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74話
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川から八つの太く長い首が勢いよく飛び出す。
さっきまで喜んでいたはずの村人たちは何が起きたのかわからない様子で逃げ出し、村長と思わしき人間が尻餅を突いてただただ巨大生物を見上げる。
さっきまでとは打って変わってぬるぬると動く八岐大蛇が描かれ、そして美しい黒い光沢が描かれている。
まるで映画のようなクオリティの高さに少し驚かされていると、結衣が口を開く
「こうして生まれた八岐大蛇は、村人たちに条件付きで彼らの非道な行いを許す事にしました」
てっきり今までの仕返しとばかりに暴れ回るものだと思っていたのだが、どうやらその器は私よりも大きいらしい。
「その条件とは月の満ちる日に供物として全員が腹を満たせる量の作物を持って来る事。それを守っている間は川の氾濫も抑えるが、守らなかったら人も家畜も全て喰らう、というものでした」
当時の食糧事情は知らないが、川の氾濫が無くなる上に殺されないなら安いものだろう。
そう考えていると画面は暗転し、「百年後」と文字が出る。
「長い時が経ったある日、彼らは人の姿も取れることに気付きます」
その言葉と共に成長した八人のシルエットが映し出され、その立ち姿から少し困惑しているのが見て取れる。
ふと気になった私は膝の上でボソボソと何かを話している八岐大蛇に問いかける。
「今も人の姿になれるの?」
「なろうと思えばな。ガキの姿になるからやらねえけど」
何か嫌な記憶でも思い出したように寅吉は小さく唸り、生贄にされてしまう前の辛い記憶を思い出してしまうからなのだろうと察する。
と、映像の方では八岐大蛇が村に近付く様子が映し出される。
「人の姿になれた彼らは子孫を残したいという思いが強まり、村に訪れて毎年若い娘を一人寄越すように要求します」
それを聞いて何となく先の展開が予想出来てしまい、何とも言い難い気持ちが湧き上がる。
映像には可愛らしい少女が生贄を送り出すかのように、彼らへ差し出される様子が描かれる。
「彼らの元へ行った少女たちは食べられてしまうのだと最初こそ怖がっていましたが、事情を知ると好意的に接するようになりました」
その言葉でチラと八岐大蛇に目を向けると、一番左側の頭が気恥ずかしそうに頭を下げ、他の頭が面白がるような目を向ける。
「ではここで一番左側の頭、日向さんの奥様が残した日記を見てみましょう」
「んなっ?!」
日向と呼ばれた頭が驚いた声を上げ、この子達がこの映像を見るのも初めてなのだと察する。
と、スクリーンには古い言葉で書かれた文章が映し出され、その横に翻訳文が出る。
そこには村の人たちよりも大切に扱われた事や、初々しい反応が可愛らしかった事、そして幸せだった事が記されている。
「他の子の妻が残した日記や遺書にも似たような事が書かれている事から、女の子には優しかったようです」
「そうなんだ?」
「……我らと同じ思いを出来るだけさせたくなくてな」
中央の頭が気恥ずかしそうに呟き、横で聞いていた猫田さんが思わずと言った様子で微笑む。
と、スクリーンに刀を携えた一人の男の姿が映し出され、不穏な空気が漂い始めた。
さっきまで喜んでいたはずの村人たちは何が起きたのかわからない様子で逃げ出し、村長と思わしき人間が尻餅を突いてただただ巨大生物を見上げる。
さっきまでとは打って変わってぬるぬると動く八岐大蛇が描かれ、そして美しい黒い光沢が描かれている。
まるで映画のようなクオリティの高さに少し驚かされていると、結衣が口を開く
「こうして生まれた八岐大蛇は、村人たちに条件付きで彼らの非道な行いを許す事にしました」
てっきり今までの仕返しとばかりに暴れ回るものだと思っていたのだが、どうやらその器は私よりも大きいらしい。
「その条件とは月の満ちる日に供物として全員が腹を満たせる量の作物を持って来る事。それを守っている間は川の氾濫も抑えるが、守らなかったら人も家畜も全て喰らう、というものでした」
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そう考えていると画面は暗転し、「百年後」と文字が出る。
「長い時が経ったある日、彼らは人の姿も取れることに気付きます」
その言葉と共に成長した八人のシルエットが映し出され、その立ち姿から少し困惑しているのが見て取れる。
ふと気になった私は膝の上でボソボソと何かを話している八岐大蛇に問いかける。
「今も人の姿になれるの?」
「なろうと思えばな。ガキの姿になるからやらねえけど」
何か嫌な記憶でも思い出したように寅吉は小さく唸り、生贄にされてしまう前の辛い記憶を思い出してしまうからなのだろうと察する。
と、映像の方では八岐大蛇が村に近付く様子が映し出される。
「人の姿になれた彼らは子孫を残したいという思いが強まり、村に訪れて毎年若い娘を一人寄越すように要求します」
それを聞いて何となく先の展開が予想出来てしまい、何とも言い難い気持ちが湧き上がる。
映像には可愛らしい少女が生贄を送り出すかのように、彼らへ差し出される様子が描かれる。
「彼らの元へ行った少女たちは食べられてしまうのだと最初こそ怖がっていましたが、事情を知ると好意的に接するようになりました」
その言葉でチラと八岐大蛇に目を向けると、一番左側の頭が気恥ずかしそうに頭を下げ、他の頭が面白がるような目を向ける。
「ではここで一番左側の頭、日向さんの奥様が残した日記を見てみましょう」
「んなっ?!」
日向と呼ばれた頭が驚いた声を上げ、この子達がこの映像を見るのも初めてなのだと察する。
と、スクリーンには古い言葉で書かれた文章が映し出され、その横に翻訳文が出る。
そこには村の人たちよりも大切に扱われた事や、初々しい反応が可愛らしかった事、そして幸せだった事が記されている。
「他の子の妻が残した日記や遺書にも似たような事が書かれている事から、女の子には優しかったようです」
「そうなんだ?」
「……我らと同じ思いを出来るだけさせたくなくてな」
中央の頭が気恥ずかしそうに呟き、横で聞いていた猫田さんが思わずと言った様子で微笑む。
と、スクリーンに刀を携えた一人の男の姿が映し出され、不穏な空気が漂い始めた。
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