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27話 出社

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 目覚ましの音で起き上がり、何となく気配を感じ取った私は枕の横へ目を向ける。
 するとそこにはとぐろを巻いて寝るミワの姿があり、私は思わず笑いながら真っ白な頬を撫でる。
 意外にももちもちな感触が手に伝わり、その驚きから完全に眠気が吹き飛んだ。

「……何をしている」

「勝手にお布団に上がった罰です」

 別に布団に上がられようと構まわないのが本音だったりするが黙っておこう。
 と、されるがままにされていたミワはジト目を私に向けて。

「今日は仕事なのだろう? こんなことをしていて良いのか」

「あっ」

 その言葉で時計を見てみれば確かに時間が少し過ぎていて、私は渋々撫でる手を止めてキッチンへ向かう。
 コーヒーを淹れるべく湯を沸かし、その間にパンをトースターに入れて着々と朝食の準備を進める。
 と、こちらへ近付いて来たミワに、ご飯が食べたいのだと察した私は。

「ああ、ご飯のネズミとかは今日用意するから待っててね」

「その必要は無い。近くからネズミの匂いがするからな」

「……嘘でしょ?」

 お湯が沸いたやかんに掛けた手を止め、恐る恐るミワに目を向けると彼はおかしそうに。

「ネズミが出ないわけが無かろうぞ。やつらはどこにでも湧く」

「じゃ、じゃあ、駆除をお願いします」

「フハハハ! 吾輩に任せておけ!」

 やけに気合の入っているミワはそう言ってテーブル横のクッションでとぐろを巻き、ご機嫌な様子で舌をチロチロと出す。
 どこか子供っぽいその仕草に思わず笑いながら沸いた湯でインスタントコーヒーを作り、焼けあがったパンを取り出す。
 そうして朝の支度をパッパと済ませた私は、終始ご機嫌な様子のミワに見送られて家を出た。

 ミワの餌をどこで買おうかと考えながら、家から徒歩十分程度の距離に位置する駅の方へ歩く。
 すると背後に誰か近付いている事に気付き、追い抜かすだろうと考えながら道の端へ寄ると。

「おはよう。疲れは取れたか?」

 聞き慣れた声に内心驚きながら振り返ると、小さな寝癖の残っている猫田さんの姿があり、私は少し緊張しながら。

「おはようございます。疲れは全部落ちたんですが……ちょっと相談を良いですか?」

「何だ?」

 私の横に並んだ猫田さんは不思議そうに首を傾げて見せ、笑われないかと少し不安になりながら。

「実は昨日、記憶喪失の喋れる白い蛇が家に出たんです」

「喋れる蛇? ……それは、大変だな」

 顔を青くしながらそう言う猫田さんを見て蛇が嫌いなのだと察しながら、相談したいことを尋ねる。

「それで、その蛇が言うには蛇神で国を造ったとか言ってるんです。何か知りませんか?」

「蛇神? メデューサとかじゃないか?」

「声は男なんですよ」

「じゃあナーガとか?」

 あり得そうだが記憶が確かならナーガはインドの神話に出て来る神だったはずだ。何かの要因で日本に来た可能性もあるが、普通に日本語が話せている辺り違う気がする。
 昨日、洗ってやった後にネットで調べてみても情報はあまり出て来なかったし、本当に正体が分からない。
 
 案の定、答えが出る前に駅へ到着してしまった私たちは、普段通り満員電車へと乗り込み。
 会社へ着く頃には疲れからその話の事を忘れてしまっていた。
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