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試合観戦
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その日以降も、2人は書庫での逢瀬を重ねた。母には「いつも会うたび本、本、本などと……呆れず付き合ってくださるあの麗息には頭が下がりますわ」と言われ、父には「お前、失礼は言っていないだろうね」と都度確認され、弟には「珍しく続いておりますね」などとかなり癪に障ることを言われながらも、なんだかんだで2人の婚約は続いていた。
何故か書庫で会うたびにあのアンナという女の子が待ち伏せしていたり、偶然を装って途中で入ってきたりというのが多かったが、別に読書の邪魔さえしないならそれも気にならない。寧ろ、ベネディクトの方がフラヴィアを気遣ってアンナのことを気にしていた。
さて、そんな付かず離れずの絶妙な距離感で、利害の一致から婚姻関係を結んだ2人であるが、今日会う場所はいつもの書庫ではなかった。
いつにだか会話に出てきた、剣術の訓練の場にお呼ばれしたのである。
青い空と、白い雲。快晴と言うべき眩さの空を見上げ、フラヴィアはふっと息を吐いた。
今日は比較的動きやすい、軽い素材のレモンイエローのドレスを着ており、ドレスというよりもワンピースに近いような形状のものである。むさ苦しい訓練場の観客席にぽつんと佇むレモンイエローは、楚々とした出立ちも相待ってかなり目立っていた。
さて、そんな注目の的であるフラヴィア張本人はというと、一言も発さず、ジッ……と真剣な表情で試合や訓練の様子を見守っている様子だった。
婚約者であるベネディクトとの交流のため、と言う名目にも関わらず、その目は訓練を付けている近衛兵と訓練生の練習試合に釘付けであり、筋トレをしているベネディクトには全く目を向けていなかった。国でも名高い美少女に見つめられているせいか、訓練生たちはいつにも増して張り切っており、そのせいでますます辺りが汗臭い。
答え合わせをするように一つ一つの動きを目で追い、周囲とかけ離れた静寂を纏う姿は、顔が良いだけに随分と迫力があった。フラヴィアが少し真剣な顔をするだけで、周囲には緊張と期待がほとばしり、その日の訓練は誰も彼も鬼気迫った様子で、必死と言う他ない有様だった。
と、そんなこんなで午後の全体練習が終わり、昼食の時間となる。駆け寄ってきたベネディクトに、フラヴィアも気持ち早歩きで近づいた。
「ベネディクト様」
持参してきたタオルを手渡す。母からの指示だった。
「ああ、すまない。……退屈はしていなさそうだな」
「ええ、勿論です。この後は1対1の正式なルールに則った試合を観戦できるのですから、練習試合も見逃せません。頭の中の知識と照らし合わせながら見るのは楽しいものですね」
「相変わらずで何よりだ」
汗を拭きながらフッと微笑む。口元が微かに和らぐだけで、冷徹な美貌が途端に柔和な印象になった。
「あ、そうそう。昼食、持参して参りました。ミネラル・鉄分・ビタミン・タンパク質・糖質を効率よく補給できるように、献立を考えてきたんです。是非感想を聞かせていただきたくて」
「……君が作ったのか?」
「いいえ?我が家自慢のシェフが」
「ふ。ふふ、頂こう」
なんだか機嫌がいいなあと思いながら、2人は仲良く並んで昼食を取った。話題は勿論この後の試合のことや、目にした剣技のことである。
遠目から見ると美男美女の2人は輝くような美しさで、他人を寄せ付けない独特のオーラがあった。訓練生達は2人の様子をヒソヒソと噂しながら、羨ましいやら憎たらしいやらの気持ちで腹を満たした。
しかし、そんな2人だけの空間をものともしない者が1人いた。
「ベネディクトーーー!!!午前練終わったーー!?」
そう、彼の幼馴染・アンナである。
何故か書庫で会うたびにあのアンナという女の子が待ち伏せしていたり、偶然を装って途中で入ってきたりというのが多かったが、別に読書の邪魔さえしないならそれも気にならない。寧ろ、ベネディクトの方がフラヴィアを気遣ってアンナのことを気にしていた。
さて、そんな付かず離れずの絶妙な距離感で、利害の一致から婚姻関係を結んだ2人であるが、今日会う場所はいつもの書庫ではなかった。
いつにだか会話に出てきた、剣術の訓練の場にお呼ばれしたのである。
青い空と、白い雲。快晴と言うべき眩さの空を見上げ、フラヴィアはふっと息を吐いた。
今日は比較的動きやすい、軽い素材のレモンイエローのドレスを着ており、ドレスというよりもワンピースに近いような形状のものである。むさ苦しい訓練場の観客席にぽつんと佇むレモンイエローは、楚々とした出立ちも相待ってかなり目立っていた。
さて、そんな注目の的であるフラヴィア張本人はというと、一言も発さず、ジッ……と真剣な表情で試合や訓練の様子を見守っている様子だった。
婚約者であるベネディクトとの交流のため、と言う名目にも関わらず、その目は訓練を付けている近衛兵と訓練生の練習試合に釘付けであり、筋トレをしているベネディクトには全く目を向けていなかった。国でも名高い美少女に見つめられているせいか、訓練生たちはいつにも増して張り切っており、そのせいでますます辺りが汗臭い。
答え合わせをするように一つ一つの動きを目で追い、周囲とかけ離れた静寂を纏う姿は、顔が良いだけに随分と迫力があった。フラヴィアが少し真剣な顔をするだけで、周囲には緊張と期待がほとばしり、その日の訓練は誰も彼も鬼気迫った様子で、必死と言う他ない有様だった。
と、そんなこんなで午後の全体練習が終わり、昼食の時間となる。駆け寄ってきたベネディクトに、フラヴィアも気持ち早歩きで近づいた。
「ベネディクト様」
持参してきたタオルを手渡す。母からの指示だった。
「ああ、すまない。……退屈はしていなさそうだな」
「ええ、勿論です。この後は1対1の正式なルールに則った試合を観戦できるのですから、練習試合も見逃せません。頭の中の知識と照らし合わせながら見るのは楽しいものですね」
「相変わらずで何よりだ」
汗を拭きながらフッと微笑む。口元が微かに和らぐだけで、冷徹な美貌が途端に柔和な印象になった。
「あ、そうそう。昼食、持参して参りました。ミネラル・鉄分・ビタミン・タンパク質・糖質を効率よく補給できるように、献立を考えてきたんです。是非感想を聞かせていただきたくて」
「……君が作ったのか?」
「いいえ?我が家自慢のシェフが」
「ふ。ふふ、頂こう」
なんだか機嫌がいいなあと思いながら、2人は仲良く並んで昼食を取った。話題は勿論この後の試合のことや、目にした剣技のことである。
遠目から見ると美男美女の2人は輝くような美しさで、他人を寄せ付けない独特のオーラがあった。訓練生達は2人の様子をヒソヒソと噂しながら、羨ましいやら憎たらしいやらの気持ちで腹を満たした。
しかし、そんな2人だけの空間をものともしない者が1人いた。
「ベネディクトーーー!!!午前練終わったーー!?」
そう、彼の幼馴染・アンナである。
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