上 下
7 / 66

元側近候補とのすれ違い(俺視点/ディオルゲル視点)

しおりを挟む
改めて前世の記憶を振り返ってみたが、攻略対象に対して悪巧みをしなければ問題なさそうだ。

ただ、アベール…もといその父親である宰相には遺恨があるため、なんとかアベールを使って陥れてやりたい。

………。

悪役の俺が、誰かを陥れることは自滅的なのではとも思わなくもないがこれは致し方ない。母上のためだ。



「殿下、そろそろお目覚めになられますように。」

扉の向こう側から侍従が話しかけてきた。

ヤバい。徹夜してしまった…。

「ああ。今起きる。」




「本日は婚約者様をエスコートなさいますか?」

侍従が支度の最中問いかけてきた。
何を当たり前のことを聞いてくるのだろう?俺の婚約者は美人なのだから一人でいかせたらヤバいだろ。そう思いながら返事を返した。

「ああ。まぁ、婚約者だからな。」

従者は頷き退出した。



~~公爵邸(俺視点)~~

婚約者の家に到着すると、公爵夫妻が出迎えてくれた。まだ、ディアナ嬢は支度が出来ていないらしく応接間に通された。

そこで待っていると、ディオルゲルがやってきて、驚くことに片膝をつき君主に対する忠誠の誓いのポーズをとった。

「ご成人およびご入学おめでとうございます、殿下」

俺はビックリしたもののすぐ持ち直し、

「おまえは第二王子を守る者だろう。忘れたのか?」
と、問い掛けた。

「忘れてなどおりません。ただ、ご成人された殿下に」

ここで俺はディオルゲルの言葉を遮った。
俺の元に戻ってくるのかと期待してしまったバツの悪さ、また、昨晩思い返していたときの悲しい気持ちがぶり返し、これ以上聞いていられなかったのだ。

「不快だ。早くディアナ嬢を呼んできてくれ。」


彼は少し沈黙した後、立ち上り頭を下げ退出した。


ディアナ嬢がやっと現れ、

「殿下、本日はお忙しい中ご足労頂き感謝致します」

と述べた。

俺はディオルゲルとのやり取りはなかったかのように彼女に微笑み、

「ディアナ嬢、入学おめでとう。学園までエスコートしよう」
と言い公爵邸を後にした。

俺は学園までの短い時間で、ディオルゲルとの昔のやりとりを思い出していた。

母上がお隠れになった日、俺は彼を呼び出した。

「第二王子派が危険だ。(俺を)守ってくれるか。」と。

彼はその日から俺の側を離れていった。



~~公爵邸(ディオルゲル視点)~~

今日、殿下がディアナをエスコートしに公爵邸へいらっしゃる。
このときしかない。ご成人された殿下に一度だけでいい、忠誠の誓いをしたい。

私は父上に許可を貰い、殿下と二人っきりになれるようお願いした。


殿下がいらっしゃった。
久しぶりの殿下だった。すぐに忠誠の誓いを示すポーズをとった。

「おまえは第二王子を守る者だろう。(俺との約束を)忘れたのか?」

そう問いかけられた。

「忘れてなどおりません。ただ、ご成人された殿下に(忠誠の宣誓をしたかったのです)」

二人だけの時ですら、周囲を警戒されているのか。私は薄々そうなることを予想していたが、実際受け入れてもらえないことにショックを受けていた。


殿下との約束。
前王妃様がお隠れになった日、俺を呼び出され殿下は命じた。

「第二王子派が危険だ。(第二王子を)守ってくれるか。」と。


殿下は、王妃の死が第二王子派である宰相の仕業であろうことに勘づいていた。だから、王妃の母国アルストロメリア帝国が第二王子派もとい第二王子を狙うことを危惧したのだろう。

殿下は第二王子のことを可愛がっており、何より心配されていたのだから。

俺は、第二王子の側近候補となり、側で保護することにした。俺の君主である殿下が王太子になるそのときまで。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

変態王子&モブ令嬢 番外編

咲桜りおな
恋愛
「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」と 「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」の 番外編集です。  本編で描ききれなかったお話を不定期に更新しています。 「小説家になろう」でも公開しています。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

処理中です...