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番外編3・学園まで忍び寄る不穏
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※感想にて複数ご指摘いただいたのですが、完結表記になっているのは本編自体が完結しているためです。
ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。また、ご指摘を下さった皆様へ感謝を申し上げます。
日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。
きんもくせい
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王立ミシュテール学園は、王都の中心地に建設された、国内最大規模のパブリックスクールである。
生徒総数はおよそ1200。例年平民・貴族を含む多くの才能ある生徒を受け入れる教育機関であり、同時に寄宿学校としての側面もある。希望者は寮に入ることができ、芸術教育に力を入れた養成コースや貴族向けのカリキュラム、平民・商家出身の生徒のための就職支援講義など、将来に役立つ人材を育成する施設として、国内外問わず右に出るものはない名門校であった。
有数の貴族令嬢・令息は13歳から学園に入学し、18歳で卒業となる。ソフィアは現在17歳、レオンは16歳なので、ソフィアに関しては来年はもう卒業予定の年だった。
____誰もが憧れる、華々しい名門校。高位貴族は生まれた時からこの学園に入ることが当たり前であり、平民にとっては大出世も夢ではない、憧れのシンデレラ城である。
しかし、そんな完璧に思える学園内にも問題はあった。
身分を問わず能力によって生徒を受け入れると謳う学園制度は、言い換えれば、貴族にとっては身分の低いものと同じ立場に、平民にとってはただ生まれがいいというだけで何の努力もしない貴族と同じ状況下に置かれるということである。
当然、このことが不和を招き、学園内では貴族・平民は基本的に対立関係にあった。例外はあれど、当然仲良くもなれなかった。
平民は貴族に対して傲慢で鼻につく奴らだと嘲笑し、貴族達は貴族達で平民のことを見下した。この二分構造は学園成立当初から続くものであり、数が多いだけにどうしようもないのが現状である。
しかし、時に平民側・貴族側、そのどちらにも属さない部類の生徒が発言力を持つことがあった。
それが、ソフィア・リルベールをはじめとする、主に高位貴族令嬢や商家出身者達で構成された『無地位』と呼ばれるグループである。
無地位群の中でもとりわけその美貌と生まれから有名だったソフィアは、当然のようにその動向の一つ一つを見守られ、いつもと趣向の違う昼食を食べただけでも噂されるほどだった。
そのため、ナタリーや兄に関する情報も一瞬で学園中を駆け巡り、また第二王子の婚約者レースから降りて弟と事業を起こすことも皆に知られていた。
そのせいか、ソフィアの第二王子婚約者候補、そして由緒ある名門貴族の侯爵令嬢という肩書きに惹かれていた者達の一部は、彼女への態度をあからさまに変えた。
しかし、これはあくまで極一部の者達であり、むしろ平民側の生徒達は以前よりも好意的な対応になった程だった。
中にはソフィアの事業について熱心に話を聞いてくる者もいて、金の匂いを嗅ぎ取った商家の者達が将来的な営業をかけてくるのも日常となった。貴族側は貴族側で、ソフィアが由緒正しい家柄であることに変わりは無く、むしろ新たな風を吹かせる第一人者として、女性達からの好感度は上がっていた。結局彼女の血筋の高貴さは変わりは無く、後ろ盾がある上にやましいことは何もない美貌の姫君であるので、一部以外の風当たりは優しいままだった。
一部以外は。
その一部というのは、第二王子派の貴族達や、過激な彼の信者、そして生徒会の複数人のメンバーである。
第二王であるカミーユは生徒会に所属しており、そのせいか生徒会内でのファンも多い。第二王子派の貴族は言うまでも無く、第一王子よりも彼を神輿にあげる者達であるので、遡れば王家の血筋を持つソフィアが婚約者になる権利を手放したとなれば、眉を顰めるのも無理はないだろう。
しかし、だからと言って、これはあんまりではないだろうか。
