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77話 襲撃者
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また明日も会う約束を結衣と結び、一先ず私たちは帰ることにした。
どうやらそこそこ長い間、ここでのんびりしていたようで、到着したのはお昼頃だというのに夕日が周辺を赤く染めている。
周辺の蛇たちはと言えば、とぐろを巻いて気持ちよさそうに眠っている子もいれば、こちらをじっと見つめる子もいる。
それがまた可愛らしくてぼんやり眺めながら歩いていると、森の出口に佐藤さんが見えた。
どうやら私たちが話し終えるのを切り株に座って待ってくれていたようで、こちらに気が付くとにっこり笑みを浮かべて片手を振る。
「どうだい、ご先祖のことは分かったかい?」
「はい、佐藤さんが案内して下さったおかげで知りたかったことはほとんど知ることができました」
「そうかそうか、そりゃ良かった。そうだ、一つ嘘を吐いていたことを教えないといけないな」
そう言って笑った彼は切り株から立ち上がり、クロスワードの冊子を片手に持つとこちらを向く。
「この村の名前を大蛇村と言ったけどね、正しくは大蛇村なんだ。部外者に大蛇様のことを知られないよう、嘘の読み方を最初に教えているんだ」
悪いねと笑いながらそう言った佐藤さんに私たちは何となく察していたため、気にしていないと答える。
と、猫田さんが一つ疑問を持った様子で質問を投げかける。
「あの……八岐大蛇のことを隠していることは分かりましたが、なぜそこまでして隠すんですか? 生きている事だけを隠せば話しても良いのでは無いでしょうか?」
「大昔、襲撃事件が起こっちゃってね。それと、大蛇様のことを呼び捨てしてはいかんよ」
呼び捨てにしたことを慌てて謝罪する猫田さんを横目に、佐藤さんの口から出た物騒な言葉に興味が湧き、恐る恐る質問する。
「襲撃事件って何があったんですか?」
「歩きながら話そうか」
そう言って歩き出した佐藤さんの後に私たちも続く。
一体どんな話を聞けるのだろうと少しワクワクしながら話が始まるのを待っていると、彼はゆっくりとした口調で話し始める。
「大体百年と少し前、その頃は大蛇様の伝説と現存する神であることは別段隠したりはしていなかった。そんな事をする必要も無いと思っていたからなあ」
昔の時代ならその話を耳にしても、こんな辺鄙な場所へ来ようとなんて思わないだろうし、その頃なら隠したりする必要は無かったのかもしれない。
「だが、戦後になってインフラが整備されるようになると噂を聞き付けた付近の街の人間たちが肝試しをしにやって来ることが増えたんだな。大半は寺の周辺に住み着く野生の蛇たちを恐れて逃げるか、寺の周囲を散策するくらいだったが、時々常識のない人間が荒らしていくことがあった」
何となく底が抜けて雑草が生えた賽銭箱のことを思い出し、あれも常識のない人間にやられたのだろうかと勘繰ってしまう。
と、何か疑問に思ったらしい猫田さんが小さく手を挙げて質問をする。
「あの、もしかして賽銭箱がボロボロだったのってそいつらにやられたんですか?」
同じ事を考えていたらしい。
「あれは一年前に来た若造が盗むついでに色々壊していったらしい。運悪く寺に誰もいなかったから捕まえることは出来なかったが……大蛇様が呪いを掛けたようだから今頃この世にはいないだろうな」
「「えっ」」
そう言ってハハハと笑って見せる佐藤さんに、私たちは揃って驚きの声を上げた。
優しそうな彼の口から若造という言葉が出てきた時も少し驚いたが、あんなにも可愛らしい見た目をしていながら呪いを扱えるのは更に驚愕だ。
一方、猫田さんは「この世にいないだろうな」という言葉に恐怖しているようで、強がるような笑みを浮かべているがその顔には恐怖の色が見える。
「それはさて置いて、とにかく余所者が来るようになってから、村民は大蛇様の伝説についてあまり話さなくなった。そのおかげで寺にやって来る人間は減ったが、ある時決定的な事件が起こった」
