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92話 親子
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守護者たちとミワ本人から許可を得られたため、本体を触らせてもらえる事になった。
蒼馬はさっきのがトラウマになっているようで私の手を握って離そうとせず、そんな有様を見てミワは心底愉快そうに笑っている。
いつも揶揄われている分の仕返しを出来て嬉しいようだ。
そんな二人を連れて象よりもずっと大きな竜の側に近寄り、見るからにふかふかしていそうな腕を撫でてみる。
すると、今までに触ったどんな柔らかい物とも違う心地よい感触が手に伝わり、気付けばニマニマと変な笑みを浮かべてしまっていた。
「これで毛布作ったら売れそうだな」
「貴様はもう二度と触るな」
横で一緒に触れていた大国主にミワは吐き捨てるように言う。
仲が良いのか悪いのか分からない二人を横目に、ふかふかな腕へ抱き着いてその感触を楽しんでいると、ミワがぶるると体を震わせた。
もしやと思い腕をくすぐるように触ってみると――
「や、やめろ!」
「やっぱり感覚繋がってるんだ?」
「変なことには気付きおって……」
悔しそうな目をしたミワを見てニヤニヤしてしまっていると、蒼馬が徐に竜の腹をくすぐり始めた。
途端にミワは体をくねらせ、私にしがみつきながらふひゃひゃとくすぐられた子供のように笑い出し、竜の体も少しだけ震える。
「や、やめんか! 頭をかち割るぞ!」
「フハハハハ! 俺をビビらせやがって!」
三流の敵役を彷彿とさせる言動をする蒼馬と、それを何とか止めようとするミワによる鬼ごっこが始まり、怒られるのではと守護者たちに目を向ければ、温かい眼差しが向けられていた。
と、守護者の一人と目が合い、彼女はこちらへやって来て。
「いつもあのように仲良くしていらっしゃるのですか?」
「まあ、そうですね。大体あんな感じです」
蒼馬がミワを揶揄うこともあれば、ミワが蒼馬にイタズラを仕掛けることもある。
しかし、一緒にホラー映画を見て悲鳴を上げたり、同じゲームをして盛り上がったりと、親友のように遊んでいるところも見ている。
「大物主様は肉体が幼いと精神も幼くなります。なので、あのようにレベルを合わせて頂けると、とても過ごしやすくなるみたいなんです」
「合わせてる……のかなぁ」
あっさりとミワに捕まり、くすぐり返されてジタバタしている蒼馬に目を向ける。
素が子どもっぽいだけな気がするけど、気遣いの出来る彼ならミワに合わせているような気もする。
と、糸巻さんもやって来て。
「大物主様とはどこで出会ったのですか?」
「前まで住んでいたアパートです。他の家では害獣だと思われて追い出されちゃって、私の家に辿り着いた……みたいなこと言ってました」
「神に仇なすとは、良い度胸ですねぇ……」
一瞬、鬼のように顔を歪めた彼は、すぐに表情を戻して私に向き直る。
「今まで大物主様の面倒を見て頂きありがとうございました。こちらで引き取ることも可能ですが、いかがなさいますか?」
返答が分かっている雰囲気を纏いながら問いを投げ掛けて来る。
「私が死ぬその時まで、あの子の面倒を見続けます。自分の子ども同然ですから」
「やはり、そう答えると思っておりました。私も面倒を見たかったものです」
残念そうな、でも少し嬉しそうな、そんな表情を見せた彼は、懐から真っ白な箱を取り出し、蓋を開けて見せる。
そこには私の顔を映すほどの輝きを放つ水晶のようなものが収められていて、余程高級な代物なのかふかふかなクッションで周囲が覆われている。
「これは大物主様の体から剥がれ落ちた鱗を削り、形を整えた物です。大物主様の面倒を見て下さっている方に差し上げています」
「こんなにお高そうなもの……良いんですか?」
「これからも我々の代わりに面倒を見て頂くお礼ですから。それに、これを売ってしまったら大物主様の存在が世間に知れてしまいますからね」
