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42話
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「にしても、まさか社長が会いたがるとは驚いたな」
帰宅ラッシュで朝ほどでは無いがそこそこ混んでいる電車の中で、猫田さんは楽しげに話す。
「話された時は私もびっくりしましたよ。まさか社長がそんなこと言うなんて思っても居ませんでしたから」
「にしても、喋れる蛇と会って何をするつもりなんだ? まさか、実験とかはしないよな……?」
「怖いこと言わないで下さいよ」
あの鬼塚社長であればそんなことはしないと信じているが、そんなことを言われてしまうと不安になってくる。
猫田さんは私の顔色から嫌な想像をしている事を察したようで、おかしそうに笑うと。
「冗談だよ。あの社長ならそんな酷いことしないって」
「もし酷いことされたら恨みますからね」
「俺が恨まれるのは理不尽じゃねえか?」
冷や汗を見せる猫田さんに敢えて何も言わずにいると、話をしている間にかなり進んでいたらしく、電車は目的の駅で停車した。
何故か急に謝り出した猫田さんと共に改札へ進み、気にしないよう言ってから別れ、ゆったりとした足取りで北側の出口へ向かう。
するとスマホがメッセージの受信を教える通知を鳴らし、ポケットからそれを取り出す。
画面に映し出された通知をタップしてアプリを開くと、そこには波留に抱っこされたまま幸せそうに眠るミワの写真と『私が貰っても良いよね?』という一文があり。
私は焦燥感に押される様にして駆け足でアパートへ向かった。
わずか数分でアパート前に到着した私は、以前よく見かけたセダンが無くなっている事に気付きながら鍵を取り出し、開錠して扉を開ける。
すると薄暗かった廊下にすぐさま明かりが灯り、奥から見慣れた幼女が駆けて来るのが見え。
「やっと帰って来たか! これ程の羞恥、今まで味わったことが無いぞ!」
「……その服装は?」
私が思わず指差したミワの服装。
それはいつもの蛇柄のワンピースでは無く、まるでアイドルが着るような可愛らしいものになっていて、最早雑誌に載っていても何ら違和感が無い。
「貴様の妹が寝ている間に着せおったのだ! これなら死んだ方がまだマシだ!」
「ま、まあ、取り合えず中に入ろうか」
これなら波留に連れて行かれる事は無さそうだと、ホッと一安心しながら靴を脱いで上がると、家の中から良い匂いがする事に気付いた。
その匂いで今晩に少し期待しながらリビングに入ると、最初に目に入ったのは私のベッドに寝転がってスマホをいじる波留だった。
「ただいま。ミワが激おこなのはご存じ?」
「うん、可愛い服着せてあげたら怒られちゃった」
「そんなんじゃあ、この子はあげられないね」
勝ち誇ったように私がそう言うと、波留は少し悔しいらしくスマホを触っていた手を止めてジト目を向ける。
と、キッチンで何か料理をしている水樹に気付いた私はそちらへ目を向ける。
「何作ってるの?」
「炒飯。材料がこれしか無かったからこんくらいしか作れんけど、別に良いよな?」
何度か水樹の美味しい手料理を食べたことのある私は、炒飯の二文字が異様に魅力的に感じる。
ミワは炒飯を知らない様子で首を傾げ、波留はそんなにお腹が空いていないのかどうでも良い様子でスマホをいじり始める。
「俺の飯、期待しとけよな」
「美味しいの頼んだよー。ミワには食後にちょっとお話あるから覚えておいてね」
「む? 分かった」
炒飯の話をしていたせいで忘れかけていたが、あの事も話さないといけない。忘れないようにしておこう。
しかし美味しい炒飯を前に、その事を覚え続けることは不可能だった。
帰宅ラッシュで朝ほどでは無いがそこそこ混んでいる電車の中で、猫田さんは楽しげに話す。
「話された時は私もびっくりしましたよ。まさか社長がそんなこと言うなんて思っても居ませんでしたから」
「にしても、喋れる蛇と会って何をするつもりなんだ? まさか、実験とかはしないよな……?」
「怖いこと言わないで下さいよ」
あの鬼塚社長であればそんなことはしないと信じているが、そんなことを言われてしまうと不安になってくる。
猫田さんは私の顔色から嫌な想像をしている事を察したようで、おかしそうに笑うと。
「冗談だよ。あの社長ならそんな酷いことしないって」
「もし酷いことされたら恨みますからね」
「俺が恨まれるのは理不尽じゃねえか?」
冷や汗を見せる猫田さんに敢えて何も言わずにいると、話をしている間にかなり進んでいたらしく、電車は目的の駅で停車した。
何故か急に謝り出した猫田さんと共に改札へ進み、気にしないよう言ってから別れ、ゆったりとした足取りで北側の出口へ向かう。
するとスマホがメッセージの受信を教える通知を鳴らし、ポケットからそれを取り出す。
画面に映し出された通知をタップしてアプリを開くと、そこには波留に抱っこされたまま幸せそうに眠るミワの写真と『私が貰っても良いよね?』という一文があり。
私は焦燥感に押される様にして駆け足でアパートへ向かった。
わずか数分でアパート前に到着した私は、以前よく見かけたセダンが無くなっている事に気付きながら鍵を取り出し、開錠して扉を開ける。
すると薄暗かった廊下にすぐさま明かりが灯り、奥から見慣れた幼女が駆けて来るのが見え。
「やっと帰って来たか! これ程の羞恥、今まで味わったことが無いぞ!」
「……その服装は?」
私が思わず指差したミワの服装。
それはいつもの蛇柄のワンピースでは無く、まるでアイドルが着るような可愛らしいものになっていて、最早雑誌に載っていても何ら違和感が無い。
「貴様の妹が寝ている間に着せおったのだ! これなら死んだ方がまだマシだ!」
「ま、まあ、取り合えず中に入ろうか」
これなら波留に連れて行かれる事は無さそうだと、ホッと一安心しながら靴を脱いで上がると、家の中から良い匂いがする事に気付いた。
その匂いで今晩に少し期待しながらリビングに入ると、最初に目に入ったのは私のベッドに寝転がってスマホをいじる波留だった。
「ただいま。ミワが激おこなのはご存じ?」
「うん、可愛い服着せてあげたら怒られちゃった」
「そんなんじゃあ、この子はあげられないね」
勝ち誇ったように私がそう言うと、波留は少し悔しいらしくスマホを触っていた手を止めてジト目を向ける。
と、キッチンで何か料理をしている水樹に気付いた私はそちらへ目を向ける。
「何作ってるの?」
「炒飯。材料がこれしか無かったからこんくらいしか作れんけど、別に良いよな?」
何度か水樹の美味しい手料理を食べたことのある私は、炒飯の二文字が異様に魅力的に感じる。
ミワは炒飯を知らない様子で首を傾げ、波留はそんなにお腹が空いていないのかどうでも良い様子でスマホをいじり始める。
「俺の飯、期待しとけよな」
「美味しいの頼んだよー。ミワには食後にちょっとお話あるから覚えておいてね」
「む? 分かった」
炒飯の話をしていたせいで忘れかけていたが、あの事も話さないといけない。忘れないようにしておこう。
しかし美味しい炒飯を前に、その事を覚え続けることは不可能だった。
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