気付けば真剣な眼差しを浮かべていた佐藤さんは一つため息をしてからゆっくりと口を開く。
「……大蛇様を殺そうと企む者が現れた」
どうやらそこそこ長い間、ここでのんびりしていたようで、到着したのはお昼頃だというのに夕日が周辺を赤く染めている。
周辺の蛇たちはと言えば、とぐろを巻いて気持ちよさそうに眠っている子もいれば、こちらをじっと見つめる子もいる。
それがまた可愛らしくてぼんやり眺めながら歩いていると、森の出口に佐藤さんが見えた。
どうやら私たちが話し終えるのを切り株に座って待ってくれていたようで、こちらに気が付くとにっこり笑みを浮かべて片手を振る。
「どうだい、ご先祖のことは分かったかい?」
「はい、佐藤さんが案内して下さったおかげで知りたかったことはほとんど知ることができました」
「そうかそうか、そりゃ良かった。そうだ、一つ嘘を吐いていたことを教えないといけないな」
そう言って笑った彼は切り株から立ち上がり、クロスワードの冊子を片手に持つとこちらを向く。
「この村の名前を大蛇村と言ったけどね、正しくは大蛇村なんだ。部外者に大蛇様のことを知られないよう、嘘の読み方を最初に教えているんだ」
悪いねと笑いながらそう言った佐藤さんに私たちは何となく察していたため、気にしていないと答える。
と、猫田さんが一つ疑問を持った様子で質問を投げかける。
「あの……八岐大蛇のことを隠していることは分かりましたが、なぜそこまでして隠すんですか? 生きている事だけを隠せば話しても良いのでは無いでしょうか?」
「大昔、襲撃事件が起こっちゃってね。それと、大蛇様のことを呼び捨てしてはいかんよ」
呼び捨てにしたことを慌てて謝罪する猫田さんを横目に、佐藤さんの口から出た物騒な言葉に興味が湧き、恐る恐る質問する。
「襲撃事件って何があったんですか?」
「歩きながら話そうか」
そう言って歩き出した佐藤さんの後に私たちも続く。
一体どんな話を聞けるのだろうと少しワクワクしながら話が始まるのを待っていると、彼はゆっくりとした口調で話し始める。
「大体百年と少し前、その頃は大蛇様の伝説と現存する神であることは別段隠したりはしていなかった。そんな事をする必要も無いと思っていたからなあ」
昔の時代ならその話を耳にしても、こんな辺鄙な場所へ来ようとなんて思わないだろうし、その頃なら隠したりする必要は無かったのかもしれない。
「だが、戦後になってインフラが整備されるようになると噂を聞き付けた付近の街の人間たちが肝試しをしにやって来ることが増えたんだな。大半は寺の周辺に住み着く野生の蛇たちを恐れて逃げるか、寺の周囲を散策するくらいだったが、時々常識のない人間が荒らしていくことがあった」
何となく底が抜けて雑草が生えた賽銭箱のことを思い出し、あれも常識のない人間にやられたのだろうかと勘繰ってしまう。
と、何か疑問に思ったらしい猫田さんが小さく手を挙げて質問をする。
「あの、もしかして賽銭箱がボロボロだったのってそいつらにやられたんですか?」
同じ事を考えていたらしい。
「あれは一年前に来た若造が盗むついでに色々壊していったらしい。運悪く寺に誰もいなかったから捕まえることは出来なかったが……大蛇様が呪いを掛けたようだから今頃この世にはいないだろうな」
「「えっ」」
そう言ってハハハと笑って見せる佐藤さんに、私たちは揃って驚きの声を上げた。
優しそうな彼の口から若造という言葉が出てきた時も少し驚いたが、あんなにも可愛らしい見た目をしていながら呪いを扱えるのは更に驚愕だ。
一方、猫田さんは「この世にいないだろうな」という言葉に恐怖しているようで、強がるような笑みを浮かべているがその顔には恐怖の色が見える。
「それはさて置いて、とにかく余所者が来るようになってから、村民は大蛇様の伝説についてあまり話さなくなった。そのおかげで寺にやって来る人間は減ったが、ある時決定的な事件が起こった」
気付けば真剣な眼差しを浮かべていた佐藤さんは一つため息をしてからゆっくりと口を開く。
「……大蛇様を殺そうと企む者が現れた」
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