噴水に打ち捨てられた学生鞄と、自分のノートを見て、ソフィアは思わず天を仰いだ。
ありがたいことに、ソフィアのその後を見たいと言うお声をいただいたので、番外編という形で作品完結後も連載を続けさせて頂いております。紛らわしいことになってしまい申し訳ございません。また、ご指摘を下さった皆様へ感謝を申し上げます。
日々の感想や応援などの反応をくださったり、この作品に目を通してくれる皆様方、本当にありがとうございます。これからも作品を宜しくお願い致します。
きんもくせい
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
王立ミシュテール学園は、王都の中心地に建設された、国内最大規模のパブリックスクールである。
生徒総数はおよそ1200。例年平民・貴族を含む多くの才能ある生徒を受け入れる教育機関であり、同時に寄宿学校としての側面もある。希望者は寮に入ることができ、芸術教育に力を入れた養成コースや貴族向けのカリキュラム、平民・商家出身の生徒のための就職支援講義など、将来に役立つ人材を育成する施設として、国内外問わず右に出るものはない名門校であった。
有数の貴族令嬢・令息は13歳から学園に入学し、18歳で卒業となる。ソフィアは現在17歳、レオンは16歳なので、ソフィアに関しては来年はもう卒業予定の年だった。
____誰もが憧れる、華々しい名門校。高位貴族は生まれた時からこの学園に入ることが当たり前であり、平民にとっては大出世も夢ではない、憧れのシンデレラ城である。
しかし、そんな完璧に思える学園内にも問題はあった。
身分を問わず能力によって生徒を受け入れると謳う学園制度は、言い換えれば、貴族にとっては身分の低いものと同じ立場に、平民にとってはただ生まれがいいというだけで何の努力もしない貴族と同じ状況下に置かれるということである。
当然、このことが不和を招き、学園内では貴族・平民は基本的に対立関係にあった。例外はあれど、当然仲良くもなれなかった。
平民は貴族に対して傲慢で鼻につく奴らだと嘲笑し、貴族達は貴族達で平民のことを見下した。この二分構造は学園成立当初から続くものであり、数が多いだけにどうしようもないのが現状である。
しかし、時に平民側・貴族側、そのどちらにも属さない部類の生徒が発言力を持つことがあった。
それが、ソフィア・リルベールをはじめとする、主に高位貴族令嬢や商家出身者達で構成された『無地位』と呼ばれるグループである。
無地位群の中でもとりわけその美貌と生まれから有名だったソフィアは、当然のようにその動向の一つ一つを見守られ、いつもと趣向の違う昼食を食べただけでも噂されるほどだった。
そのため、ナタリーや兄に関する情報も一瞬で学園中を駆け巡り、また第二王子の婚約者レースから降りて弟と事業を起こすことも皆に知られていた。
そのせいか、ソフィアの第二王子婚約者候補、そして由緒ある名門貴族の侯爵令嬢という肩書きに惹かれていた者達の一部は、彼女への態度をあからさまに変えた。
しかし、これはあくまで極一部の者達であり、むしろ平民側の生徒達は以前よりも好意的な対応になった程だった。
中にはソフィアの事業について熱心に話を聞いてくる者もいて、金の匂いを嗅ぎ取った商家の者達が将来的な営業をかけてくるのも日常となった。貴族側は貴族側で、ソフィアが由緒正しい家柄であることに変わりは無く、むしろ新たな風を吹かせる第一人者として、女性達からの好感度は上がっていた。結局彼女の血筋の高貴さは変わりは無く、後ろ盾がある上にやましいことは何もない美貌の姫君であるので、一部以外の風当たりは優しいままだった。
一部以外は。
その一部というのは、第二王子派の貴族達や、過激な彼の信者、そして生徒会の複数人のメンバーである。
第二王であるカミーユは生徒会に所属しており、そのせいか生徒会内でのファンも多い。第二王子派の貴族は言うまでも無く、第一王子よりも彼を神輿にあげる者達であるので、遡れば王家の血筋を持つソフィアが婚約者になる権利を手放したとなれば、眉を顰めるのも無理はないだろう。
しかし、だからと言って、これはあんまりではないだろうか。
噴水に打ち捨てられた学生鞄と、自分のノートを見て、ソフィアは思わず天を仰いだ。
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