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最終話

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 クラウスお手製のスープを飲みながら今朝の新聞に目を通す。
 見出しにはデカデカと『ティーゲル王国 フォッシュ領へ』の文字があり、ようやく内戦が終わったのかと少しホッとする。
 しかし、文面を読んでいると事の発端が私を追放したことにあるだの、こんなにも優秀なのだからフォッシュ政府は魔法の研究機関で雇用すべきだの、訳の分からないことが色々と書かれているのは困る。
 幸い名前は出されていないからまだいいが、お偉いさんから勧誘されたりなんてされたら断るのが面倒だ。
 ……優秀と言われたのは嬉しいが。

「何険しい顔してんだ?」

 キッチンから紅茶の入ったカップを二つ持って現れたクラウスの問いに、私は冗談めかして。

「新聞が私の事褒め称えてるの」

「記者を脅したのか?」

「私を何だと思ってるの?」

 クラウスはケラケラと笑って私の前にカップを置き、対面の席に腰掛ける。
 筋骨隆々なたくましい体に私が使っていた花柄のエプロンを着けているせいで一ヶ月経っても笑いそうになる。
 もう少し男っぽいものを付けて欲しいものだ。
 と、紅茶を口にしたクラウスは私を見ると。

「腹、大丈夫か?」

「うん、へーき。最近お腹の中で動いてる気がするの」

「そういやそろそろだったな。……お前、一人で買い物に行くんじゃねえぞ?」

 ギロリと私を睨み付けるクラウスからふいっと目を逸らすと、更に鋭い睨みが突き刺さり。

「分かりました、二度と勝手に行きません!」

「よろしい」

 買い物くらい一人で行きたいものだが、クラウスの気持ちも良く分かる。
 妊娠してる自分の妻がチンピラ数人に恐喝されたなんて聞いたら、もう家から出さないなんて考えるのは間違いない。
 ……まあ、全員仲良く感電させたんですけど。

 と、ドアがノックされる音が響き、クラウスが小走りに玄関へ向かった。
 この時間に来るということは父だろうか、それとも毎日暇だと嘆いている母だろうか。
 そんな予想を立てていると聞き覚えのある男の声が玄関から聞こえ、そのどちらでもないと察した私は一先ず紅茶を一口飲んだ。
 そしてリビングに入って来たのは――

「出産おめでとう。祝いの品だ」

「まだ生まれて無いですが、いつもありがとうございます」

 元大臣であり、今では大商人として知られるヴェルナーに、私は座ったまま頭を下げる。
 ヴェルナーは果物がぎゅうぎゅうに詰められた籠をクラウスに渡しながら。

「出産したと聞いたんだがな。まあ、まだならこれ食って体力付けておきなさい」

「はい、そうします」

「体力だけは有り余ってねえか、お前」

 クラウスの失礼な物言いにヴェルナーはゲラゲラと笑う。
 するとヴェルナーは腕時計に目をやり、ハッとした顔で「用がある」というと早々にリビングを出て行った。
 いつでも来れるのだから、そんなに忙しいなら別の日にしたらいいのにと思わなくも無いが、気にしたら負けだろう。
 と、玄関から戻って来たクラウスは横に来ると私の腹を撫で。

「無事に生まれて来ると良いな」

「そうだね」

 クラウスは心配しているようだが、私は何となくこの子は無事に生まれて来る気がする。
 用心することに越した事は無いのだが。
 するとクラウスは「よし」と呟いて。

「今の内に赤ん坊の服やら色々買い揃えちまおう」

「もう、気が早いよ」

 しかし、まだ生まれてもいないのにも拘らず、この子の事を溺愛してくれているのは何だか嬉しい。
 きっと、生まれてからも溺愛し続けてくれるだろう。

 私はそんなクラウスに急かされ、外出の準備をして。
 赤ちゃんグッズを買うべく二人で家を出た――
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みんなの感想(424件)

わわ
2022.03.10 わわ
ネタバレ含む
星野真弓
2022.03.14 星野真弓

 改稿に伴って全体的に設定を見直したため、大臣の思想や行動は変える予定ですので、もしかしたら商人にならないかもしれないです……。

解除
towaka
2022.01.27 towaka

最近読み始めましたが、6話と7話で違うエリナがいます。
また、6話で家に戻ったはずなのに7話で元いたところに場面が戻っています。
どちらが正しいのでしょうか?

星野真弓
2022.01.31 星野真弓

 時間が無くて止まっていますが、6話まで改稿と加筆を行っています。そのため、7話から先はそれら作業が完了しておらず、前後で話がかみ合わない状態になっております。

解除
SENA
2021.08.22 SENA

エリナ2人いません?

解除

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