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一方その頃、鳩山は 2

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 新しく所属することになった部署の前に来た鳩山は大きな溜息を吐いた。 
 あの日から一週間が経ち、残っていた人達もほとんどが辞めてしまい、結局残ったのは鳩山と他数名だけとなってしまったのである。
 それによって仕事が滞ってしまったため部署は解体され、それぞれ別の部署に異動となったのだ。

 鳩山は内心で深川に対して暴言を吐きながら中へと入ると、案の定全員忙しそうに手を動かしているその雰囲気は地獄そのもので、コーヒーとエナドリの臭いが鼻を突く。
 しかし、そんな物にすっかり慣れてしまっている彼は動じることなく新たな自分のデスクに着き、前以て渡されていた書類を取り出す。

「初めて来たというのに挨拶はしないのか?」

「えっ」

 忙しそうな社員たちとは対照的に、自分のデスクで暇そうに座るここの部長、塩留春樹しおとめはるきがそんな事を言う。
 しかし、他の人たちは明らかにそんな物を聞いている暇は無い雰囲気で、そんな事をする必要性なんて感じない。

「良いから初めましての挨拶くらいしろよ。ここではそれがルールだ」

「は、はぁ……」

 鳩山は内心イライラしながら立ち上がり、こちらを見向きもしない社員たちの方を向いて、

「今日からここで働くことになりました、鳩山海斗です。よろしくお願いします」

 そう言いながら軽く頭をさげるが誰も反応はせず、静かなタイピング音とペンを走らせる音だけが返って来た。
 やはりやる意味なんて無かった、そう思いながら塩留部長に目を向けるとにこりと笑うと。

「はいよろしく。じゃあ仕事始めてな」

 そう言って優雅にコーヒーを飲みながら、彼は非常にゆっくりとした動作でパソコンに打ち込みを始め、それを見ていると手元のスマホを投げ付けたくなる。
 しかし、気持ちをぐっと堪えた鳩山は席に座り直し、溜息を吐きながら仕事を始めた。

「――おい知ってるか? あいつが優秀な社員を解雇したせいで俺らが地獄見ることになったらしいぞ」

 しばらく仕事をしているとそんな声が聞こえ、鳩山は思わず手を止める。

「知ってる。しかもあいつ、その社員に仕事押し付けまくって自分は遊び放題だったんだってな?」

 なぜ知られているのだという焦りと共に声の主の方を見ると、話をしていると思われる二人の近くに見覚えのある男がいる事に気付いた。
 ――深川が一番面倒を見ていたであろう部下である。

「あいつ……!」

 全てを察した鳩山が彼の横顔を睨み付けると、それで気付いたらしい彼はにやりと笑みを浮かべる。
 ざまあみろ、そう言いたいのだと察した鳩山は歯噛みするが、気持ちを堪えて止まっていた手を再び動かした。
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