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エピローグ1 ・その後のリルベール一家

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あの地獄のような食事会が終わって、早1ヶ月。
ナタリーがいなくなったことで平穏が訪れたリルベール侯爵家であったが、遺恨はやはり大きく、何事も以前のようにはいかなかった。

まず第一に、ソフィアと家族の関わり方は当然変わった。
食事会の後、正式に謝罪をした両親と兄に対して、「許せる時が来るまで、心の準備をさせてほしい」と返した彼女は、以来必要最低限の会話のみを家族間のコミュニケーションとしている。
例外なのはレオンや侍女のミカエルなどの、ナタリーよりもソフィアを信じた者達だけで、彼等に対して柔らかな笑顔を見せるソフィアの姿は、他の者に複雑な想いを抱かせた。特に、元々シスコンで兄という立場を幼い頃から誇っていたアルフレッドは、自分が最もたる元凶なだけにどうすることもできず。償なおうにも過去の仕打ちが邪魔をして、身動きの取れない自身にストレスを重ねる毎日だった。

次に変わったのは、使用人の待遇である。

今回の件から使用人の声____つまり数の声というものの大切さを認識した侯爵は、1~3ヶ月に一度、アンケート方式で様々な希望や不満、改良点といった類のものを聞き出すことにしたらしく、これは使用人達から大好評だった。今まで我慢して使っていた使用人用の汚いトイレが整備されたり、壊れかけの掃除用具が新しくなったり、仕事をしないで怠けている者へ勧告が行ったりと、職場環境の改善に大きく貢献したためである。

また、ナタリーがいなくなったためか掃除婦達の業務は大変楽になり、職場の風向きも良くなったらしく、他にも執事達や庶民派のメイドもナタリーの悪影響を払拭できて、作業効率も段々と右肩上がりに戻ってきていた。

最後に挙げる変化点は、他貴族達からの評判である。

幸いなことに、悪評のほとんどはナタリーに向いており、学園では学生新聞にまでそのことが言及されているらしい。当然ナタリーが行ったソフィアへのいじめについても広まっており、男子生徒達がそれをダシに近づこうとしているらしく、レオンが全て威嚇して追い払っていた。噂では、ナタリーは事実上の勘当をされており、うんと年上の貴族に売られただとか、娼婦になっただとか、戦地に送られただとか、真偽不明なものが多く出回っていた。
しかし、もちろん全ての悪評がナタリーに向いたわけでは無い。当然子爵家は娘の教育方針についてネチネチと言及される日々であったし、仕事にも多かれ少なかれ影響が出るだろう。リルベール侯爵家は爵位の高さと血筋の高貴さから目に見えて糾弾されることはないが、扇の裏で何かしらの風評が駆け巡ったことは確実である。

そんな訳で、少なからずの悪評と亀裂を残し、しかし使用人達の待遇は多少改善され、家族間では独特な気まずい空気が漂うままではあるが、リルベール一家はひとまずの形を保っていた。
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