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22話 母の先祖
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「それじゃ、また月曜日」
そう言って駅の南側へ歩いて行く猫田さんに私は軽く頭を下げ、少し寂しさを覚えながら北側の出口へ向かう。
出口を抜けると帰路は夕日に照らされ赤く染まり、その光景は見慣れつつある。
服やゲームセンターで運良く取れたぬいぐるみなどが詰め込まれた紙袋を持ち直し、アパートへ向かってのんびりと歩き出す。
今日はとっとと帰って早いところ寝ようと考えていると、ポケットに入れていたスマホが静かに振動している事に気付き、取り出してみるとそこには母の名前が表示されていた。
何だろうかと不思議に思いながら出ると、電話の向こう側でガヤガヤとした騒がしさが聞こえ始め。
『あ、もしもし? 今何してる?」
「映画見に行ってきて帰るところ。どうしたの?」
久し振りの母にそう尋ねると、カチャカチャと紙を取り出すような音が聞こえ。
『波留に聞かされたと思うんだけど、私色々調べてみたのよ。そしたら色々と面白いことが分かったの』
「先祖は烏天狗だったとか?」
『烏天狗? よく分からないけど、私が調べて分かったのは、私のご先祖も農村の出身だったことなの』
「もしかして昔から付き合いがあったってこと?」
母は私の質問に「分からない」とだけ答え、話を続ける。
『それで私の先祖の家系は川の氾濫を防ぐためってことでよく人柱にされてたみたいなの。美人が多かったから、これなら神様が喜ぶだろうって話みたいだね』
「だから私って美人だったの?」
『自惚れるな』
「あ、はい」
自分の娘にもう少し優しくしてくれても良いと思うのだが、我が母は相変わらず冷酷だ。
「それで人柱になってたのと私のあやかしがどう繋がるの?」
『さあ?』
「さあって……何も分かって無いの?」
『うん。言うだけ言っておこうかなって』
その気持ちは有難いがせめて何か分かってから連絡して欲しいものだ。
もっとも、調べて貰っている私には文句を言う権利なんて無いのだけど。
すると母は何か思い出したように「あっ」と呟き、からかうような口調で。
『結婚が決まった人がいるって本当? お相手の事紹介してよ』
「いないから! もしかして波留が言い触らしてるの?」
『うん、お姉ちゃんが結婚するかもーって』
「私の代わりに拳骨しておいて」
その言葉が面白かったようで母はふふっと笑い、それを承諾した。
高校生だった時の私でさえ涙目になった母の拳骨で泣き喚く波留を思い浮かべ、思わず変な笑いが出ていると向こうは少し引いた様子で。
『急に笑い出して何? 恐いんだけど』
「気にしないで。それじゃあ、引き続きお母さんはあやかしのことお願いね」
『それは良いけど……そろそろ結婚相手を見つけてねも良いんだよ?』
「えっ……それはちょっと……」
思わず言葉を濁すが母は「期待してるからー」とだけ言うと電話が切られ、私はどうしたものかと考えながら、話している間に到着した家の鍵を開ける。
この様子だと死ぬその時まで解決しなさそうな課題を出されてしまったことに半ば絶望しながら、私は現実から目を背けるように風呂の準備を始めた。
そう言って駅の南側へ歩いて行く猫田さんに私は軽く頭を下げ、少し寂しさを覚えながら北側の出口へ向かう。
出口を抜けると帰路は夕日に照らされ赤く染まり、その光景は見慣れつつある。
服やゲームセンターで運良く取れたぬいぐるみなどが詰め込まれた紙袋を持ち直し、アパートへ向かってのんびりと歩き出す。
今日はとっとと帰って早いところ寝ようと考えていると、ポケットに入れていたスマホが静かに振動している事に気付き、取り出してみるとそこには母の名前が表示されていた。
何だろうかと不思議に思いながら出ると、電話の向こう側でガヤガヤとした騒がしさが聞こえ始め。
『あ、もしもし? 今何してる?」
「映画見に行ってきて帰るところ。どうしたの?」
久し振りの母にそう尋ねると、カチャカチャと紙を取り出すような音が聞こえ。
『波留に聞かされたと思うんだけど、私色々調べてみたのよ。そしたら色々と面白いことが分かったの』
「先祖は烏天狗だったとか?」
『烏天狗? よく分からないけど、私が調べて分かったのは、私のご先祖も農村の出身だったことなの』
「もしかして昔から付き合いがあったってこと?」
母は私の質問に「分からない」とだけ答え、話を続ける。
『それで私の先祖の家系は川の氾濫を防ぐためってことでよく人柱にされてたみたいなの。美人が多かったから、これなら神様が喜ぶだろうって話みたいだね』
「だから私って美人だったの?」
『自惚れるな』
「あ、はい」
自分の娘にもう少し優しくしてくれても良いと思うのだが、我が母は相変わらず冷酷だ。
「それで人柱になってたのと私のあやかしがどう繋がるの?」
『さあ?』
「さあって……何も分かって無いの?」
『うん。言うだけ言っておこうかなって』
その気持ちは有難いがせめて何か分かってから連絡して欲しいものだ。
もっとも、調べて貰っている私には文句を言う権利なんて無いのだけど。
すると母は何か思い出したように「あっ」と呟き、からかうような口調で。
『結婚が決まった人がいるって本当? お相手の事紹介してよ』
「いないから! もしかして波留が言い触らしてるの?」
『うん、お姉ちゃんが結婚するかもーって』
「私の代わりに拳骨しておいて」
その言葉が面白かったようで母はふふっと笑い、それを承諾した。
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『急に笑い出して何? 恐いんだけど』
「気にしないで。それじゃあ、引き続きお母さんはあやかしのことお願いね」
『それは良いけど……そろそろ結婚相手を見つけてねも良いんだよ?』
「えっ……それはちょっと……」
思わず言葉を濁すが母は「期待してるからー」とだけ言うと電話が切られ、私はどうしたものかと考えながら、話している間に到着した家の鍵を開ける。
この様子だと死ぬその時まで解決しなさそうな課題を出されてしまったことに半ば絶望しながら、私は現実から目を背けるように風呂の準備を始めた。
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