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45話 不安的中?
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今日は仕事が少なかった事もあって、定時より早い時間に仕事が終わり、私は朝の約束通り一階のエレベーター近くにあるソファに腰掛け二人を待つ。
時間を見れば仕事場でゆっくりとジュースを飲んで休憩していたこともあって、そろそろ五時になろうとしている。
よく考えれば定時は六時で、社長もそれを想定してそのくらいの時間に来るだろうし、もう少し上でのんびりしていても良かったかもしれない。
「ミワちゃん待ってるのか?」
隣に腰掛けながら問い掛けて来たのは、さっきまで傘部長とペット自慢をしていた猫田さんだ。
話によると傘部長はペットにフクロウを飼っているらしく、我が子のように愛しているという。
因みにフクロウを選んだ理由は細くなった姿が傘小僧に似ているからだそうだ。
「そうです。本人の前ではちゃん付けはしないで上げて下さいね」
さっきまで自分のペットを熱血的に話していた二人の姿を思い出しながらそう忠告すると、猫田さんは「はいよ」と言いながら缶コーヒーを一口飲んだ。
よく見れば大村で飲むようになり、今も尚好きな銘柄のコーヒーである事に気付き、これなら気が合うかもしれないと、少し喜ばしく思う。
「そういや、あの子の記憶は戻ったのか?」
「まだです。それを取り戻すのも今回の目的ですから」
早い内に取り戻して欲しい反面、取り戻されたらそれはそれで面倒になりそうで恐かったりする。
そんな事を考えながらさっき買ったばかりのお茶を飲んでいると、エレベーターが停止した音が聞こえ、何となくそちらへ目を向ける。
「お、噂をしてれば本人が来たな」
「ですね」
父と娘のようにも見える二人がエレベーターの中に見え、少し早めに来て良かったと心の中で思う。
と、よく見ればミワは少し疲れている様子で、その眼はどこか眠たげな物になっている。何をしていたのかは知らないが、もうおねむの時間らしい。
もしかしたら、社長が遊び相手となって走り回っていたのかもしれない。
「お帰り。記憶は戻った?」
眠たげに眼を擦るミワにそう尋ねてみると、元気無く黙って首を振る。
私はうつらうつらと揺れるミワがそろそろ限界を迎えようとしている事を察し、抱っこしながら社長に尋ねる。
「この子の正体、分かりましたか?」
「一応な。本人の口から聞くと良い」
話している間にすやすやと寝息を立て始めてしまったミワを抱き直す。
「失礼な事言いませんでしたか? 小僧とか、そんなこと言いそうで怖かったんですけど」
「気にするな」
否定しないということは何かしら失礼な呼び方をしたらしい。帰ったら叱り付けてやる必要があるかもしれない。
と、社長の背後から現れた天狗木さんが案内するように片手で会社の出口の方を指し示して。
「では、今朝のようにご自宅までお送り致します。彼氏さんも御一緒にいかがですか?」
「彼氏じゃないですけどお言葉に甘えます」
青筋を浮かべながらもそう返答した猫田さんに天狗木さんは楽しげに笑いながら出口の方へと向かう。
どうやら傍から見れば私たちは付き合っているように見えるらしい。
時間を見れば仕事場でゆっくりとジュースを飲んで休憩していたこともあって、そろそろ五時になろうとしている。
よく考えれば定時は六時で、社長もそれを想定してそのくらいの時間に来るだろうし、もう少し上でのんびりしていても良かったかもしれない。
「ミワちゃん待ってるのか?」
隣に腰掛けながら問い掛けて来たのは、さっきまで傘部長とペット自慢をしていた猫田さんだ。
話によると傘部長はペットにフクロウを飼っているらしく、我が子のように愛しているという。
因みにフクロウを選んだ理由は細くなった姿が傘小僧に似ているからだそうだ。
「そうです。本人の前ではちゃん付けはしないで上げて下さいね」
さっきまで自分のペットを熱血的に話していた二人の姿を思い出しながらそう忠告すると、猫田さんは「はいよ」と言いながら缶コーヒーを一口飲んだ。
よく見れば大村で飲むようになり、今も尚好きな銘柄のコーヒーである事に気付き、これなら気が合うかもしれないと、少し喜ばしく思う。
「そういや、あの子の記憶は戻ったのか?」
「まだです。それを取り戻すのも今回の目的ですから」
早い内に取り戻して欲しい反面、取り戻されたらそれはそれで面倒になりそうで恐かったりする。
そんな事を考えながらさっき買ったばかりのお茶を飲んでいると、エレベーターが停止した音が聞こえ、何となくそちらへ目を向ける。
「お、噂をしてれば本人が来たな」
「ですね」
父と娘のようにも見える二人がエレベーターの中に見え、少し早めに来て良かったと心の中で思う。
と、よく見ればミワは少し疲れている様子で、その眼はどこか眠たげな物になっている。何をしていたのかは知らないが、もうおねむの時間らしい。
もしかしたら、社長が遊び相手となって走り回っていたのかもしれない。
「お帰り。記憶は戻った?」
眠たげに眼を擦るミワにそう尋ねてみると、元気無く黙って首を振る。
私はうつらうつらと揺れるミワがそろそろ限界を迎えようとしている事を察し、抱っこしながら社長に尋ねる。
「この子の正体、分かりましたか?」
「一応な。本人の口から聞くと良い」
話している間にすやすやと寝息を立て始めてしまったミワを抱き直す。
「失礼な事言いませんでしたか? 小僧とか、そんなこと言いそうで怖かったんですけど」
「気にするな」
否定しないということは何かしら失礼な呼び方をしたらしい。帰ったら叱り付けてやる必要があるかもしれない。
と、社長の背後から現れた天狗木さんが案内するように片手で会社の出口の方を指し示して。
「では、今朝のようにご自宅までお送り致します。彼氏さんも御一緒にいかがですか?」
「彼氏じゃないですけどお言葉に甘えます」
青筋を浮かべながらもそう返答した猫田さんに天狗木さんは楽しげに笑いながら出口の方へと向かう。
どうやら傍から見れば私たちは付き合っているように見えるらしい。
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