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80話 本音
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ホテルに到着してから一時間が経った。
猫田さんの唐突な告白でも心臓が止まりそうなほど驚いたけど、考えるよりも先に頷いてしまった自分にはもっと驚かされた。
思い返せば蓋をして隠していただけで彼に対する気持ちは確かにあった。だけど、即答したと言っても過言では無いほどすぐに頷くほどだったのかと問われれば微妙だ。
気付いてなかっただけで本当は――
「桂里奈、夜飯まだだったよな。ちょっと食べに行かないか?」
「う、うん。行こっか」
急に話しかけられて少し変な声が出てしまったが、猫田さんは特に気にする様子無く一つ頷いて鍵を片手に部屋を出る。
それに続こうとしてスマホが通知を鳴らし、何となく誰が何を送って来たのか察しながら手に取り後を追った。
私を待っていた猫田さんは扉を閉めると緊張しているのが分かるぎこちない笑みを浮かべ、エレベーターの方へ向かって歩き出しながら。
「何食べたい?」
「い、イタリアンとか……どうかな?」
「ああ、すぐそこの店か。ならそこにしようか」
そう言って笑みを見せた彼はエレベーターに乗り込み、私もそれに続く。
それにしても、この人はさっきからなんだか楽しそうだ。こっちはいつもと違う距離感に緊張してまともに喋れていないと言うのに。
「さっきからどうしたよ。やっぱ疲れたか?」
「あのくらいなら疲れないけど……ちょっと、緊張しちゃって」
「そっかそっか。なら、手繋ごうか」
「余計に緊張させるつもり?」
そうは言ったものの差し出された手を跳ね除ける気にはならずぎゅっと握る。
案の定余計に赤面させられているとエレベーターは一階に到着し、鍵を預けるべくフロントに近付くと、女性職員がにんまりと笑みを浮かべた。
ますます恥ずかしくなって顔を伏せている間に猫田さんが鍵を渡し、ホテルを出たタイミングで思わずため息を吐く。
「大丈夫だって、みんなそんなに人のこと見てないよ」
「すっごい笑ってたけど?」
「……そう言うこともある」
ふっと目を逸らしてそんなことを言った彼に、普段通りの雰囲気を感じ取れて、少しだけ気分が落ち着く。
そしていくつか疑問が湧き上がり、少し勇気を出して問いを投げかける。
「その……猫田さんは前から私のこと気になってたの?」
「そりゃもちろん。酔い潰れた時のこと覚えてるだろ? あの時からずっとだよ」
少しドキっとする。
「は、ハッキリ言うんだね」
「好きな人には本音で話したいじゃん?」
そうだ、さっきから感じていた違和感はこれだ。いつもなら言葉を濁したりして本音をそこまで言わないのに、今はハッキリと本音をぶつけてくる。
……この感じ、願いが叶って舞い上がっている時の水樹に似ている。
緊張を紛らわせようとそんなことを考えていると、猫田さんは私の肩に腕を回して。
「桂里奈もちょっとずつで良いから、本音をぶつけてくれな。ありがたいことに二人だけで過ごす時間はたっぷりあるし、ちょっとずつで良い」
「……そうだね。頑張る」
肩に触れる彼の手付きは何となく優しさを感じて少しだけ緊張が解れる。
仕方ない、彼の要望通り私も素直に思ったことを言うようにしよう。きっとそれが関係を長続きさせる唯一の方法だろう。
――好きになったタイミングが全く同じな事は墓に持って行くつもりだが。
猫田さんの唐突な告白でも心臓が止まりそうなほど驚いたけど、考えるよりも先に頷いてしまった自分にはもっと驚かされた。
思い返せば蓋をして隠していただけで彼に対する気持ちは確かにあった。だけど、即答したと言っても過言では無いほどすぐに頷くほどだったのかと問われれば微妙だ。
気付いてなかっただけで本当は――
「桂里奈、夜飯まだだったよな。ちょっと食べに行かないか?」
「う、うん。行こっか」
急に話しかけられて少し変な声が出てしまったが、猫田さんは特に気にする様子無く一つ頷いて鍵を片手に部屋を出る。
それに続こうとしてスマホが通知を鳴らし、何となく誰が何を送って来たのか察しながら手に取り後を追った。
私を待っていた猫田さんは扉を閉めると緊張しているのが分かるぎこちない笑みを浮かべ、エレベーターの方へ向かって歩き出しながら。
「何食べたい?」
「い、イタリアンとか……どうかな?」
「ああ、すぐそこの店か。ならそこにしようか」
そう言って笑みを見せた彼はエレベーターに乗り込み、私もそれに続く。
それにしても、この人はさっきからなんだか楽しそうだ。こっちはいつもと違う距離感に緊張してまともに喋れていないと言うのに。
「さっきからどうしたよ。やっぱ疲れたか?」
「あのくらいなら疲れないけど……ちょっと、緊張しちゃって」
「そっかそっか。なら、手繋ごうか」
「余計に緊張させるつもり?」
そうは言ったものの差し出された手を跳ね除ける気にはならずぎゅっと握る。
案の定余計に赤面させられているとエレベーターは一階に到着し、鍵を預けるべくフロントに近付くと、女性職員がにんまりと笑みを浮かべた。
ますます恥ずかしくなって顔を伏せている間に猫田さんが鍵を渡し、ホテルを出たタイミングで思わずため息を吐く。
「大丈夫だって、みんなそんなに人のこと見てないよ」
「すっごい笑ってたけど?」
「……そう言うこともある」
ふっと目を逸らしてそんなことを言った彼に、普段通りの雰囲気を感じ取れて、少しだけ気分が落ち着く。
そしていくつか疑問が湧き上がり、少し勇気を出して問いを投げかける。
「その……猫田さんは前から私のこと気になってたの?」
「そりゃもちろん。酔い潰れた時のこと覚えてるだろ? あの時からずっとだよ」
少しドキっとする。
「は、ハッキリ言うんだね」
「好きな人には本音で話したいじゃん?」
そうだ、さっきから感じていた違和感はこれだ。いつもなら言葉を濁したりして本音をそこまで言わないのに、今はハッキリと本音をぶつけてくる。
……この感じ、願いが叶って舞い上がっている時の水樹に似ている。
緊張を紛らわせようとそんなことを考えていると、猫田さんは私の肩に腕を回して。
「桂里奈もちょっとずつで良いから、本音をぶつけてくれな。ありがたいことに二人だけで過ごす時間はたっぷりあるし、ちょっとずつで良い」
「……そうだね。頑張る」
肩に触れる彼の手付きは何となく優しさを感じて少しだけ緊張が解れる。
仕方ない、彼の要望通り私も素直に思ったことを言うようにしよう。きっとそれが関係を長続きさせる唯一の方法だろう。
――好きになったタイミングが全く同じな事は墓に持って行くつもりだが。
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