そう言ってニッコリと笑った彼に礼を言いながらそれを受け取る。
私の拳よりも大きく、鏡のように私の顔を映し出す美しい鱗と、ピクリとも動かない竜の頭を見比べると、確かに同じ美しさを持っている。
「それなんだ?」
髪の毛が乱れた蒼馬とミワがいつの間にやらすぐそばに来ていた。
「吾輩の鱗か?」
「うん、削って形調えたんだって。お守りとして家に飾ろっか」
「そんなの、人間の垢と対して変わらんぞ」
「うわ汚ねっ」
「猫風情がやかましいぞ!」
もうちょっと仲良くして欲しいものだけれど、見ている分には面白い。
互いにくすぐり合い、互いにケラケラ笑う二人を見て私もつられて笑っていると、守護者の一人と何やら話していた大国主がこちらへやって来る。
「そろそろお前らは出た方が良いぞ」
「もしかして、変異しちゃいますか?」
「おう、間違いなくするな。あいつらは適正あるから良いけどよ、お前らはどんな化け物になるか分からねえからな」
その言葉に蒼馬は怯えた様子で尋ねる。
「人間以外の何かになることもある……ってことですか?」
「なるぜ。妖の血を継いでたら、その妖の特徴が色濃く出てくる。八岐大蛇なら頭がニョキニョキ生えて来るかもしんねえし、猫又なら頭が猫になるかもな」
ガハハと豪快に笑った大国主とは対照的に、蒼馬はみるみる内に顔色を悪くする。
私ももう一つの頭が生えた自分を想像して恐怖していると、糸巻さんが呆れたように笑って。
「容姿にまで変化が及ぶのは一ヶ月経ってからですし、精々角が生えたり、体の一部が鱗や体毛に覆われたりする程度です」
「な、なんだ……」
心底安心してホッとため息を吐く。
「ですが、四時間程度居続けると体内に変化が生じますので、早めに森を出た方が良いでしょうね。我々のように、頭を潰されても死なない化け物になってしまう前にね」
「桂里奈も何とかなりそうだよな」
「化け物って遠回しに言ってる?」
しかし、否定できないのもまた事実だ。
お爺ちゃん達の元を訪れた後から、包丁で指を切っても僅か数秒で傷が治るようになってしまったのだから。
……案外、私も死にはしないのだろうか?
「夫婦喧嘩は後にしとけ。これ以上神が増えんのは困りもんだからよ」
そう言って歩き出した大国主の後に続いて、部屋の出口へと向かう。
最後に一眼見ようと振り返れば、スヤスヤ眠る巨大な白竜が鎮座していて、その寝顔は優しそうに見える。
「ミワは名残惜しくないの?」
「いつでも戻れるからな。ほれ」
ミワがそう言うと同時、小さな体が糸の切れた操り人形のように倒れ込み、白竜がゆっくりと動き出す。
のっしのっしとやって来たそれは、抜け殻と化した体を抱っこする私の前までやって来ると。
『見下ろすというのは新鮮だな』
「脳に直接話しかるなんて出来んのか」
心底驚いた様子で蒼馬が言うと、気分を良くしたらしいミワはフハハと笑う。
「やっぱり、ミワはミワだね」
『取って食われるかも分からんのに怖くないのか?』
「うん。ミワだもん」
言いながらこちらから近付くと、ミワは嬉しそうな雰囲気を漂わせながら私を抱き締めた。
竜でありながらもこもことした感触に包まれ、このまま眠ったら気持ちよさそうだと、そんな呑気な事を考える。
『吾輩を寝具にでもするつもりか?』
「それも良いかも」
『敵わんな』
苦笑気味に呟いたミワは私を放すと、ゆっくりと後ろへ下がって行き、玉座へ腰掛ける。
それと同時に私の腕の中でピクリとも動かなかった小さな体がびくんと跳ね、少し疲れた様子で起き上がる。
「お疲れ様。もこもこして心地良かったよ」
「……吾輩をどう考えているのかは分かった」
「プライベートの侵害だよ?」
「人間のプライベートなぞ知らぬ。……今後とも、よろしく頼むぞ」
照れ臭そうにそう言ったミワは、横でニヤニヤしている蒼馬に気付くと蛇の姿に戻りとぐろを巻いた。
もちもちですべすべな感触を久しく思いながら、私は顔を近付けて。
