雰囲気があるのだ。
"高校生の弟ができた感じだな、現世では俺の方が若いけど"
エドモンは俺に笑われたため、苦笑いを浮かべばつが悪そうにしていた。
そんなときディアが話に入ってきた。
「エドモン様。レイ様の側近候補となられたのですから私もできる限り協力させていただきますわ。高位貴族の領主教育に長けている家庭教師もご紹介できます」
「ありがとうございます。ただ、私には自由に人を雇う権限もなければお金もありません」
それを聞いた俺は
「私が出そう」
ディアは俺の回答に首をふり
「我が公爵家が支援致しますわ。お父様にお願いしてみます」
"ディアの父親に頼るのはカッコ悪いよな。俺は金ならある!なにせ王子だしな"
「いや、公爵家は良い家庭教師を教えてくれれば良い。後は私の方で手配する」
カッコつけた感じでそう答えたのたが、ディアはどうも納得せず、
「公爵家は兄様が第二王子の側近候補ですが、王太子にと推しているのはレイ様です。我が家門をもっと信頼してくださいませ」
ディアが珍しく早口でそうまくしたてた。良く見るとドレスの端をギュッと掴んでいる。
「どうした、ディア。今、公爵に頼らなければならないほど切羽詰まっていない。ディアが私の味方だとちゃんとわかっているよ」
俺は安心させるようにできるだけ優しい口調になるよう心がけて、そう言った。
だが、口調だけでは伝わらなかったようで
「私一人では教会にアポすら取れないので、結局レイ様のお手を煩わせてしまいました。私にできることでしたら、父の力でもなんでも使ってレイ様のお役に立ちたいです」
ディアは下を向いたまま、そう言った。
「急にどうしたのだ?」
「ディアナ嬢に孤児のことを先に相談されていたのですか?」
エドモンは空気を読まず質問してきた。
「ディアはロデルナグループだからな。ロデルナの肝は、教会だよ、と教えただけだよ」
俺は、そうだよね?とディアに同意を求めた。
「ええ。そうですわ。孤児のことは先程初めて知りました」
エドモンはなんか納得いかない顔をしていたが、
「まぁ、とりあえず、家庭教師はレイモンド殿下にお願いしようと思います。紹介だけお願いしますね、ディアナ嬢」
「わかりましたわ」
ディアは落胆したように頷いた。
「さて、おしゃべりばかりではなく、本題に入ろうか」
真剣な顔をして、二人に話しかけた。
「まず、ロデルナの孤児の陳情書の件だが、私は握りつぶそうと思う」
「はい!?」
「レイ様!?」
二人は驚愕の表情を浮かべた。
「先程、あんなにロデルナグループで力説されていたのになんだったのですか!」
エドモンがまた怒りだした。
「だから。作戦だ。私が握りつぶした陳情書を側近候補のお前が気付きロデルナの孤児を救う。そうすることで、司教はエドモンに恩を感じるだろうからエドモンを領主に推してもらう、というストーリーだ」
俺は先程思い付いた案を提案してみた。
「レイモンド殿下は、私を試しているのですか?」
エドモンは怒りとも怪訝な表情ともとれる器用な表情でそう俺を睨み付けながら問いかけてきた。
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