2 / 39
第2話・些細なもの
しおりを挟む
初めは、弟と私に対しての態度の違いに違和感を感じた所からだった。
彼女は、弟に対しては「気軽に姉さんと呼んでね」と言うのに対し、私には一度もそういった旨のことを伝えて来なかった。他にも、会話をする際にそれとなく無視をされたり、弟の話には相槌を打つのに、私の話には無反応だったり。
けれど、男の子と女の子、同性故安心してしまって少し粗雑な対応になるのだろう、と気にしていなかった。弟はそう言った態度に過剰に反応し、ますますナタリーさんを毛嫌いしたが、私が気にしていないことを知るとやり場のなさそうな複雑な表情で黙り込んでいた。
違和感が確信に変わったのは、ナタリーさんと初めて2人っきりで話した時のことだった。
「今日はお日柄も良いですし、良ければ少し庭に出ませんか?」
そう言われて、親交を深めるチャンスかもしれない、と喜んで付いていった私が馬鹿だった。
ナタリーさんと庭にて談笑していると、突然彼女は水やりをしたいと言い出し、「最近ナタリーさんは大変忙しくていらっしゃるもの。それくらい、庭師の方に任せて…」と説得しても聞かず、勝手にジョウロを持ち出したのだ。強引に水やりをしようとする彼女の姿に、「あれ…?」と内心首を傾げてはいたが、その水をかけられて、違和感は確信に変わった。
「きゃあっ!ごめんなさい、私ったら、つい手が滑ってしまって……ソフィア様があまりにもお美しくて花の様だから、お水をかけてしまいました」
悪びれもなしない様子で、テヘッと舌を出しながら笑う彼女に、初めて恐怖した。曲がりなりにも侯爵令嬢である私に水をかけて、その挙句花の様に綺麗だから、ついと笑って誤魔化す人なんて、誰1人いなかったからだ。
何より、その瞳には隠しきれない嘲笑が浮かんでいて、人間はこんなに醜悪な顔ができるのか、と思うほどに意地に塗れた顔をしていたのだ。平凡で可愛らしい、純朴そうだ、という印象は、一瞬で覆った。
その日以降、彼女の嫌がらせは徐々にエスカレートしていった。
彼女は、弟に対しては「気軽に姉さんと呼んでね」と言うのに対し、私には一度もそういった旨のことを伝えて来なかった。他にも、会話をする際にそれとなく無視をされたり、弟の話には相槌を打つのに、私の話には無反応だったり。
けれど、男の子と女の子、同性故安心してしまって少し粗雑な対応になるのだろう、と気にしていなかった。弟はそう言った態度に過剰に反応し、ますますナタリーさんを毛嫌いしたが、私が気にしていないことを知るとやり場のなさそうな複雑な表情で黙り込んでいた。
違和感が確信に変わったのは、ナタリーさんと初めて2人っきりで話した時のことだった。
「今日はお日柄も良いですし、良ければ少し庭に出ませんか?」
そう言われて、親交を深めるチャンスかもしれない、と喜んで付いていった私が馬鹿だった。
ナタリーさんと庭にて談笑していると、突然彼女は水やりをしたいと言い出し、「最近ナタリーさんは大変忙しくていらっしゃるもの。それくらい、庭師の方に任せて…」と説得しても聞かず、勝手にジョウロを持ち出したのだ。強引に水やりをしようとする彼女の姿に、「あれ…?」と内心首を傾げてはいたが、その水をかけられて、違和感は確信に変わった。
「きゃあっ!ごめんなさい、私ったら、つい手が滑ってしまって……ソフィア様があまりにもお美しくて花の様だから、お水をかけてしまいました」
悪びれもなしない様子で、テヘッと舌を出しながら笑う彼女に、初めて恐怖した。曲がりなりにも侯爵令嬢である私に水をかけて、その挙句花の様に綺麗だから、ついと笑って誤魔化す人なんて、誰1人いなかったからだ。
何より、その瞳には隠しきれない嘲笑が浮かんでいて、人間はこんなに醜悪な顔ができるのか、と思うほどに意地に塗れた顔をしていたのだ。平凡で可愛らしい、純朴そうだ、という印象は、一瞬で覆った。
その日以降、彼女の嫌がらせは徐々にエスカレートしていった。
428
お気に入りに追加
1,651
あなたにおすすめの小説
【短編】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ、赤ちゃんが生まれる。
誕生を祝いに、領地から父の辺境伯が訪ねてくるのを心待ちにしているアリシア。
でも、夫と赤髪メイドのメリッサが口づけを交わしているのを見てしまう。
「なぜ、メリッサもお腹に赤ちゃんがいるの!?」
アリシアは夫の愛を疑う。
小説家になろう様にも投稿しています。
恋心を利用されている夫をそろそろ返してもらいます
しゃーりん
恋愛
ソランジュは婚約者のオーリオと結婚した。
オーリオには前から好きな人がいることをソランジュは知っていた。
だがその相手は王太子殿下の婚約者で今では王太子妃。
どんなに思っても結ばれることはない。
その恋心を王太子殿下に利用され、王太子妃にも利用されていることにオーリオは気づいていない。
妻であるソランジュとは最低限の会話だけ。無下にされることはないが好意的でもない。
そんな、いかにも政略結婚をした夫でも必要になったので返してもらうというお話です。
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
正当な権利ですので。
しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。
18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。
2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。
遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。
再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。
【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?
五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」
朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。
「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」
国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。
ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。
「待ってください!!」
王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。
そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。
「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」
「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」
国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。
「どうしたらいいのーー?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる