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29話
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二口食堂に入ると今日も魚の焼ける良い匂いがふんわりと漂い、空腹が程よく刺激される。
今日は魚にしようなんて考えていると、店主である二口明恵さんがいつもの割烹着を着て現れた。
「いらっしゃい。好きな席に掛けて待っててね」
「はい」
猫田さんが返事をして、近くの席へ移動すると、七海は相当お腹が空いているのかすぐにメニュー表を取り出した。
私はいつも通りその隣に腰掛け、メニューを覗き込むとやはりどの料理も美味しそうで腹の虫が早く飯を寄越せと言わんばかりに騒ぐ。
「私は鯖の塩焼きにしようかな。桂里奈は?」
「私もそれにする」
どうやら魚の気分は私だけでは無かったらしい。
そうして全員が何を食べるか決めた頃、二口さんがどこからともなく現れて。
「決まったかい?」
「き、聞いてたんですか?」
猫田さんは少し怯えたような反応を見せ、二口さんはおかしそうに笑う。
「何度も来てくれるから何となくで分かるんだよ。盗み聞きはしてないから安心しな」
「そ、そうでしたか。じゃあ、注文の方を……」
注文を全て聞き終えて厨房へ戻って行く二口さんを見送っていると、何かを思い出した様子で七海が。
「そう言えばさー、店の少し先に黒いセダン止まってたよね。こんな狭い通りに路駐は頭悪いと思うの」
「お前に頭悪いって言われるやつも哀れだな」
「おっかしーなー、私の方が学歴高いんだけどなー?」
ニコニコの笑みを浮かべてにらみ合いを始め、その仲が良いのか悪いのか分からないやり取りはいつ見ても飽きない。
と、状況的に不利と判断したらしい猫田さんが話を逸らすように。
「そ、そう言えば深川が自称神の喋れる蛇を拾ったらしいんだよ。お前らなんか心当たり無いか?」
「話逸らすなー!」
七海が慌てて逃がすまいとばかりに食らいつくが、他の先輩たちは蛇に興味津々な様子で。
「それ本当か? どんな声してるんだ?」
「アニメの声優のようなカッコいい声です。中身はポンコツですけど」
木綿谷先輩の質問にそう答えると、次は猫田さんに噛み付いていた筈の七海が。
「もしかして桂里奈の次の彼氏? 男誑しだねぇ」
「ペットだし彼氏なんて出来たこと無いし!」
まさかの男誑し認定に思わず言い返すと七海は驚いた様子で目を見開く。
「彼氏できたこと無いの? そんなに可愛いのに?」
「揶揄わないでよ」
一度も告白されたことが無いのに可愛いはずが無い。揶揄うのは辞めて欲しいものだ。
そんな会話をしている間にワゴンを押して二口さんが現れ。
蛇のことで盛り上がっていた先輩たちは、それによって更に騒がしくなった。
今日は魚にしようなんて考えていると、店主である二口明恵さんがいつもの割烹着を着て現れた。
「いらっしゃい。好きな席に掛けて待っててね」
「はい」
猫田さんが返事をして、近くの席へ移動すると、七海は相当お腹が空いているのかすぐにメニュー表を取り出した。
私はいつも通りその隣に腰掛け、メニューを覗き込むとやはりどの料理も美味しそうで腹の虫が早く飯を寄越せと言わんばかりに騒ぐ。
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「私もそれにする」
どうやら魚の気分は私だけでは無かったらしい。
そうして全員が何を食べるか決めた頃、二口さんがどこからともなく現れて。
「決まったかい?」
「き、聞いてたんですか?」
猫田さんは少し怯えたような反応を見せ、二口さんはおかしそうに笑う。
「何度も来てくれるから何となくで分かるんだよ。盗み聞きはしてないから安心しな」
「そ、そうでしたか。じゃあ、注文の方を……」
注文を全て聞き終えて厨房へ戻って行く二口さんを見送っていると、何かを思い出した様子で七海が。
「そう言えばさー、店の少し先に黒いセダン止まってたよね。こんな狭い通りに路駐は頭悪いと思うの」
「お前に頭悪いって言われるやつも哀れだな」
「おっかしーなー、私の方が学歴高いんだけどなー?」
ニコニコの笑みを浮かべてにらみ合いを始め、その仲が良いのか悪いのか分からないやり取りはいつ見ても飽きない。
と、状況的に不利と判断したらしい猫田さんが話を逸らすように。
「そ、そう言えば深川が自称神の喋れる蛇を拾ったらしいんだよ。お前らなんか心当たり無いか?」
「話逸らすなー!」
七海が慌てて逃がすまいとばかりに食らいつくが、他の先輩たちは蛇に興味津々な様子で。
「それ本当か? どんな声してるんだ?」
「アニメの声優のようなカッコいい声です。中身はポンコツですけど」
木綿谷先輩の質問にそう答えると、次は猫田さんに噛み付いていた筈の七海が。
「もしかして桂里奈の次の彼氏? 男誑しだねぇ」
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「揶揄わないでよ」
一度も告白されたことが無いのに可愛いはずが無い。揶揄うのは辞めて欲しいものだ。
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蛇のことで盛り上がっていた先輩たちは、それによって更に騒がしくなった。
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