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61話 連絡
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立て付けの悪いボロくなった戸を開けると、既に家具はほとんど無くなった部屋がその姿を見せた。
しかし、木の匂いや差し込む日差しはあの頃のままで、まだ残っている勉強机と背もたれが壊れた椅子はそのままな事もあって、ここで生活していた頃の記憶がふつふつと蘇る。
と、私の横に並んだ波瑠が蛇の姿を取っているミワを抱きしめながら。
「意外と綺麗だね」
「お母さんの潔癖が発動したんでしょ」
てきとうに答えながら荷物を部屋の隅へ放り投げ、放置されたままの椅子に腰掛ける。
ミシミシとそのまま壊れそうな音がなるのを気にせず、久しぶりの長距離移動で疲れた体を伸ばしていると、ベッドに腰掛けた波留がミワを膝に乗せながら。
「それでお姉ちゃんはいつ行くの?」
「明日は流石に気が早いかなって思ってる。早くても明々後日かな」
今からでも会社に連絡して許可を貰ったとしても、飛行機のチケットやどんなルートで行けるのかを調べないといけないし、明々後日もまだ無理かもしれない。
私はそう考えながらスマホを取り出し、鬼塚社長の連絡先を探していると、波留はミワの頭をなでなでしながら。
「何で社長の連絡先持ってるのかって聞いても良い? もしかして新しい仕事って秘書だったりする?」
「秘書では無いけど、ちょっと特殊な枠で入れて貰ったからなんだよね。詳しい事はその内話すけど」
「特殊な枠って……賄賂とか?」
「何でもっと普通なのが出て来ないのかな」
この妹は私の事を何だと思っているのだろうか。いつの日かこれについて問い詰める必要がありそうだ。
そんな事を考えながら鬼塚社長の連絡先を見つけた私はそれをタップして電話を掛ける。
『もしもし、深川か?』
「はい、そうです。今お時間よろしいですか?」
『ああ、構わん。休みを伸ばして欲しいのか?』
「それもあると言えばあるんですが、あやかしの事でお話があるんです」
あやかしの単語を出した途端に電話の向こうの雰囲気が変わったのを感じ取り、やっぱりそんなふざけたことでは行かせて貰えないのかと不安が湧き出すが――
『詳しく聞かせて貰おうか』
「は、はい」
さっきまでの心配が全くの杞憂であったことに安心しながら、私は母から教えられた情報と斐伊川の周辺に行こうと思っている話をした。
興味津々な様子で話を聞いていた鬼塚社長はしばらく何も言わずにキーボードを打つ音だけを響かせて。
「よし、飛行機のチケットは取った。明日か明後日には届くだろうから、それ使って鳥取空港まで行ってくれ」
「えっ」
「俺は仕事で行けないが……代わりに誰か行かせるから、そいつと一緒にあやかしの事を調べて来ると良い」
「は、はい」
私が返事をすると「気を付けて」とだけ言って電話は切られ、言葉を失いながら波留の方へ目を向ける。
「ど、どうしたの? もしかしてダメって言われた?」
「い、いや、飛行機のチケット用意されちゃった」
「早くない?」
てっきり行って来いとだけ言われるものだと思っていたのだが、まさかそこまで準備されるとは予想もしていなかった。
だが、これでゆっくりと私の先祖について調べることが出来る。社長も私のあやかしに興味があるようだし、早いところ調べ上げて、社長にその正体を教えられるように頑張るとしよう。
私は一人心に誓いながらスマホを机に置き、疲れた様子で欠伸をするミワの元へ向かった。
しかし、木の匂いや差し込む日差しはあの頃のままで、まだ残っている勉強机と背もたれが壊れた椅子はそのままな事もあって、ここで生活していた頃の記憶がふつふつと蘇る。
と、私の横に並んだ波瑠が蛇の姿を取っているミワを抱きしめながら。
「意外と綺麗だね」
「お母さんの潔癖が発動したんでしょ」
てきとうに答えながら荷物を部屋の隅へ放り投げ、放置されたままの椅子に腰掛ける。
ミシミシとそのまま壊れそうな音がなるのを気にせず、久しぶりの長距離移動で疲れた体を伸ばしていると、ベッドに腰掛けた波留がミワを膝に乗せながら。
「それでお姉ちゃんはいつ行くの?」
「明日は流石に気が早いかなって思ってる。早くても明々後日かな」
今からでも会社に連絡して許可を貰ったとしても、飛行機のチケットやどんなルートで行けるのかを調べないといけないし、明々後日もまだ無理かもしれない。
私はそう考えながらスマホを取り出し、鬼塚社長の連絡先を探していると、波留はミワの頭をなでなでしながら。
「何で社長の連絡先持ってるのかって聞いても良い? もしかして新しい仕事って秘書だったりする?」
「秘書では無いけど、ちょっと特殊な枠で入れて貰ったからなんだよね。詳しい事はその内話すけど」
「特殊な枠って……賄賂とか?」
「何でもっと普通なのが出て来ないのかな」
この妹は私の事を何だと思っているのだろうか。いつの日かこれについて問い詰める必要がありそうだ。
そんな事を考えながら鬼塚社長の連絡先を見つけた私はそれをタップして電話を掛ける。
『もしもし、深川か?』
「はい、そうです。今お時間よろしいですか?」
『ああ、構わん。休みを伸ばして欲しいのか?』
「それもあると言えばあるんですが、あやかしの事でお話があるんです」
あやかしの単語を出した途端に電話の向こうの雰囲気が変わったのを感じ取り、やっぱりそんなふざけたことでは行かせて貰えないのかと不安が湧き出すが――
『詳しく聞かせて貰おうか』
「は、はい」
さっきまでの心配が全くの杞憂であったことに安心しながら、私は母から教えられた情報と斐伊川の周辺に行こうと思っている話をした。
興味津々な様子で話を聞いていた鬼塚社長はしばらく何も言わずにキーボードを打つ音だけを響かせて。
「よし、飛行機のチケットは取った。明日か明後日には届くだろうから、それ使って鳥取空港まで行ってくれ」
「えっ」
「俺は仕事で行けないが……代わりに誰か行かせるから、そいつと一緒にあやかしの事を調べて来ると良い」
「は、はい」
私が返事をすると「気を付けて」とだけ言って電話は切られ、言葉を失いながら波留の方へ目を向ける。
「ど、どうしたの? もしかしてダメって言われた?」
「い、いや、飛行機のチケット用意されちゃった」
「早くない?」
てっきり行って来いとだけ言われるものだと思っていたのだが、まさかそこまで準備されるとは予想もしていなかった。
だが、これでゆっくりと私の先祖について調べることが出来る。社長も私のあやかしに興味があるようだし、早いところ調べ上げて、社長にその正体を教えられるように頑張るとしよう。
私は一人心に誓いながらスマホを机に置き、疲れた様子で欠伸をするミワの元へ向かった。
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