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23話 訪問
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掃除が終わった私はベッドに寝転がってこれから何をしようかと考える。
猫田さんに趣味を質問された時には映画鑑賞なんて答えたが、昨日映画館で見て来てしまったせいでその気にならず、かと言って他にやることがないせいで暇なことこの上ない。
ぼーっと天井を見つめていると、次第に天井の汚れが人の顔に見え始め、私は思わず溜息を吐きながら起き上がる。
それと同時、インターホンが鳴り、誰だろうかと不思議に思いながら玄関扉の除き窓から外を伺う。
するとそこには高校生の頃、よく一緒に遊んだ友人である田中澪の姿があり、私は内心驚きながら扉を開ける。
「おっひさー! 元気してた?」
「ひ、久しぶり。今日はどうしたの?」
高校で初めて会った時と変わらず元気な様子の澪に何となく安心する。
「偶々近く通ったからちゃんと生きてるかなーって」
「この通りちゃんと生きてます。まあ、暇だし上がってく?」
「良いの? 実はさっきまでかなり歩き回ってたから疲れちゃってさー」
自嘲気味に笑った彼女は私に続くようにして中へ入ると、本当に疲れていたらしく、部屋の中へ入るなり座布団に腰掛けた。
私は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注いでやりながら。
「そう言えば澪はどこの会社に就職したの?」
「労基」
「えっ」
自分の分を注いでいた手を止めて思わず澪を見ると、彼女はイタズラな笑みを浮かべながら麦茶を飲む。
何か見抜かれている様な、そんな気分に陥っていると澪はコップをテーブルに置いて。
「その様子だと悩みがあるね? さあ、女神の如く寛大な私に話してみなさい」
「……実はね」
何となく話さなければならない気がした私は、もう二度と関わりたくないからという理由から誰にも話していなかった大村での出来事を話すことにした。
黙って澪はその話を聞き、私がほぼ全ての出来事を話し終えると深々と溜息を吐いて。
「何で労基に相談しなかったの?」
「……もうあの会社に関わりたくなくて」
「やり返したいとは思わないの?」
「逆恨みされたら面倒だなって」
思わず目を逸らしながら言うと澪は再び深々と溜息を吐く。
何だか教師に怒られているような気分になっていると彼女は麦茶を一口飲んで。
「明日から忙しくなるなー」
「話さない方が良かった?」
「いいや、桂里奈を虐めた会社をぶっ潰せるのが楽しみだから大丈夫」
この子はいつの間にこんな血の気が多くなってしまったのだろうか。
と、お茶を飲み干した澪は何か思い出した様子で私と目を合わせて。
「あやかしデジタルで働いてるって言ってたよね? あの会社、あやかしの血を受け継いでる人がいるって噂あるんだけど本当なの?」
「さ、さあ……」
別に話してはダメだなんて言われてはいないが、余計なことは言わない方が良いだろう。
そう思ってごまかしたのだが、澪は「ふーん」とジト目を向けて。
「大親友なのに教えてくれないんだー? 酷いな―」
「分かった分かった、ちょっとなら話すから」
そう言えば高校の頃も、こうやって私の隠し事を聞き出してきた。
良い意味でも悪い意味でも、澪はあの頃から変わっていないらしい。
猫田さんに趣味を質問された時には映画鑑賞なんて答えたが、昨日映画館で見て来てしまったせいでその気にならず、かと言って他にやることがないせいで暇なことこの上ない。
ぼーっと天井を見つめていると、次第に天井の汚れが人の顔に見え始め、私は思わず溜息を吐きながら起き上がる。
それと同時、インターホンが鳴り、誰だろうかと不思議に思いながら玄関扉の除き窓から外を伺う。
するとそこには高校生の頃、よく一緒に遊んだ友人である田中澪の姿があり、私は内心驚きながら扉を開ける。
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「偶々近く通ったからちゃんと生きてるかなーって」
「この通りちゃんと生きてます。まあ、暇だし上がってく?」
「良いの? 実はさっきまでかなり歩き回ってたから疲れちゃってさー」
自嘲気味に笑った彼女は私に続くようにして中へ入ると、本当に疲れていたらしく、部屋の中へ入るなり座布団に腰掛けた。
私は冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注いでやりながら。
「そう言えば澪はどこの会社に就職したの?」
「労基」
「えっ」
自分の分を注いでいた手を止めて思わず澪を見ると、彼女はイタズラな笑みを浮かべながら麦茶を飲む。
何か見抜かれている様な、そんな気分に陥っていると澪はコップをテーブルに置いて。
「その様子だと悩みがあるね? さあ、女神の如く寛大な私に話してみなさい」
「……実はね」
何となく話さなければならない気がした私は、もう二度と関わりたくないからという理由から誰にも話していなかった大村での出来事を話すことにした。
黙って澪はその話を聞き、私がほぼ全ての出来事を話し終えると深々と溜息を吐いて。
「何で労基に相談しなかったの?」
「……もうあの会社に関わりたくなくて」
「やり返したいとは思わないの?」
「逆恨みされたら面倒だなって」
思わず目を逸らしながら言うと澪は再び深々と溜息を吐く。
何だか教師に怒られているような気分になっていると彼女は麦茶を一口飲んで。
「明日から忙しくなるなー」
「話さない方が良かった?」
「いいや、桂里奈を虐めた会社をぶっ潰せるのが楽しみだから大丈夫」
この子はいつの間にこんな血の気が多くなってしまったのだろうか。
と、お茶を飲み干した澪は何か思い出した様子で私と目を合わせて。
「あやかしデジタルで働いてるって言ってたよね? あの会社、あやかしの血を受け継いでる人がいるって噂あるんだけど本当なの?」
「さ、さあ……」
別に話してはダメだなんて言われてはいないが、余計なことは言わない方が良いだろう。
そう思ってごまかしたのだが、澪は「ふーん」とジト目を向けて。
「大親友なのに教えてくれないんだー? 酷いな―」
「分かった分かった、ちょっとなら話すから」
そう言えば高校の頃も、こうやって私の隠し事を聞き出してきた。
良い意味でも悪い意味でも、澪はあの頃から変わっていないらしい。
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