「ミワは私の子供だもん。ちゃんと面倒見るから安心してね」
「……ふん」
ぽふっと幼女の姿に戻ったミワは、照れた顔をしながら私の頬にキスをした。
蒼馬はさっきのがトラウマになっているようで私の手を握って離そうとせず、そんな有様を見てミワは心底愉快そうに笑っている。
いつも揶揄われている分の仕返しを出来て嬉しいようだ。
そんな二人を連れて象よりもずっと大きな竜の側に近寄り、見るからにふかふかしていそうな腕を撫でてみる。
すると、今までに触ったどんな柔らかい物とも違う心地よい感触が手に伝わり、気付けばニマニマと変な笑みを浮かべてしまっていた。
「これで毛布作ったら売れそうだな」
「貴様はもう二度と触るな」
横で一緒に触れていた大国主にミワは吐き捨てるように言う。
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もしやと思い腕をくすぐるように触ってみると――
「や、やめろ!」
「やっぱり感覚繋がってるんだ?」
「変なことには気付きおって……」
悔しそうな目をしたミワを見てニヤニヤしてしまっていると、蒼馬が徐に竜の腹をくすぐり始めた。
途端にミワは体をくねらせ、私にしがみつきながらふひゃひゃとくすぐられた子供のように笑い出し、竜の体も少しだけ震える。
「や、やめんか! 頭をかち割るぞ!」
「フハハハハ! 俺をビビらせやがって!」
三流の敵役を彷彿とさせる言動をする蒼馬と、それを何とか止めようとするミワによる鬼ごっこが始まり、怒られるのではと守護者たちに目を向ければ、温かい眼差しが向けられていた。
と、守護者の一人と目が合い、彼女はこちらへやって来て。
「いつもあのように仲良くしていらっしゃるのですか?」
「まあ、そうですね。大体あんな感じです」
蒼馬がミワを揶揄うこともあれば、ミワが蒼馬にイタズラを仕掛けることもある。
しかし、一緒にホラー映画を見て悲鳴を上げたり、同じゲームをして盛り上がったりと、親友のように遊んでいるところも見ている。
「大物主様は肉体が幼いと精神も幼くなります。なので、あのようにレベルを合わせて頂けると、とても過ごしやすくなるみたいなんです」
「合わせてる……のかなぁ」
あっさりとミワに捕まり、くすぐり返されてジタバタしている蒼馬に目を向ける。
素が子どもっぽいだけな気がするけど、気遣いの出来る彼ならミワに合わせているような気もする。
と、糸巻さんもやって来て。
「大物主様とはどこで出会ったのですか?」
「前まで住んでいたアパートです。他の家では害獣だと思われて追い出されちゃって、私の家に辿り着いた……みたいなこと言ってました」
「神に仇なすとは、良い度胸ですねぇ……」
一瞬、鬼のように顔を歪めた彼は、すぐに表情を戻して私に向き直る。
「今まで大物主様の面倒を見て頂きありがとうございました。こちらで引き取ることも可能ですが、いかがなさいますか?」
返答が分かっている雰囲気を纏いながら問いを投げ掛けて来る。
「私が死ぬその時まで、あの子の面倒を見続けます。自分の子ども同然ですから」
「やはり、そう答えると思っておりました。私も面倒を見たかったものです」
残念そうな、でも少し嬉しそうな、そんな表情を見せた彼は、懐から真っ白な箱を取り出し、蓋を開けて見せる。
そこには私の顔を映すほどの輝きを放つ水晶のようなものが収められていて、余程高級な代物なのかふかふかなクッションで周囲が覆われている。
「これは大物主様の体から剥がれ落ちた鱗を削り、形を整えた物です。大物主様の面倒を見て下さっている方に差し上げています」
「こんなにお高そうなもの……良いんですか?」
「これからも我々の代わりに面倒を見て頂くお礼ですから。それに、これを売ってしまったら大物主様の存在が世間に知れてしまいますからね」
そう言ってニッコリと笑った彼に礼を言いながらそれを受け取る。
