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17話 あやかし調査
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地下鉄を出て猫田さんと別れた私はのんびりと自宅へ向かう。
夜道を歩くのが当たり前だった私にとって、夕日に照らされ赤く染まる風景は実に見慣れないものだ。
しかし、これからはこの光景が当たり前になると思うと嬉しさが湧き上がるのだから不思議だ。
ぼんやりと考えている間に自宅へ到着した私は玄関扉を開けて中へ入る。
ぱっぱと手洗いを済ませた私は風呂を入れ、その間の暇な時間に今日こそやろうと決めていた私のあやかしについての調査を始めることにした。
とは言っても両親や祖父母に電話で調べて欲しいと頼むだけで、私が出来ることなんて何も無いのだけど。
そんな事を考えながら先ずは実家に電話を掛けると、二回のコールで電話が繋がり。
『もしもし? 桂里奈か?』
聞き慣れた父の声に懐かしく思いながら私は肯定する。
「うん、久しぶり。いきなりで悪いんだけど、あやかしについて何か情報は無い?」
『あやかし? ああ、そう言えば榛名がそんなこと言っていたな。ちょっと待ってろ』
榛名とは私の母の名前である。
電話の向こう側で父と誰かが話している声がしばらく聞こえ、数分程度で女性の声に変わる。
『お姉ちゃん久し振り。お母さんいないから代わりに私が分かったこと教えてあげる』
「波留? 久しぶりだね。それじゃお願い」
就職して以来全く話していなかった次女の波留。記憶が確かなら今年で高校三年になったはずだ。
『えっとね、お父さんの方のおじいちゃんとおばあちゃんが島根県の出身だったことと、代々農家だったことが分かったって言ってた』
「お母さんの家系には何か無かったの?」
『まだ調べて無いから分かんない』
普通自分の家系から調べるものだと思うのだが、色々抜けてる母なだけあってそんなことは無かったらしい。
と、電話の向こう側が騒がしいことに気付き、波留にどうしたのかと尋ねてみると。
『今お兄ちゃんたちが後ろでゲームやってるの。うるさいなら他の部屋で話す?』
「いや、あやかしのこと知りたかっただけだから良いよ」
『えー、お姉ちゃんの彼氏のこととか教えてよ』
「彼氏なんて出来たこと無いんだけど」
この妹はいきなり何を言い出すのだ。私に彼氏が出来たことなんてないというのに。
しかし、電話の向こう側で弟の誰かが「姉貴に彼氏が出来たのか?!」と騒いでいるのが聞こえ、既に色々と手遅れになっていることが分かる。
今度実家に帰った時が悲惨になりそうで末恐ろしい。
「じゃ、じゃあ私お風呂入るから。後ろで騒いでるバカたちに彼氏は出来て無いって話しておいてね」
『分かった、結婚も決まったって伝えとくね』
「待って――」
止めろと言う前に電話は切られ、今度帰ったら間違いなく揶揄われる恐怖から帰るのは辞めようかと悩む。
すると背後でお風呂が沸いたことを知らせるアラームが鳴り、私は逃避するかのようにベストスーツを脱いでバスルームへ向かった。
夜道を歩くのが当たり前だった私にとって、夕日に照らされ赤く染まる風景は実に見慣れないものだ。
しかし、これからはこの光景が当たり前になると思うと嬉しさが湧き上がるのだから不思議だ。
ぼんやりと考えている間に自宅へ到着した私は玄関扉を開けて中へ入る。
ぱっぱと手洗いを済ませた私は風呂を入れ、その間の暇な時間に今日こそやろうと決めていた私のあやかしについての調査を始めることにした。
とは言っても両親や祖父母に電話で調べて欲しいと頼むだけで、私が出来ることなんて何も無いのだけど。
そんな事を考えながら先ずは実家に電話を掛けると、二回のコールで電話が繋がり。
『もしもし? 桂里奈か?』
聞き慣れた父の声に懐かしく思いながら私は肯定する。
「うん、久しぶり。いきなりで悪いんだけど、あやかしについて何か情報は無い?」
『あやかし? ああ、そう言えば榛名がそんなこと言っていたな。ちょっと待ってろ』
榛名とは私の母の名前である。
電話の向こう側で父と誰かが話している声がしばらく聞こえ、数分程度で女性の声に変わる。
『お姉ちゃん久し振り。お母さんいないから代わりに私が分かったこと教えてあげる』
「波留? 久しぶりだね。それじゃお願い」
就職して以来全く話していなかった次女の波留。記憶が確かなら今年で高校三年になったはずだ。
『えっとね、お父さんの方のおじいちゃんとおばあちゃんが島根県の出身だったことと、代々農家だったことが分かったって言ってた』
「お母さんの家系には何か無かったの?」
『まだ調べて無いから分かんない』
普通自分の家系から調べるものだと思うのだが、色々抜けてる母なだけあってそんなことは無かったらしい。
と、電話の向こう側が騒がしいことに気付き、波留にどうしたのかと尋ねてみると。
『今お兄ちゃんたちが後ろでゲームやってるの。うるさいなら他の部屋で話す?』
「いや、あやかしのこと知りたかっただけだから良いよ」
『えー、お姉ちゃんの彼氏のこととか教えてよ』
「彼氏なんて出来たこと無いんだけど」
この妹はいきなり何を言い出すのだ。私に彼氏が出来たことなんてないというのに。
しかし、電話の向こう側で弟の誰かが「姉貴に彼氏が出来たのか?!」と騒いでいるのが聞こえ、既に色々と手遅れになっていることが分かる。
今度実家に帰った時が悲惨になりそうで末恐ろしい。
「じゃ、じゃあ私お風呂入るから。後ろで騒いでるバカたちに彼氏は出来て無いって話しておいてね」
『分かった、結婚も決まったって伝えとくね』
「待って――」
止めろと言う前に電話は切られ、今度帰ったら間違いなく揶揄われる恐怖から帰るのは辞めようかと悩む。
すると背後でお風呂が沸いたことを知らせるアラームが鳴り、私は逃避するかのようにベストスーツを脱いでバスルームへ向かった。
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