2 / 14
第二話・婚約破棄
しおりを挟む
それは学園創立記念のパーティでの出来事だった。学年で一番成績のいいルリアは、他の学年の代表生徒たちと並んで、学習の中で得られた知識や技術、学ぶことの喜びと大切さ、学園の素晴らしさについて作文を発表することになっていた。その中には一学年上に在籍する婚約者のルーカスも含まれており、待ちきれない、と言う風に、何度も原稿を読んだり指先を手遊びに弄っていたりしたので、相当良い出来なのだろうと期待したのだが。
結果は酷いものだった。
「公の場で申し訳ないが、私事でありながら、皆にも周知してもらいたいことであるため、聞いて欲しい。」
真剣な顔でそういうルーカスに、ルリアでさえも背筋を正した。しかし、しばらくの間を開けて彼が放った一言は余りにもくだらなく、ルリアは一瞬理解が追いつかなかった。
「今日を以て、私はルリア・ロビンソンとの婚約を破棄し、マリア嬢を新しい婚約者として迎え入れる!」
会場は静まり返っていた。ルーカスのファンである女子生徒達でさえポカンとしており、誰からも反応がない。
「マリア嬢、前に出てきてくれ」
ルーカスが名指しすると、ひとりの女子生徒が感極まったように前に出てくる。確か、ルリアと同学年で、男爵家の養子として引き取られた女の子だ。
「君を生涯愛すると誓う。私の婚約者になってくれ」
「はい…っ、はい!」
マリア嬢とやらは、涙ぐんで何度も頷いた。その様子を微笑ましそうに見ていたルーカスは、幸せそうな顔をして彼女を抱きしめ、再び皆の方に向き直る。
「ルリア、君は僕の顔と権力に惹かれ、婚約者の座に収まったのだろうが、彼女は違う。本当の僕を見てくれたのはマリア嬢だけで、僕が本当に愛しているのはマリアだけだ。君との婚約は破棄させてもらうし、今後一切僕にもマリアにも関わらないでくれ。以上だ」
何を言っているのか本当に分からなくて、ルーカスの次に発表する予定だったため、舞台上にいたルリアはみんなの顔を確認してしまった。みんなルリアと同じような顔で周りを見回していたが、一人だけ平然とした顔の男がいる。見慣れた黒髪緑目の男の子は、義弟であるノーゼルだった。
静まり返る会場で、そういえば、とルリアは最近の彼等の言動を思いだした。
『運命の人が現れたんだ。僕のことを分かってくれるのは彼女だけだ』
『俺の境遇に共感してくれる貴族サマは初めてだ。アンタと違って、マリアは俺を理解してくれる』
「ああ……」
頭が痛くなってきた。
結果は酷いものだった。
「公の場で申し訳ないが、私事でありながら、皆にも周知してもらいたいことであるため、聞いて欲しい。」
真剣な顔でそういうルーカスに、ルリアでさえも背筋を正した。しかし、しばらくの間を開けて彼が放った一言は余りにもくだらなく、ルリアは一瞬理解が追いつかなかった。
「今日を以て、私はルリア・ロビンソンとの婚約を破棄し、マリア嬢を新しい婚約者として迎え入れる!」
会場は静まり返っていた。ルーカスのファンである女子生徒達でさえポカンとしており、誰からも反応がない。
「マリア嬢、前に出てきてくれ」
ルーカスが名指しすると、ひとりの女子生徒が感極まったように前に出てくる。確か、ルリアと同学年で、男爵家の養子として引き取られた女の子だ。
「君を生涯愛すると誓う。私の婚約者になってくれ」
「はい…っ、はい!」
マリア嬢とやらは、涙ぐんで何度も頷いた。その様子を微笑ましそうに見ていたルーカスは、幸せそうな顔をして彼女を抱きしめ、再び皆の方に向き直る。
「ルリア、君は僕の顔と権力に惹かれ、婚約者の座に収まったのだろうが、彼女は違う。本当の僕を見てくれたのはマリア嬢だけで、僕が本当に愛しているのはマリアだけだ。君との婚約は破棄させてもらうし、今後一切僕にもマリアにも関わらないでくれ。以上だ」
何を言っているのか本当に分からなくて、ルーカスの次に発表する予定だったため、舞台上にいたルリアはみんなの顔を確認してしまった。みんなルリアと同じような顔で周りを見回していたが、一人だけ平然とした顔の男がいる。見慣れた黒髪緑目の男の子は、義弟であるノーゼルだった。
静まり返る会場で、そういえば、とルリアは最近の彼等の言動を思いだした。
『運命の人が現れたんだ。僕のことを分かってくれるのは彼女だけだ』
『俺の境遇に共感してくれる貴族サマは初めてだ。アンタと違って、マリアは俺を理解してくれる』
「ああ……」
頭が痛くなってきた。
22
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
お望み通り、別れて差し上げます!
珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」
本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?
魔力無しの聖女に何の御用ですか?〜義妹達に国を追い出されて婚約者にも見捨てられる戻ってこい?自由気ままな生活が気に入ったので断固拒否します〜
まつおいおり
恋愛
毎日毎日、国のトラブル解決に追われるミレイ・ノーザン、水の魔法を失敗して道を浸水させてしまったのを何とかして欲しいとか、火の魔道具が暴走して火事を消火してほしいとか、このガルシア国はほぼ全ての事柄に魔法や魔道具を使っている、そっちの方が効率的だからだ、しかしだからこそそういった魔力の揉め事が後を絶たない………彼女は八光聖女の一人、退魔の剣の振るい手、この剣はあらゆる魔力を吸収し、霧散させる、………なので義妹達にあらゆる国の魔力トラブル処理を任せられていた、ある日、彼女は八光聖女をクビにされ、さらに婚約者も取られ、トドメに国外追放………あてもなく彷徨う、ひょんなことからハルバートという男に助けられ、何でも屋『ブレーメンズ』に所属、舞い込む依頼、忙しくもやり甲斐のある日々………一方、義妹達はガルシア国の魔力トラブルを処理が上手く出来ず、今更私を連れ戻そうとするが、はいそうですかと聞くわけがない。
最後に報われるのは誰でしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
散々婚約者に罵倒され侮辱されてきたリリアは、いい加減我慢の限界を迎える。
「もう限界だ、きみとは婚約破棄をさせてもらう!」と婚約者に突きつけられたリリアはそれを聞いてラッキーだと思った。
限界なのはリリアの方だったからだ。
なので彼女は、ある提案をする。
「婚約者を取り替えっこしませんか?」と。
リリアの婚約者、ホシュアは婚約者のいる令嬢に手を出していたのだ。その令嬢とリリア、ホシュアと令嬢の婚約者を取り替えようとリリアは提案する。
「別にどちらでも私は構わないのです。どちらにせよ、私は痛くも痒くもないですから」
リリアには考えがある。どっちに転ぼうが、リリアにはどうだっていいのだ。
だけど、提案したリリアにこれからどう物事が進むか理解していないホシュアは一も二もなく頷く。
そうして婚約者を取り替えてからしばらくして、辺境の街で聖女が現れたと報告が入った。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。
水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。
ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。
それからナタリーはずっと地味に生きてきた。
全てはノーランの為だった。
しかし、ある日それは突然裏切られた。
ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。
理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。
ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。
しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。
(婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?)
そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。
婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる