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第21話・実態
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ソフィアはずっと不安だった。
ソフィアはずっと恐ろしかった。
ソフィアはずっと、傷ついていた。
その原因は、当然全てナタリーだと思っていた。
でも、違った。
「私……お兄様が、ナタリー様のことを抱きしめる度に」
兄は愛する人を優先した。
「お父様が、ナタリー様を自分の娘だと言って憚らないたび……」
父は純朴で謙虚な彼女に感心した。
「お母様が、私を叱りつけるたび……」
母が自分に向けて溜息を吐いた後、ナタリーに笑顔を向けるたび。
「私の居場所が無くなって、周りの者達はそのうち全てナタリー様の言うことを信じて、ずっと愛する人たちに糾弾されて………そう言う日々が続いたらって、この先もずっとナタリー様がいたらって、私……そればかりで……」
ナタリーのことは勿論怖かったし、嫌いだった。酷いことを沢山されたし、根本の原因は彼女だ。
しかし、そんな彼女を招き入れたのは敬愛する兄で、そんな彼女を受け入れたのは大好きな両親だった。
「ナタリー様に酷くされるよりも、大好きな人たちに信じてもらえないことの方が、ずっと虚しくて……恐ろしかった……っ」
気がつけば、母は崩れ落ちていた。
泣いているのではなく、吐き気を堪えるように口元を押さえ、しゃがみ込んでいた。
そんな母を見てよろよろと駆け寄ってきた父親は、ソフィアの顔を見て、何かを言おうと口元を震わせた後、声も無く泣き出した。かける言葉も見つからないといった有様だった。
彼らにとっては、どんなことを言われるよりも辛い事だった。責められるのでもなく、嫌われるでもなく、自分たちの行いが原因で愛する娘を不安に陥らせていたのだという実感を、目の前でありありと突きつけられた。小さく震える愛娘の姿は、何よりも罪悪感を掻き立て、自分たちの罪を浮き彫りにした。
気がつけば、アルフレッドもソフィアの傍に、静かに佇んでいた。
「………お姉様……」
そっと声をかけたレオンが、震えるソフィアの体を労るように支えた。
____それがトリガーだった。
なんとか自分の心の内を話し切ったソフィアは、まるで空気が萎んでいく風船のようにへなへなとレオンに支えられ、静かにしゃくりをあげ始めた。
子供のように泣きながら、弟の服に手をやり、ただ感情を発露した。
誰も声を発さなかった。
泣き噦るソフィアの声が、しばらく沈痛に、部屋の中に響いていた。
ソフィアはずっと恐ろしかった。
ソフィアはずっと、傷ついていた。
その原因は、当然全てナタリーだと思っていた。
でも、違った。
「私……お兄様が、ナタリー様のことを抱きしめる度に」
兄は愛する人を優先した。
「お父様が、ナタリー様を自分の娘だと言って憚らないたび……」
父は純朴で謙虚な彼女に感心した。
「お母様が、私を叱りつけるたび……」
母が自分に向けて溜息を吐いた後、ナタリーに笑顔を向けるたび。
「私の居場所が無くなって、周りの者達はそのうち全てナタリー様の言うことを信じて、ずっと愛する人たちに糾弾されて………そう言う日々が続いたらって、この先もずっとナタリー様がいたらって、私……そればかりで……」
ナタリーのことは勿論怖かったし、嫌いだった。酷いことを沢山されたし、根本の原因は彼女だ。
しかし、そんな彼女を招き入れたのは敬愛する兄で、そんな彼女を受け入れたのは大好きな両親だった。
「ナタリー様に酷くされるよりも、大好きな人たちに信じてもらえないことの方が、ずっと虚しくて……恐ろしかった……っ」
気がつけば、母は崩れ落ちていた。
泣いているのではなく、吐き気を堪えるように口元を押さえ、しゃがみ込んでいた。
そんな母を見てよろよろと駆け寄ってきた父親は、ソフィアの顔を見て、何かを言おうと口元を震わせた後、声も無く泣き出した。かける言葉も見つからないといった有様だった。
彼らにとっては、どんなことを言われるよりも辛い事だった。責められるのでもなく、嫌われるでもなく、自分たちの行いが原因で愛する娘を不安に陥らせていたのだという実感を、目の前でありありと突きつけられた。小さく震える愛娘の姿は、何よりも罪悪感を掻き立て、自分たちの罪を浮き彫りにした。
気がつけば、アルフレッドもソフィアの傍に、静かに佇んでいた。
「………お姉様……」
そっと声をかけたレオンが、震えるソフィアの体を労るように支えた。
____それがトリガーだった。
なんとか自分の心の内を話し切ったソフィアは、まるで空気が萎んでいく風船のようにへなへなとレオンに支えられ、静かにしゃくりをあげ始めた。
子供のように泣きながら、弟の服に手をやり、ただ感情を発露した。
誰も声を発さなかった。
泣き噦るソフィアの声が、しばらく沈痛に、部屋の中に響いていた。
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