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51話 新人
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「良い子にしてるんだよ? 暴れたりしたらダメだからね?」
「やかましいわ小娘が。吾輩を子ども扱いするな」
ミワが反抗的にそう言い返すと同時、エレベーターの扉は閉まって行き。
見えなくなるまで見送った私は何故だか寂しく思いながら自席へと向かう。
と、飲み物を買いに来たらしく財布を片手に持った七海が角から現れ、私と目が合うとにっこり笑う。
「おっはよー。今日は新人さんが来るって聞いた?」
「天狗木さんから聞いたよ。どんな人なのかって分かる?」
「全然。傘部長が内緒だって言って教えてくれなかった」
やはり、まだ教えられてないか。早いところ誰が来るか分からない不安から解放されたかったのだが。
そんな事を考えながら七海と別れ、自席に着くとまだ木綿谷さんしか来ていなかった。
理由を聞いてみると三十分程度前に何人か来ていたが、昼食を食べに二口食堂に行ってしまったのだと言う。
それならもう少し前に来て一緒に行けば良かったと、少し後悔しながら仕事の前準備を始めていると――
「ひゃっ!」
いきなりうなじに冷たいものを当てられ、思わず変な声が出た。
何だと振り返ればお茶の入ったペットボトルとジュースの入ったそれを二本持ち、イタズラが成功したという笑みを浮かべる七海の姿があった。
「ビックリした?」
「寿命縮むから辞めてね」
「まあまあ、そう言わずに。これ上げるから」
「……今回だけだからね」
物を貰ってしまうと強く言えない自分が情けない。
それからしばらく七海と他愛も無い話をして時間を過ごしていると、少し遅れて猫田さんがやって来た。
何でも時間に余裕があるからと、猫に構ってやっていたら少し遅れてしまったらしい。
それを横でお茶を飲みながら聞いていた七海はおかしそうに笑ってスーツを指差すと。
「スーツに引っ掻いた跡があるのはそう言う事なんだ?」
「え、マジ?」
よく見れば二の腕の辺りに、猫が引っ掻いたのであろう傷が付いていて、まだ行かないでとしがみ付かれたのだと察する。
しかし、猫田さんは大して気にする様子無く、何か思い出した様子で。
「それより、新人が来るって昨日木綿谷から連絡が来たけど本当か? どんな奴か聞いてる?」
「まだ誰も聞いてないみたいです。大村から来たという話は聞きましたけど……」
ジュースの入ったペットボトルを片手にそう答えると、猫田さんは「げっ……」と嫌そうな顔をする。
「よりによって大村かよ。マジで碌なやついなかったから不安しかねえな」
「私もあそこの知り合いでまともだったのが部下だけだったので、ちょっと心配なんですよね」
あの上司はもちろんのこと、全く働かない癖して私の作成した表などに対してグチグチと文句を言って来る部長だったり、仕事中に嫌味たらしく彼氏自慢をして来る同僚だったりと、本当にまともと言える人間がいなかった。
……あやかしデジタルの人事部の人たちを信じよう。
「お、皆さんもう集まっていマスネ?」
唐突に独特な片言な言葉が響き、新人がどんな人かを予想して遊んでいた皆が目を向ける。
「おやおや、新人さんが来ることは知っていましたか。では、来てもらいましょうか」
エレベーター側の私たちからは死角となるところへ傘部長が手招きすると、その新人は堂々とした歩き方で現れた。
「どうも、大村から来ました――鳩山海斗です」
最悪の新人は私と目が合うと、気持ちの悪い笑みを浮かべた。
「やかましいわ小娘が。吾輩を子ども扱いするな」
ミワが反抗的にそう言い返すと同時、エレベーターの扉は閉まって行き。
見えなくなるまで見送った私は何故だか寂しく思いながら自席へと向かう。
と、飲み物を買いに来たらしく財布を片手に持った七海が角から現れ、私と目が合うとにっこり笑う。
「おっはよー。今日は新人さんが来るって聞いた?」
「天狗木さんから聞いたよ。どんな人なのかって分かる?」
「全然。傘部長が内緒だって言って教えてくれなかった」
やはり、まだ教えられてないか。早いところ誰が来るか分からない不安から解放されたかったのだが。
そんな事を考えながら七海と別れ、自席に着くとまだ木綿谷さんしか来ていなかった。
理由を聞いてみると三十分程度前に何人か来ていたが、昼食を食べに二口食堂に行ってしまったのだと言う。
それならもう少し前に来て一緒に行けば良かったと、少し後悔しながら仕事の前準備を始めていると――
「ひゃっ!」
いきなりうなじに冷たいものを当てられ、思わず変な声が出た。
何だと振り返ればお茶の入ったペットボトルとジュースの入ったそれを二本持ち、イタズラが成功したという笑みを浮かべる七海の姿があった。
「ビックリした?」
「寿命縮むから辞めてね」
「まあまあ、そう言わずに。これ上げるから」
「……今回だけだからね」
物を貰ってしまうと強く言えない自分が情けない。
それからしばらく七海と他愛も無い話をして時間を過ごしていると、少し遅れて猫田さんがやって来た。
何でも時間に余裕があるからと、猫に構ってやっていたら少し遅れてしまったらしい。
それを横でお茶を飲みながら聞いていた七海はおかしそうに笑ってスーツを指差すと。
「スーツに引っ掻いた跡があるのはそう言う事なんだ?」
「え、マジ?」
よく見れば二の腕の辺りに、猫が引っ掻いたのであろう傷が付いていて、まだ行かないでとしがみ付かれたのだと察する。
しかし、猫田さんは大して気にする様子無く、何か思い出した様子で。
「それより、新人が来るって昨日木綿谷から連絡が来たけど本当か? どんな奴か聞いてる?」
「まだ誰も聞いてないみたいです。大村から来たという話は聞きましたけど……」
ジュースの入ったペットボトルを片手にそう答えると、猫田さんは「げっ……」と嫌そうな顔をする。
「よりによって大村かよ。マジで碌なやついなかったから不安しかねえな」
「私もあそこの知り合いでまともだったのが部下だけだったので、ちょっと心配なんですよね」
あの上司はもちろんのこと、全く働かない癖して私の作成した表などに対してグチグチと文句を言って来る部長だったり、仕事中に嫌味たらしく彼氏自慢をして来る同僚だったりと、本当にまともと言える人間がいなかった。
……あやかしデジタルの人事部の人たちを信じよう。
「お、皆さんもう集まっていマスネ?」
唐突に独特な片言な言葉が響き、新人がどんな人かを予想して遊んでいた皆が目を向ける。
「おやおや、新人さんが来ることは知っていましたか。では、来てもらいましょうか」
エレベーター側の私たちからは死角となるところへ傘部長が手招きすると、その新人は堂々とした歩き方で現れた。
「どうも、大村から来ました――鳩山海斗です」
最悪の新人は私と目が合うと、気持ちの悪い笑みを浮かべた。
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