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17話 大臣視点

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 ハインツの発言について部下に調べるよう命令した私は一時間程度の休憩を取った後にルイスを呼び出した。
 宮廷魔術師が仕事を押し付けていたのも相当な問題だが、私と同程度の権力を持った人間が国税を使って遊んでいるとは、国としても大きな恥だ。
 もし調査に当たった人間のミスであれば良いが、その可能性はほぼゼロと言っても良い。
 追放や鉱山送りにする準備をしておいた方が良いかもしれない。
 と、ノックもしないで入って来たルイスは何も言わずに対面の席に腰掛け、不機嫌そうに眉を歪めると。

「何の用じゃ。つまらぬことなら帰るぞ」

 私はよくもまあそんな態度が取れるなと、呆れを通り越して感心さえしながら数枚の書類を取り出す。

「そう言わずに答えてくれ。先ず一つ目の前期の宮廷魔術師たちになぜ、結界石について教えなかったのか尋ねた。そしたら『変質するなんて聞いた事もない』と答えたそうだ。なぜだ?」

「どうでも良すぎて忘れたんじゃろう。よくあることじゃ」

「二十人全員が忘れると思うのか? 中には絶対記憶症を持つ者も居たのだが?」

 黙り込んだルイスは諦めたように、しかしイラついたように私を睨み付けると。

「ああ、普通なら起こりえないんじゃから教えておらんよ。数年に渡って押し付けるなんて誰が予想出来る?」

「そもそも宮廷魔術師たちの勤務態度を監視するのがお前の仕事だろ? 予想出来ないはずが無いんだよ、やることやってれば」

 私が言えたことでは無い気もするが。
 するとルイスは舌打ちをして立ち上がり、私へ背を向けて入り口へ歩き始めた。

「おい、どこに行くつもりだ?」

 一切の反応を見せないルイスのまるで子供のような行動にうんざりしながらか、入り口の左右で待機している二人の騎士に道を塞ぐようアイコンタクトを取る。
 二人は槍を交差させるようにしてドアを塞ぐと、ルイスは真っ赤にさせた顔で私を振り返り、

「なんじゃ、やるというのか? 三人なんて一瞬で消せるぞ」

 脅しとしか取れない言葉と共に両手へ稲妻のようなものを走らせ、明らかな殺意を見せた。
 だが次の瞬間――背を向けられていた騎士二人が槍の柄で首と頭をそれぞれ殴打し、ルイスは間抜けな声を出しながらその場へ倒れ込む。
 なぜ最も警戒しなければならない騎士に背を向けたのだろうか。私よりも騎士の方が圧倒的に強いと言うのに。

 起き上がろうとしたところを片方の騎士が抑え付け、もう一人が槍の穂先を目前に突き付ける。

「動いたら殺します。抵抗なさらぬよう願います」

「ぐぅ……!」

 視線で殺すと言わんばかりに騎士を睨み付けるルイスは賢者なりたてだった頃の無邪気さは一切なく。
 私は悲しさにも似たものを感じながら鉱山送りとする事に決めた。
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