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13話 赤面必須
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「……猫田さん?」
何故か目の前にある猫田さんの顔に、ただでさえ寝起きでぼんやりしていた私の思考は容易にオーバーフローを引き起こす。
と、私が猫田さんの手を掴んでいる事に気付き、慌てて手を離しながら起き上がって。
「え、ええっと、もしかして家まで送ってくれたんですか?」
「あ、ああ……」
気まずそうに起き上がり、ベッドから離れた猫田さんはどう説明しようか迷っている様子で目を泳がせる。
何かの事故によってこうなってしまったのだと察した私は、酒によるものでは無い熱を帯びる頬を手で仰ぎながら。
「す、すみません。私、寝ちゃったんですよね?」
「……そりゃもう幸せそうに」
普通に話し掛けられたことに少し安堵した様子で猫田さんはそう言って笑う。
一体どの程度飲んだのか全く覚えていないが、今度酒を飲む時はかなり控えめにした方が良さそうだ。
反省しながら少し痛む頭を抑えていると猫田さんは疲れた様子で肩を回して。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ。勝手に部屋入って悪かったな」
「い、いえ、こちらこそご迷惑をお掛けしました。タクシー代出しますので――」
言いながらベッドから降りようとしたその時、まだ完全に酒が抜けていなかったのようで足元がふらつき、その場に倒れ込みそうになる。
すると目にも止まらぬ速さで駆け付けた猫田さんがそんな私の体を支え、それによって再び目前に彼の顔が迫る。
「気を付けろよ?」
「は、はい」
あまり意識しないようにしていたが、猫田さんはやはりイケメンだ。
――眩し過ぎるほどに。
「わ、悪い!」
何か察した様子で私から顔を離した猫田さんは顔を真っ赤に染める。
それを見てようやく自分の顔もかなり熱を帯びている事に気付き、今更顔を隠して手で仰ぐ。
「そ、それじゃ俺帰るから。ちゃんと寝て休めよ?」
「み、見送ります」
玄関まで着いて行くと猫田さんは靴を履き、鞄を片手に持つと扉を開ける。
「今日の事は忘れるようにな」
「が、頑張ります」
私の返答に頷いた彼は部屋を出て行き、私は鍵を閉めて大きな溜息を吐く。
「忘れられるわけ、無いじゃないですか……」
静かになった室内に、心から漏れ出た小さな声がしみ込んで消えた。
何故か目の前にある猫田さんの顔に、ただでさえ寝起きでぼんやりしていた私の思考は容易にオーバーフローを引き起こす。
と、私が猫田さんの手を掴んでいる事に気付き、慌てて手を離しながら起き上がって。
「え、ええっと、もしかして家まで送ってくれたんですか?」
「あ、ああ……」
気まずそうに起き上がり、ベッドから離れた猫田さんはどう説明しようか迷っている様子で目を泳がせる。
何かの事故によってこうなってしまったのだと察した私は、酒によるものでは無い熱を帯びる頬を手で仰ぎながら。
「す、すみません。私、寝ちゃったんですよね?」
「……そりゃもう幸せそうに」
普通に話し掛けられたことに少し安堵した様子で猫田さんはそう言って笑う。
一体どの程度飲んだのか全く覚えていないが、今度酒を飲む時はかなり控えめにした方が良さそうだ。
反省しながら少し痛む頭を抑えていると猫田さんは疲れた様子で肩を回して。
「じゃあ、俺はそろそろ帰るわ。勝手に部屋入って悪かったな」
「い、いえ、こちらこそご迷惑をお掛けしました。タクシー代出しますので――」
言いながらベッドから降りようとしたその時、まだ完全に酒が抜けていなかったのようで足元がふらつき、その場に倒れ込みそうになる。
すると目にも止まらぬ速さで駆け付けた猫田さんがそんな私の体を支え、それによって再び目前に彼の顔が迫る。
「気を付けろよ?」
「は、はい」
あまり意識しないようにしていたが、猫田さんはやはりイケメンだ。
――眩し過ぎるほどに。
「わ、悪い!」
何か察した様子で私から顔を離した猫田さんは顔を真っ赤に染める。
それを見てようやく自分の顔もかなり熱を帯びている事に気付き、今更顔を隠して手で仰ぐ。
「そ、それじゃ俺帰るから。ちゃんと寝て休めよ?」
「み、見送ります」
玄関まで着いて行くと猫田さんは靴を履き、鞄を片手に持つと扉を開ける。
「今日の事は忘れるようにな」
「が、頑張ります」
私の返答に頷いた彼は部屋を出て行き、私は鍵を閉めて大きな溜息を吐く。
「忘れられるわけ、無いじゃないですか……」
静かになった室内に、心から漏れ出た小さな声がしみ込んで消えた。
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