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元側近候補とのすれ違い(俺視点/ディオルゲル視点)
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改めて前世の記憶を振り返ってみたが、攻略対象に対して悪巧みをしなければ問題なさそうだ。
ただ、アベール…もといその父親である宰相には遺恨があるため、なんとかアベールを使って陥れてやりたい。
………。
悪役の俺が、誰かを陥れることは自滅的なのではとも思わなくもないがこれは致し方ない。母上のためだ。
「殿下、そろそろお目覚めになられますように。」
扉の向こう側から侍従が話しかけてきた。
ヤバい。徹夜してしまった…。
「ああ。今起きる。」
「本日は婚約者様をエスコートなさいますか?」
侍従が支度の最中問いかけてきた。
何を当たり前のことを聞いてくるのだろう?俺の婚約者は美人なのだから一人でいかせたらヤバいだろ。そう思いながら返事を返した。
「ああ。まぁ、婚約者だからな。」
従者は頷き退出した。
~~公爵邸(俺視点)~~
婚約者の家に到着すると、公爵夫妻が出迎えてくれた。まだ、ディアナ嬢は支度が出来ていないらしく応接間に通された。
そこで待っていると、ディオルゲルがやってきて、驚くことに片膝をつき君主に対する忠誠の誓いのポーズをとった。
「ご成人およびご入学おめでとうございます、殿下」
俺はビックリしたもののすぐ持ち直し、
「おまえは第二王子を守る者だろう。忘れたのか?」
と、問い掛けた。
「忘れてなどおりません。ただ、ご成人された殿下に」
ここで俺はディオルゲルの言葉を遮った。
俺の元に戻ってくるのかと期待してしまったバツの悪さ、また、昨晩思い返していたときの悲しい気持ちがぶり返し、これ以上聞いていられなかったのだ。
「不快だ。早くディアナ嬢を呼んできてくれ。」
彼は少し沈黙した後、立ち上り頭を下げ退出した。
ディアナ嬢がやっと現れ、
「殿下、本日はお忙しい中ご足労頂き感謝致します」
と述べた。
俺はディオルゲルとのやり取りはなかったかのように彼女に微笑み、
「ディアナ嬢、入学おめでとう。学園までエスコートしよう」
と言い公爵邸を後にした。
俺は学園までの短い時間で、ディオルゲルとの昔のやりとりを思い出していた。
母上がお隠れになった日、俺は彼を呼び出した。
「第二王子派が危険だ。(俺を)守ってくれるか。」と。
彼はその日から俺の側を離れていった。
~~公爵邸(ディオルゲル視点)~~
今日、殿下がディアナをエスコートしに公爵邸へいらっしゃる。
このときしかない。ご成人された殿下に一度だけでいい、忠誠の誓いをしたい。
私は父上に許可を貰い、殿下と二人っきりになれるようお願いした。
殿下がいらっしゃった。
久しぶりの殿下だった。すぐに忠誠の誓いを示すポーズをとった。
「おまえは第二王子を守る者だろう。(俺との約束を)忘れたのか?」
そう問いかけられた。
「忘れてなどおりません。ただ、ご成人された殿下に(忠誠の宣誓をしたかったのです)」
二人だけの時ですら、周囲を警戒されているのか。私は薄々そうなることを予想していたが、実際受け入れてもらえないことにショックを受けていた。
殿下との約束。
前王妃様がお隠れになった日、俺を呼び出され殿下は命じた。
「第二王子派が危険だ。(第二王子を)守ってくれるか。」と。
殿下は、王妃の死が第二王子派である宰相の仕業であろうことに勘づいていた。だから、王妃の母国アルストロメリア帝国が第二王子派もとい第二王子を狙うことを危惧したのだろう。
殿下は第二王子のことを可愛がっており、何より心配されていたのだから。
俺は、第二王子の側近候補となり、側で保護することにした。俺の君主である殿下が王太子になるそのときまで。
ただ、アベール…もといその父親である宰相には遺恨があるため、なんとかアベールを使って陥れてやりたい。
………。
悪役の俺が、誰かを陥れることは自滅的なのではとも思わなくもないがこれは致し方ない。母上のためだ。
「殿下、そろそろお目覚めになられますように。」
扉の向こう側から侍従が話しかけてきた。
ヤバい。徹夜してしまった…。
「ああ。今起きる。」
「本日は婚約者様をエスコートなさいますか?」
侍従が支度の最中問いかけてきた。
何を当たり前のことを聞いてくるのだろう?俺の婚約者は美人なのだから一人でいかせたらヤバいだろ。そう思いながら返事を返した。
「ああ。まぁ、婚約者だからな。」
従者は頷き退出した。
~~公爵邸(俺視点)~~
婚約者の家に到着すると、公爵夫妻が出迎えてくれた。まだ、ディアナ嬢は支度が出来ていないらしく応接間に通された。
そこで待っていると、ディオルゲルがやってきて、驚くことに片膝をつき君主に対する忠誠の誓いのポーズをとった。
「ご成人およびご入学おめでとうございます、殿下」
俺はビックリしたもののすぐ持ち直し、
「おまえは第二王子を守る者だろう。忘れたのか?」
と、問い掛けた。
「忘れてなどおりません。ただ、ご成人された殿下に」
ここで俺はディオルゲルの言葉を遮った。
俺の元に戻ってくるのかと期待してしまったバツの悪さ、また、昨晩思い返していたときの悲しい気持ちがぶり返し、これ以上聞いていられなかったのだ。
「不快だ。早くディアナ嬢を呼んできてくれ。」
彼は少し沈黙した後、立ち上り頭を下げ退出した。
ディアナ嬢がやっと現れ、
「殿下、本日はお忙しい中ご足労頂き感謝致します」
と述べた。
俺はディオルゲルとのやり取りはなかったかのように彼女に微笑み、
「ディアナ嬢、入学おめでとう。学園までエスコートしよう」
と言い公爵邸を後にした。
俺は学園までの短い時間で、ディオルゲルとの昔のやりとりを思い出していた。
母上がお隠れになった日、俺は彼を呼び出した。
「第二王子派が危険だ。(俺を)守ってくれるか。」と。
彼はその日から俺の側を離れていった。
~~公爵邸(ディオルゲル視点)~~
今日、殿下がディアナをエスコートしに公爵邸へいらっしゃる。
このときしかない。ご成人された殿下に一度だけでいい、忠誠の誓いをしたい。
私は父上に許可を貰い、殿下と二人っきりになれるようお願いした。
殿下がいらっしゃった。
久しぶりの殿下だった。すぐに忠誠の誓いを示すポーズをとった。
「おまえは第二王子を守る者だろう。(俺との約束を)忘れたのか?」
そう問いかけられた。
「忘れてなどおりません。ただ、ご成人された殿下に(忠誠の宣誓をしたかったのです)」
二人だけの時ですら、周囲を警戒されているのか。私は薄々そうなることを予想していたが、実際受け入れてもらえないことにショックを受けていた。
殿下との約束。
前王妃様がお隠れになった日、俺を呼び出され殿下は命じた。
「第二王子派が危険だ。(第二王子を)守ってくれるか。」と。
殿下は、王妃の死が第二王子派である宰相の仕業であろうことに勘づいていた。だから、王妃の母国アルストロメリア帝国が第二王子派もとい第二王子を狙うことを危惧したのだろう。
殿下は第二王子のことを可愛がっており、何より心配されていたのだから。
俺は、第二王子の側近候補となり、側で保護することにした。俺の君主である殿下が王太子になるそのときまで。
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