私の拳よりも大きく、鏡のように私の顔を映し出す美しい鱗と、ピクリとも動かない竜の頭を見比べると、確かに同じ美しさを持っている。
「それなんだ?」
髪の毛が乱れた蒼馬とミワがいつの間にやらすぐそばに来ていた。
「吾輩の鱗か?」
「うん、削って形調えたんだって。お守りとして家に飾ろっか」
「そんなの、人間の垢と対して変わらんぞ」
「うわ汚ねっ」
「猫風情がやかましいぞ!」
もうちょっと仲良くして欲しいものだけれど、見ている分には面白い。
互いにくすぐり合い、互いにケラケラ笑う二人を見て私もつられて笑っていると、守護者の一人と何やら話していた大国主がこちらへやって来る。
「そろそろお前らは出た方が良いぞ」
「もしかして、変異しちゃいますか?」
「おう、間違いなくするな。あいつらは適正あるから良いけどよ、お前らはどんな化け物になるか分からねえからな」
その言葉に蒼馬は怯えた様子で尋ねる。
「人間以外の何かになることもある……ってことですか?」
「なるぜ。妖の血を継いでたら、その妖の特徴が色濃く出てくる。八岐大蛇なら頭がニョキニョキ生えて来るかもしんねえし、猫又なら頭が猫になるかもな」
ガハハと豪快に笑った大国主とは対照的に、蒼馬はみるみる内に顔色を悪くする。
私ももう一つの頭が生えた自分を想像して恐怖していると、糸巻さんが呆れたように笑って。
「容姿にまで変化が及ぶのは一ヶ月経ってからですし、精々角が生えたり、体の一部が鱗や体毛に覆われたりする程度です」
「な、なんだ……」
心底安心してホッとため息を吐く。
「ですが、四時間程度居続けると体内に変化が生じますので、早めに森を出た方が良いでしょうね。我々のように、頭を潰されても死なない化け物になってしまう前にね」
「桂里奈も何とかなりそうだよな」
「化け物って遠回しに言ってる?」
しかし、否定できないのもまた事実だ。
お爺ちゃん達の元を訪れた後から、包丁で指を切っても僅か数秒で傷が治るようになってしまったのだから。
……案外、私も死にはしないのだろうか?
「夫婦喧嘩は後にしとけ。これ以上神が増えんのは困りもんだからよ」
そう言って歩き出した大国主の後に続いて、部屋の出口へと向かう。
最後に一眼見ようと振り返れば、スヤスヤ眠る巨大な白竜が鎮座していて、その寝顔は優しそうに見える。
「ミワは名残惜しくないの?」
「いつでも戻れるからな。ほれ」
ミワがそう言うと同時、小さな体が糸の切れた操り人形のように倒れ込み、白竜がゆっくりと動き出す。
のっしのっしとやって来たそれは、抜け殻と化した体を抱っこする私の前までやって来ると。
『見下ろすというのは新鮮だな』
「脳に直接話しかるなんて出来んのか」
心底驚いた様子で蒼馬が言うと、気分を良くしたらしいミワはフハハと笑う。
「やっぱり、ミワはミワだね」
『取って食われるかも分からんのに怖くないのか?』
「うん。ミワだもん」
言いながらこちらから近付くと、ミワは嬉しそうな雰囲気を漂わせながら私を抱き締めた。
竜でありながらもこもことした感触に包まれ、このまま眠ったら気持ちよさそうだと、そんな呑気な事を考える。
『吾輩を寝具にでもするつもりか?』
「それも良いかも」
『敵わんな』
苦笑気味に呟いたミワは私を放すと、ゆっくりと後ろへ下がって行き、玉座へ腰掛ける。
それと同時に私の腕の中でピクリとも動かなかった小さな体がびくんと跳ね、少し疲れた様子で起き上がる。
「お疲れ様。もこもこして心地良かったよ」
「……吾輩をどう考えているのかは分かった」
「プライベートの侵害だよ?」
「人間のプライベートなぞ知らぬ。……今後とも、よろしく頼むぞ」
照れ臭そうにそう言ったミワは、横でニヤニヤしている蒼馬に気付くと蛇の姿に戻りとぐろを巻いた。
もちもちですべすべな感触を久しく思いながら、私は顔を近付けて。
「ミワは私の子供だもん。ちゃんと面倒見るから安心してね」
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