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15話 大臣視点

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 王都内に侵入した魔物による被害報告の処理と王への事情説明を終えた私はくたくたになりながら私室へ戻った。
 まさか結界の管理を全てエミエルがやっていたのが事実で、しかも結界石が使い物にならなくなるとは聞いて呆れる。
 なぜ前期の魔術師たちは今期の魔術師たちに管理を当番制にしているのか説明していなかったのだろうか。

 思わず溜息が出た私はソファに腰掛け、メイドが用意してくれた紅茶をすする。
 いつもなら至福のひと時となるはずなのだが、これから発生するであろう被害を考えてしまうと、紅茶の味も匂いも感じられない。
 一先ずテーブルに半分ほど残ったティーカップを置き、結界石をストックしておくべきだったと頭を抱えていると、扉が乱暴にノックされ、乱暴に開かれた。

「……ルイスか。どうしたんだ?」

「結界石のことについてじゃ」

 そそくさと対面のソファに腰掛けたルイスは一瞬目を泳がせると、すぐに私に目を合わせ。

「新しい結界石が来るまでの間の繋ぎとして追放された女を連れ戻すように宮廷魔術師たちに命じた。この一週間だけ、あやつが城内に入れるよう手配して欲しい」

「また勝手にやったのか……まあ、分かった。被害が出てからでは遅いからな」

 私は不安が取り除かれる可能性が出たことで自然と安心感が湧き上がる。 
 と、さっき疑問に思った事を思い出した私は早速尋ねる。

「なぜ宮廷魔術師たちは結界石が変異することを知らなかった? 当番制にする理由も教えることになっているよな」

「そ、それは……あ、あやつらが教え忘れたのだろう。それに数年の間一人が管理するなんてあり得ないと思ったがために、教えていなかったのかもしれぬしな」

 挙動不審な動きと共に目を泳がせたルイスは用事を想い出したと言って部屋を出て行った。
 ……調査すべきことが増えたな。

 私は後ろで控えていた近衛兵に明日から調査することにルイスも加えるよう命じ、一度休息を取るべく寝室へ向かう。
 明日から忙しくなる。今日はしっかり休まなければ……。


 ☆


 慌てた様子でノックも無しに私の新しい仕事部屋へ入った近衛兵は、デスクに数枚の書類を差し出しながら。

「エミエルの私室より騎士団、宮廷魔術師、その他複数が処理すべき書類が山のように発見されました! また、彼女の部屋の掃除を担当していたメイドより、部屋から出る時は出張の時だけで、それ以外では常に仕事をしていたとのことです」

「……」

 私は震える手でその書類を取り、軽く目を通すとそこにはエミエルがとんでもない被害者であった事実として認められる様々な証拠が幾つも挙げられていた。
 それとは逆に、私へエミエルが仕事を一切しないと言っていた魔術師たちは、業務時間にも関わらず遊び歩いている多数の目撃証言があり、私は思わず頭を抱えた。

 私と仲の良い誠実な貴族たちの子息だからこそ信頼して言葉を信じていたのだが、まさか大嘘つきだったとは。
 そしてそんな下らない嘘に大臣でありながら騙され、鵜呑みにした自分が恥ずかしくてたまらない。
 
「あ、あの……。よろしいでしょうか」

 話し辛そうにもう数枚の書類を取り出した近衛兵は、頷いた私にそれを差し出す。

「賢者様について調べたところ……結界石の変質については疎か、そもそも魔術師らに対して何も教えておらず、定期的な内部監査も行っていないことが分かりました。そして――」

 まだあるのか、そうツッコミを入れてやりたい気分になりながら先を促すと。

「研究費の半分以上を遊びに使っていることが発覚しました」
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